2019年11月19日放送

ばれん職人 後藤英彦さん
木版画において摺(す)りの出来映えを大きく左右する“ばれん”
名だたる摺師(すりし)が愛用する最高級のばれんは、
神奈川県の大磯町で作られています。
「ばれんっていうのは、3つの構造に分かれていまして、
竹の皮で編んだ、こよりが入っている“ばれん芯”。
それをくるむお皿のようなものが“当て皮”。
最後に竹の皮でくるむ、それを“包み皮”っていうんです。」
中でも、最も重要なのが芯の部分。“カシロダケ”と呼ばれる丈夫な竹の皮を
1mmにも満たない細さに割いて、編んでいきます。
「長さとしては40mくらい編んでいく。
竹の皮っていうのは、みんな厚みが違いますから、
それを手で感じながら、太さを均一にしていく。
太さが変わると、版画を摺った時にその筋が残るわけです。
絶対に厳禁なことですから、非常に根気と時間がかかります。」
1つ作るのに、1年以上。
しかし、これで完成というわけではありません。
「『ばれんは摺師が育てるんだよ』って言いますね。
使い続けると手になじんだ良い道具になっていくんです。
だから、自分で完成しても、これで完璧だっていうのはまだわからない。」
ばれんを作り続けて40年以上。
今なお、完璧を追い求める後藤さんが共感する言葉…

「人生とは 今日一日一日のことである」

アメリカ合衆国の作家 デール・カーネギー(1888−1955)の言葉です。

「一瞬一瞬、精一杯のものを作っていければ良いかな、と。
道具としてのばれんを後世に伝えていきたい、とは思っていますけどね。」