放送内容

2016年6月29日 ON AIR

毒を持つ魚の恐怖

沖縄の市場に並ぶカラフルな魚たち。
しかしその中に、我々の身に危険を及ぼす魚が。


"祖母が送った魚が騒動を起こす"


沖縄県に住む由希奈(ゆきな)さん。想像を絶する苦しみと闘った。
今から7年前の2009年8月。
この日、自宅に交際5年になる彼氏が遊びに来ていた。


その日は沖縄県の離島に住む祖母から、魚が送られてきていた。
赤くてキレイな魚。祖母はかわいい娘家族のため、一番大きくて立派な魚を選んだという。
しかしこの魚が大変な騒動を巻き起こす。


メニューは、刺身、煮物、から揚げにあら汁。
くせもなく脂が乗った白身魚。あら汁も、良くダシが出て美味しかった。


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大満足の夕食の後は、家族みんなで近くの家具店へ。


しかし母が喉がイガイガすると不調を訴えた。
夜になってもおさまらない。これが、恐ろしい症状の始まりだった。


夜12時に、みな就寝。
そして、深夜2時をまわったころ、母が突然、嘔吐と下痢で苦しみ出した。
自分では起き上がる事も出来ない状態。


こうして母は病院へ。
しばらくすると、なんと由希奈にも同じ症状が!!
全身を襲う倦怠感。さらに口の周りが麻痺するような感覚も。


そして母親に付き添って病院に行った父親も、同じ症状に見舞われた...
数時間後、ようやく吐き気は治まった。


結局、症状が重かった母はそのまま入院。
嘔吐の症状が治まった由希奈と父親は朝、自宅に戻った。


だが翌日、それまでなんともなかった彼も、激しい腹痛に襲われ、病院へ。
さらに弟の体にも異変が。なぜか足にしびれるような痛み...。
単なる食あたりとは明らかに違う。実は、祖母から送られたあの魚に問題があった。


"家族を苦しめたのは「シガテラ毒」"


食中毒を引き起こした魚の正体。それは「バラフエダイ」。
日本では九州南部から南西諸島にかけて生息する魚。
魚ツウの間では、非常においしい魚として知られている。


しかし、毒を保有する事がある魚だった。
その毒とは...シガテラ毒。世界で毎年3万人以上の被害報告がある。
症状は、主に下痢や吐き気、そして関節痛など。


この「バラフエダイ」は、自ら毒を持っているわけではない。
そもそも毒を作り出すのはプランクトンの一種。
そのプランクトンが付いた藻をカニや小魚が食べ、それをバラフエダイなどの肉食魚が
食べることにより、筋肉や内臓に蓄積される。


それを人間が食べるとシガテラ中毒を起こすのだ。
大きな個体になればなるほど、多くの小魚を食べている可能性が高く、
その分、有毒率も高くなると言われている。


この毒の一番恐ろしいところ、それは症状が長引くこと。
嘔吐や下痢の症状は治まったが、1週間経っても倦怠感や酷い筋肉痛に襲われる。


また、水の入ったコップを触ると、 指に電気が走ったような刺激があり、
水を飲むと炭酸水のようなピリピリとした感覚が。
これはドライアイスセンセーションという症状。


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温度感覚異常の症状で、冷たい物に触るとまるでドライアイスに触ったような痛みを感じる。
このシガテラ中毒、死亡する例は稀だが、関節痛などが1年以上続く事も。


"東京・築地市場でも騒動が"


そして今年、シガテラ毒の恐怖が 東京・築地市場でも大騒動を巻き起こした。
大騒動の原因は良く似た「スジアラ」と「バラハタ」という2匹の魚。
同じハタ科の仲間だが、絶対に間違えてはいけない。


「スジアラ」は、1キロ1万円で取引される事もある高級魚だが、
「バラハタ」は、 シガテラ毒を保有する可能性があるのだ。


しかし今年4月。この「バラハタ」が「スジアラ」と勘違いされ売られてしまった!
購入したのは、都内の中華料理店。そこで「蒸し魚」として提供されたが...
幸いにも、その後、健康を害したという報告はないという。


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では、よく「バラハタ」が水揚げされる沖縄の鮮魚店を訪ねると、
他の魚と一緒に、普通に置かれている!
沖縄では長年、「バラハタ」を取り扱っている漁業関係者が毒の有無を
見分けられるのだともいう。


「バラハタ」であれば、全長48㎝以上、重さが2㎏以上になると有毒率が高い
と、言われている。


「バラハタ」は、釣り好きの間でも人気の魚だが、食べる際は専門家への相談をお勧めする。

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