2021年2月16日放送

老舗佃煮店5代目 大野佐吉さん。
東京・浅草橋。1862年創業の老舗で作るのは、初代が考案したしょう油味の佃煮です。
「江戸のものですから、やっぱり甘みがそんなに無い。
しょう油味をベースにした香りを楽しめる佃煮だと思います。」
その製法は一子相伝。素材を煮るのも火力の強い薪を使ったかまどです。
「短時間に味をつけてあげる。じっくり時間をかけると、
素材の味が無くなってしまう。お風呂に長湯してのぼせちゃうようなものですよね。」
20分ほど煮込み、煮崩れを防ぐ竹製の煮ざるを一気に引き上げる。
その時に残った煮汁がこの店の味を決める“たれ”になります。
「桶の中に残っているたれと混ぜる。
例えば、あさりを煮ると貝出汁が出ておいしくはなるんですけど、それをずっとやると、
くどくなりすぎてダメになりますので、
“たれ”を壊しながら、直しながらという繰り返しをさせます。」
「家業に誠実たれ」という初代の教えを受け継ぎ、
“たれ”の味を守る大野さんが共感する言葉…

「誠実さと信念だけが人間を価値あるものにする」

ドイツの作家、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ(1749-1832)の言葉です。

「気付いた頃に“たれ”がおいしくなくなっていると、もう直せなくなってしまう。
その初代の想いと製法、全てのものを受け継いで、未来へ渡していくという事です。」