2020年9月15日放送

いなり寿司店 店主、鈴木好文さん。
天保10(1839)年創業。横浜開港で賑わったこの店で作られるのは、
普通の倍ほどある細長い いなり寿司。
「横浜の港を新しくする際に、人足が働きながら食べるのに便利というので、
そこから始まった長さなんですよ。」
形だけでなく、甘みの強い味も、代々受け継がれてきました。
「揚げ自体が甘い。ザラメ、黒糖、上白糖、水あめ、これを煮て一晩寝かせて
新しいつゆを入れて煮るわけです。
それで油抜きしないんです、一切。油抜きしちゃうと、つやがなくなるんですよ。」
甘い油揚げに合わせるのは、砂糖を使わない酢と塩だけで味付けしたご飯。
さらにこのつめ方が、伝統の味を生み出します。
「揚げが伸びるので、ご飯を入れ過ぎちゃうと下の方が固くなっちゃう。
だから、中に空気を入れる。そうすれば、ふっくらして食べた時も
ふわーっとした感じになる。それは、やっぱり経験じゃないですかね。」
代々伝わるいなり寿司を1日1000本以上作る、鈴木さんが共感する言葉…。

「最も革命的な人々も、知らないうちに、おそらくいちばん古い伝統の人間となる。」

フランスの作家 ロマン・ロラン(1866-1944)の小説の一節です。

「自分で完璧だなというのは、1本もないですよ。
これは先代からの守ってきた味なので、どんどん広めたいですね。」