放送内容

2016年1月 6日 ON AIR

亡き妻から届いたメッセージ

アメリカ・アイオワ州、デモイン。
この街にあるラジオの地方局「KSTZ」では毎年リスナーから寄せられる、
クリスマスの願い事を叶えるという20年も続いている人気企画がある。
この企画はこの街に住むある家族、とくに妻のブレンダが大好きだった。


"幸せの絶頂で妻に癌が発覚"


2010年12月。
近所でもおしどり夫婦として有名な夫のデイビッドと妻のブレンダ。
実はこの夫婦は再婚同士でそれぞれ連れ子がいたが、
1年前には、二人の間にマックスが誕生していた。


幸せな毎日の最中、ブレンダの体調に異変が起きた。
数日前からお腹が妙に張り、その痛みは日に日に強くなっていた。
病院へ行くと精密検査を勧められ、大きな病院で検査を受けると、
診断結果は「卵巣ガン」。予想もしなかった結果だった。


卵巣がんとは、子宮の両側にある親指大の臓器の卵巣に、
何らかの原因でガンが発生するもの。
卵巣は2、3㎝程と非常に小さな臓器のため、体に影響が出にくく発見が遅れる事が多い。
ブレンダは、肝臓や直腸にもすでに転移が進んでおり、
最も重いステージ4と診断された。


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すぐに手術を受けたブレンダ。
10時間にも及ぶ大手術では卵巣、卵管、子宮を全て取り除いた。
更に肝臓の一部と直腸も摘出された。


あとは転移しないよう、抗ガン剤での治療となる。
夫のデイビッドも仕事が終わると病院へ行き献身的な介護を続けた。
しかし入院して3か月、家族の願いもむなしくガンは骨に転移し、
激しい痛みがブレンダを襲うようになった。


ブレンダはそんな自分の体にもめげず、家族の前では弱いところを見せなかった。
まだ1歳のマックスを残して自分は死ねない、絶対にガンに勝つ!!


その思いと、もしかしたらもうダメかもしれない、
子どもたちの将来を見る事が出来ないかもしれない。
という思いと毎日たった一人で戦っていた。


"家族の幸せを願う妻"


入院から半年がたった7月。
ブレンダの手は震え、子どもたちの服のボタンをとめられない...。
病状は隠しきれない程深刻なものになっていた。


夫や子どもたちと一緒に過ごせる時間は、あとどれくらいあるのか...。
ブレンダは、そうしたことを考えるようになっていた。


この頃からブレンダは家族写真やビデオをやたらと撮りたがった。
そしてデイビッドには「私の事は気にしなくて良いからまた素敵な人を見つけて。」と
自分が死んだあとの夫の幸せを願うようになった。


デイビッドはもちろんそんなことできるわけないと断ったが
「母親がいないまま育つ1歳のマックスのことも考えてあげて」とブレンダは付け加えた。


そして入院してから8か月。
ついにブレンダの脳に癌の転移が見つかる。もう手の施しようがない状況だった。
医師によると余命はあとひと月。ブレンダは残りの人生を家で過ごすことにした。


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家に帰って残された人生を過ごすブレンダ。
その間に愛息のマックスは2歳の誕生日を迎えた。
そして、この日から10日後、家族に見守られブレンダは天国へと旅立った。


息を引き取る直前、ブレンダは「キレイ...」と一言つぶやいたという。
数分後、家族が外に出ると大きな虹がかかっていた
それはまるで「あなた達の事をいつも見守っているから」
というブレンダからのメッセージの様だった。


"ブレンダのいない生活。デイビッドの生活は一変する"


ブレンダの死後、デイビッドの生活も一変。
家族の食事を作るのも父の仕事。悲しみに暮れる暇もない程、忙しい毎日だった。
そして、2歳になったばっかりのマックスは夜泣きがひどくなった。
幼いなりに、母親の死に対して葛藤しているようだった。


そんな慌ただしい生活が1年続いたある日。デイビッドは友人から再婚を勧められた。
実はこの友人、ブレンダが亡くなる前にデイビッドが良い人と再婚できるように
サポートしてほしいと頼まれていたのだ。


しかしデイビッドはまだそんな気になれないどんな誘いも断り続けていた。


そんなデイビッドを友人は突然カフェへ誘った。
言われるがままにカフェへ向かうと、そこには見知らぬ女性が。
「そういうことか」と友人の作戦にはまった事に気づいたデイビッド。


