放送内容

2016年6月29日 ON AIR

早死にする町の真実

世界第1位の国土面積を誇る国、ロシア。
このロシアに平均寿命が僅か40代の町があるという。
一体何が起きているのか?


"化学兵器が作られていた町"


ロシア・モスクワの東、およそ420キロのところにある町、ジェルジンスク。
町の中心部―は活気がありキレイに整備されているように思うが、
なぜこの町は早死にすると言われているのか?


町の人に話を聞いてみると、親族は40代で亡くなっている人が多いという。
町にある墓地に行ってみると、亡くなった年の若い人が多い。
やはり噂は本当のようだ。


その答えは町を流れるボルガ川付近にあった。
川岸に近づいてみると、そこには大量のドラム缶が。川の水はヘドロ状になっていた。
そしてこれが恐ろしいゴミだった。


このゴミ、なんと全てが化学薬品の廃棄物だという。
東西冷戦時代、ここには多くの工場が建ち並んでいた。
実はそこで化学兵器が作られていたのだ!


猛毒ガスのサリンやVXガス。
それらを生成する上で、出た大量の廃棄物を、なんとそのまま川に捨てていた!
こんな無茶苦茶な行いが90年代後半まで約70年間も続けられた。


そしてこれが町の人達にとんでもない影響を与えている!
土壌検査を行うと、なんと190種類以上の化学物質が検出。
中でも極めて危険な物質は「メタクリル酸メチル」
中核神経・内分泌器、腎臓などの器官に障害を起こしガンを誘発させるという。


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川に近づかなくてもそれが、蒸発したり、埃となり大気中に漂った。
更に川の水にとけ込んだ有害物質は地下水となり、その一部は町の水道に出る。
つまり長年の間、町の人は大気にまぎれた物質を吸い込み、
更に有害物質がとけ込んだ水を飲み続け、少しずつ体に蓄積されていったと考えられている。


"なぜ工場は無くならないのか?"


町の人口は現在、23万人。汚染された町にまだこれだけの人が住んでいる。
一体なぜなのか?
ジェルジンスクの町を上空から見ると、今も多くの工場で埋め尽くされている。


その理由は鉄道の線路があり、原材料の運搬に便利な場所であること。
そして工場を移転するには採算があわないためだという。


町の空気成分を分析すると「フェノール」「アンモニア」らがかなりの高い数値で
検出された。
中でも「フェノール」は通常の約4倍。これは、腐食性があり、皮膚に触れるとやけどする。


これにより工場の作業員、更に一般市民までも次々と喘息を発病している。
職業病と診断された患者は、約4千人。これはロシアの平均の8倍にも上る数だ。
しかしなぜこの環境で生活を続けるのか?


この町の医師によると化学薬品工場しか産業が無く、
町の人は皆この環境で働くしかないのだという。
身体を壊す事が分かっていてもこの町に留まらざるをえない現実。


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現在多くの工場では排出する有害物質の量を減らす取り組みが行われている。


そして長年に渡りにばらまかれた化学兵器の廃棄物については、
政府もなんとかしようと取り組んではいるが、取られた策は汚染された地域を
ひたすら埋め立てるというもの。
だがこの作業ですら予算の面で既に滞っており、多くの廃棄物が放置されたままだ。

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