2020年9月29日放送

江戸刺繍職人、竹内 功さん。
帯に浮かぶように見えるあでやかな模様。これが竹内さんの江戸刺繍。
「ゴテゴテとかにぎやかでなくて、粋な感じに。
色もそうですけど、スッキリ感が特徴ですね。」
竹内さんは、金や銀の糸を絹糸で止める駒縫いを進化させた、
文駒縫いという技法で「現代の名工」に選ばれました。
「駒縫いというのは、金糸は黄色ととじる、赤でとじる、2種類くらいなんです。
それを緑だ、ブルーだと、押さえる糸の色を変えて作ったのが文駒縫い。」
さらに見る角度によって、鮮やかな立体が浮かぶ文駒縫い。
実は緻密な止め糸の間隔が、この見え方の秘密。
「極端に言えば、金糸の上に赤でとじるのが多くなれば赤が強くなります。
金の間隔がいっぱい見えるようにすれば、赤は薄く見える。
まあ、いくつかやってから面白くないからと、ほどいてやり直すこともあります。」
300色を超える絹糸で江戸刺繍を紡ぐ竹内さんが共感する言葉。それは…

「人間にとって一番大切なことは、各自の仕事に進歩を求めて励むことだ」

フランスの画家 ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)の言葉です。

「縫い方自体は、本当に基本的な縫い方なんです。受け継いだ人が表現の仕方を変えていく。
それが伝統の継承かなと思うんです。」