放送内容

2017年2月 1日 ON AIR

中国で粉ミルクにメラミン混入

赤ちゃんが飲む粉ミルクに化学物質が入っていた。
それは...とんでもない物だった!


およそ30万人の乳幼児の腎臓にある異変が見つかり、中には死に至るケースも。
罪もない子どもたちに襲いかかった悲劇は中国全土で子どもの命を揺るがす
大事件へと発展!


その原因は、企業の利益を優先したことによるものだった。


"偽装されたメラミン入り牛乳"


それは、今から9年前の中国河北省で起きた。
酪農を営むコウという男。
家族で307頭の乳牛を飼育し、原乳を生産していた。


子牛を出産した牛しか搾乳はできない。
質がよく、安定した量を生産するには、飼育している牛を
きちんと管理しなければならなかった。


そんなある日のこと、彼の納めた原乳が検査に引っかかった。
基準よりたんぱく質が少なかったのが理由だという。
検査したのは取引先である「三鹿集団(サンルーしゅうだん)」という乳製品製造会社。


このとき廃棄した原乳は3トン。
いつもの通り飼育していたはずなのに...一体何がいけなかったのか?
なぜたんぱく質が下回ったのか...?


とにかく検査が通らない以上、廃棄は免れない。
それはコウにとって飼料代や維持費なども無駄になる大損害だった。


そんなときコウは別の業者から簡単にタンパク質を増やせる噂を耳にする。
それを聞いたコウはすぐに行動に移した。


その方法とは、なんと水を入れ「かさ増し」をし、さらにあるものを原乳に入れた。
男が入れていたもの、それは食品ではなく「メラミン」だった。


「メラミン」とはプラスチックの原料となる化学物質。
メラミンを原料としたメラミン樹脂は耐熱性や耐水性に優れ、
食器や家具などに多く使われる。


強い毒性はないが、口にできる物ではない。
なぜそんなものを原乳に入れたのか...?


実は、この数か月前、アメリカでペットフードによる、動物の死亡事件が起こっていた。
このペットフードに、メラミンが混入されていたのだ。
なぜならタンパク質の基準をクリアするために、中国の業者が植物性タンパク質に
メラミンを混入し輸出していたからだった。


メラミン入りのペットフードを食べた動物達は、腎不全を起こし
この当時、100匹以上が命を落としたと報じられた。


一方でこの事件を機に、メラミンでたんぱく質の量を偽装できる事が知れ渡った。
実は、食品中のたんぱく質の量を調べるには、窒素の量を測定しそこから算出する。
メラミンには窒素が多く含まれているため、それを入れた原乳はあたかも
たんぱく質が多く含まれているようにみえた。


彼らにとっては、人体への影響よりも、利益の方が大事だった。
メラミンで偽装した原乳を三鹿の工場に卸したコウ。


すると、毎回行なわれている厳しい検査はいとも簡単に通過。
そもそも多量のメラミンが食品中に入ることは想定されていなかったため、
当時、原乳の検査ではメラミンを調べていなかったのだ。


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こうして、男はメラミン入り原乳を900トンも販売。
売り上げは4000万円以上にも上った。
安く、簡単に手に入るメラミンによるたんぱく質偽装は原乳業者の間で噂となり、
それで作られた粉ミルクが中国全土で販売された。


そして大事件となる!


"赤ちゃんたちの体に異変が"


河北省のとある家庭。
中国では、共働きが多く子どもは祖父母に預けられることが多い。


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そんなある日のこと。
子どものおむつを替えていると尿が赤い事に気が付いた。


すぐに病院に向かうと、血尿だと判明。
診断結果は「尿路結石」。腎臓や尿管に結石と呼ばれる塊ができていた。


そして、医師はある疑問を抱いた。
シュウ酸や動物性たんぱく質などの摂り過ぎが結石の主な原因。
しかし、普通は幼い乳児が口にするものにそういったものなどない。


だがこの頃、中国各地の病院では、彼らと似たような症状を訴える子どもたちが
急増していた。


調査をすると赤ちゃんたちに、ある共通点が見つかった。
彼らが飲んでいたのは、三鹿の粉ミルク。
それはコウが原乳を卸していた企業だった。


三鹿は、年商約1500億円を越える大手の乳製品製造会社。
中でも粉ミルクは手頃な価格が母親達に評判で、生産量は1993年から15年もの間、
中国でトップを誇っていた。


さらにこの年、成分が母乳により近い優れた粉ミルクを開発したとして、
政府から賞を贈られていた。


この異常を受けて、三鹿には子どもたちに異変が起きた親達から問い合わせが相次いでいた。
三鹿は苦情が相次ぐこの状況から徹底的な検査を行うことに。


こうして、最初の苦情があってから半年後、
食品などの成分分析を行う、河北省・検疫局に三鹿製の粉ミルクが送られた。
そして、その検査結果には通常ならば粉ミルクに含まれるはずのない異物の
混入が記されていた。メラミンだった。


"それでも利益を優先する企業。その末路は"


自社の粉ミルクにメラミンが混入されていることを知った三鹿。
出回っている商品の回収を始めた。ただ...店舗側には異物混入のことは伝えなかった。


さらにものによって混入している量に差があると知った経営陣は、
なんと混入しているメラミンの量が少ない商品については、粉ミルクの販売を継続したのだ。
優先したのは、会社の利益だった。


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こうしてメラミン混入を知った後も、三鹿は800トンを超える量の粉ミルクを販売。
実に7億円以上を売り上げ、200万人以上の乳児の体に、
入るべきではない異物が取り込まれることに。


それにより多くの乳児の体内に結石ができてしまったのだ。
三鹿がメラミン混入を知って1か月後、粉ミルクによる健康被害が相次いでいることを
知った国家質検総局は三鹿の調査を開始。


ついに、原乳の偽装を突き止めた。
そしてコウを始めとする原乳業者を逮捕。


さらにその後の調査で、なんと三鹿以外にも中国の22の食品メーカーから、
69品目にも及ぶ商品で、メラミンの混入が発覚した。
その被害者はわかっているだけでも約30万人にも上り...6人の死亡が確認。


大手企業などによる汚染粉ミルク事件は、中国中を震撼させた。


そして3か月後、事件の裁判が開始。
メラミン混入を知りながら販売を続けた、三鹿の理事長、田(デン)には、
無期懲役が言い渡され、三鹿は破産へと追い込まれた。


また、メラミン混入を行い、大量に売りさばいたコウは死刑が確定。
さらに他の原乳業者達も、有罪となった。


なお、この事件を受けて国は新たに「食品安全法」を施行。
乳製品にはメラミンの混入検査が義務づけられた。


この事件後、日本でも食品中のメラミン量に関して規定が定められ
輸入品に対しても厳しく検査されることとなった。


現在でも多くの子どもたちが治療もできず結石を取り除けていない。
事件は中国社会に今なお大きな爪痕を残している。

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