仕方ないので少しだけならとこの女性と話をしてみようと席に着いた。
女性の名はジェーン・アブラハム。デイビッドより3歳若い43歳。
ジェーンにも13歳の娘と11歳の息子がいた、前の夫とはもう9年前に別れたという。


会話するうちにデイビッドの気持ちに変化が起きた。
明るく人見知りせず、そして大きな声で笑う所が亡くなったブレンダと似ている気がした。


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こうして2人は何度か会うようになったが、
デイビッドはまだブレンダに対して申し訳ない気持ちばかりが募っていた。
しかし、互いの子ども達とも交流するようになると、デイビッドの子ども達も
すぐにジェーンの人柄に惹かれた。


特にまだ3歳のマックスは「ボクのママになってよ」というまでに懐いている。
妻の死後、酷くなった夜泣きが最近急に治まった。やはり母が恋しかったのだ。


一方でジェーンも気づいていた。
彼の心の中には、まだ亡くなった奥さんがいる。そこに自分が入りこむなんて出来ない。


お互いそんな感情を抱きながら、ブレンダの死から2年以上の月日が流れた。
デイビッドとジェーンも知り合ってから既に1年以上経ったが
2人の関係は友人のままだった。


"ブレンダからのクリスマスプレゼント"


そして、妻の死から2年3か月が経った、2013年12月16日。
信じられない事が起こる。


突然デイビッドのもとに電話が。地元のラジオ局からだった。
内容は妻のブレンダが大好きだった毎年クリスマスにリスナーへ贈る
プレゼント企画についてだった。


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詳しい内容は言えないが3日後に収録があるのでラジオ局に来てほしいとの事だった。
何の事だかわからないデイビッドだったが、言われるがままラジオ局へ。


収録が始まった。
DJから、ある人からあなた宛ての手紙を預かっているのでそれを今から読む、と伝えられた。
その手紙の送り主は...亡き妻・ブレンダだった。


「愛するデイビッド。あなたがこの手紙を手にする時、とても悔しいけれど、
私は、卵巣ガンに敗れもうこの世にはいません。」


「なので、あなたがもう一度人生を共にする女性をみつけた時、ラジオ局にこの手紙を
送ってほしいと友人に頼んでおきました。」


「今、手がひどく震え、字がかけません。だから、この手紙をタイプライターで
書いたことをお許しください。」


「デイビッド、あなたは、本当に素晴らしい夫であり、素晴らしい父親です。」
だからいつか、あなたを心から愛し、そして子どもたちを育ててくれる素晴らしい女性を
みつけるはずです。」


「その人はきっとあなたにとって最高の女性。私も出来ることなら、
一目だけでも会いたかった。」


「末っ子のマックスはまだ1歳。こんな小さい子に母親がいないなんて...
そんなかわいそうな事、許されません。私がみんなの成長を見守ることができず、
とても悲しく申し訳なく思います。」


そして最後には夫が出会っているであろう女性に対し、
ブレンダの切なる願いが書かれていた。


「では...未来の新しいお母さんへ。
4人の息子たちの母となり、温かな愛情を注いでくれるのは、あなたしかいません。
あなたのその思いに、私は心から感謝をしています。」


「あなたが誰であっても、私のことをどう思おうと私はあなたが大好きです。
だから、あなたに、今度の週末、ヘアケア、メイク、ボディマッサージ...など、
私からのお礼として受けて欲しいです。」


「そして家族には魔法のような旅行を。家族みんなで楽しめる場所へ出かけ、
一生、忘れられない思い出を作ってほしい...そう思います。」


「これが今年のラジオ局からのクリスマスサプライズプレゼントになる事を願っています。家族のみんなが、どうか幸せにすごせるよう。神様、お守りください。ブレンダ。」


愛する家族、そしてそこに加わるであろう女性へ、ブレンダからのクリスマスプレゼント。
デイビッドは亡き妻のサプライズに涙が止まらなかった。


数日後、ブレンダのメッセージを皆で聞いた家族は、その気持ちに心から感謝した。
そして家族全員でフロリダにあるディズニー・ワールドへ旅行し
ジェーンは1日エステサロンでゆっくり過ごした。


2014年8月30日。
天国のブレンダから背中を押されたデイビッドとジェーンは結婚式を挙げた。


現在、新たな妻を迎えたデイビッドは家族仲良く暮らしている。
四男のマックスは、現在6歳。ブレンダの事も少しだけだが覚えているらしい。
実は去年、三男の誕生日に再びブレンダから手紙が届いた。
そこには、これからの人生をより良いものにするためのアドバイスが書かれていた。
この先どのくらい手紙が届くかわからないが、家族の生きる糧となっているという。

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