放送内容

2017年2月 8日 ON AIR

手術中に麻酔が切れた女性

外科手術。それはあるものの進歩で急激に発達した。
それは...麻酔。


かつて麻酔があまり発達していなかった頃...。
患者はその痛みに耐えられず、また恐怖心で手術死する事があった。
その後...特に全身麻酔の発達で、外科手術は大きく進歩した。
だがその一方で、医師達が気付かぬうちに患者が麻酔から覚めてしまった事件が起きていた。


アメリカ・ミシガン州。そんな信じられない経験をした人がいる。
ケリー・ハーバラさん(45歳)。彼女が体験した恐怖の手術とは...。


"目が覚めたらまだ手術の真っ最中だった"


1999年。
当時28歳だったケリーは交通事故で大けがをし、病院へ救急搬送された。
ケリーは左足の股関節の骨を粉砕骨折していたため、体力の回復を待って
大掛かりな手術をする事に。


その手術とは、骨盤と大腿骨をつなぐ股関節のソケットと呼ばれる部分が粉々に砕けたため
人工のソケットをつけ再び足を動かせるようにするというものだった。


事故から8日。体力は回復し手術が行われることになった。
全身麻酔での手術。この病院ではガス吸引と静脈注射の両方で麻酔をかけるのが通常だが、ケリーの場合、交通事故の大量出血の影響で血圧が低下していた。
そのため血流が悪く、薬が効きにくいと考えられ、ガス吸引式のみでの全身麻酔となった。


麻酔医の判断で自発呼吸できる状態で手術が行われた。
全身麻酔をすると手術中の記憶はない。意識が戻った時は、既に病室のベッドにいる...。
過去にヘルニアで何度も手術を経験しているケリーはそれを知っていた。


そして、数時間後...意識が戻った。
ケリーは手術が終わったのだと思った。
しかし、何か機械音が聞こえる。


すると...ドリルを準備してくれという医師の声が聞こえる。
なんと彼女は手術の真っ最中に意識を戻してしまったのだ!!
それはまさに、金属の器具を取りつけるその時だった。


この時、ケリーは体を動かす事ができなかった。
医師たちはまったく気づく様子もない。
ケリーは大声で呼んでいるつもりだが...声が出なかった!


その間も手術は進行。
やがて...最も恐れていた事が...なんと全ての感覚がもどり始めてきたのだ。


今まで味わったことのない激痛が彼女を襲う。しかし意識は鮮明なまま。
その時、体が動いた。医師もその異変に気づき手術室内はパニックに。


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そして麻酔の追加でケリーは意識を失った。
次に目を覚ましたのは手術後だった...。だが、あの悪夢は鮮明に残っていた。


すぐに医師を呼び涙ながらに訴えるケリー。
医師は麻酔が切れたことは把握していたが手術は無事に終了した、と伝えた。


"手術後もあの恐怖に悩まされる"


それから1か月。
手術した股関節は順調に回復し退院。
しかし、退院後も思い出すのは手術中のあの恐怖だった。


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あの悪夢が何度も彼女の頭をよぎり、不眠に陥った。
それはPTSD。心的外傷後ストレス障害。
強烈なショック体験が精神的ダメージとなる。
時間が経っても突然思い出したり、強い緊張や不安が続いたりといった症状に苦しめられる。


その恐怖から、何年たっても苦しんでいたケリー。


そんな彼女を救ったのが、手術から4年後の2003年のこと。
あるテレビ番組で、自分と同じように手術中、麻酔から覚めPTSDに苦しんでいる人達の
特集が放送されていた。


同じような経験をした人は他にもいたのだ。
ある女性は、卵巣にできた腫瘍の摘出手術中に。
またある女性は、帝王切開による分娩中に麻酔が切れ、地獄のような痛みに襲われたという。


実は全身麻酔の手術で1000件に1件から2件の割合で起きているという資料もあり、
中には病院を訴える人もいるという。


苦しい思いをしているのは自分だけじゃ無い...。
そう思った瞬間、何か救われたような気がした。


当時のこと振り返りケリーは、
あの時感じた痛みを表現する言葉はこの世にないと語る。
17年の月日が流れても、あの恐怖の記憶は消えずいまだ悪夢にうなされるという。

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