2020年5月5日放送

老舗そば店、池田耕治さん。
かつての東海道、品川宿にある安政3年創業の吉田家。
坂本龍馬や山岡鉄舟も通ったという老舗のそば店です。
店でひいたそば粉で作る十割そば。そのゆで時間はわずか15秒。
「十割そばは、ゆですぎちゃうとおいしくない。
早くゆで上がった方が麺に味が残っているんです。
小麦粉を入れると、ゆで時間が20秒、30秒になっちゃう。
そうすると、お湯の中にそばの味が抜けていくんです。そばの味が薄くなります。」
15秒のゆで時間を守るため、釜の湯は15分おきに、新しいお湯へ替えてしまいます。
「濁ったお湯でゆでると、釜のお湯の温度が下がって、生っぽさが出ます。
味わいが出ないんですよ。」
そばつゆに加える“かえし”にも、そばの味を引き立てるためのこだわりが・・・。
「かえしと言われるしょう油もみりんを合わせたものも、
かめを土の中に入れて保存しているんですよ。
土の中というのは温度がある程度一定ですから。」
過去にとらわれず、そばの味を追求する池田さんが共感する言葉…

「料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充たしながら
その技術をほとんど芸術にまで高めている。」

芸術家・美食家 北大路魯山人(1883-1959)の言葉です。

「私のじいさんが言っていたのは『おいらの体は、お客様のためにあるんだ』。
たかがそばですけど、やっぱり芸術品ですよ。」