放送内容

2018年3月20日 ON AIR

水中洞窟に取り残された男

スペイン、地中海西部に浮かぶ島、マヨルカ島。
この島の地下には...神秘的な水中洞窟が存在する。


それは雨水の浸食で生まれた鍾乳洞が水没してできた洞窟。
そして去年4月。この洞窟で恐怖の事故が起きた!


出口を見失い、パニックに


地質学を教えているシスコ・グラシア。
彼は毎週末、水中洞窟を調査していた。


そんな日は、2人の子どもを離婚した奥さんに預ける。
いつも通りの週末...洞窟調査でバディを組むマスカロと合流したグラシア。


2人で10年ほど前から水中洞窟を調査。
地図を作るのが目的だった。
地下に眠る巨大な洞窟は、その全てをまだ誰も把握していない。


午前11時。2人は調査を開始。
予定では3時間で帰ってくるはずだった。
エアーは予備を入れて1人4~5時間分ある。


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水中洞窟に潜ることをケーブダイビングといい、ダイビングの中で最も危険とされる。
その理由というのが、まずプレッシャー。
洞窟内でトラブルが起きても浮上できず、出口まで息が吸えない。


次に視界。洞窟内は光が届かず真っ暗。
ライトを照らし進むが、地底の沈殿物が巻き上がるとなにも見えなくなる。
しかも洞窟内は水の流れがほとんどないため、元に戻るのにかなりの時間がかかる。


そして洞窟内は方向感覚も失われる。
水中では上下すら分からない時がある。


そのため、必要となるのがガイドラインと言われるワイヤー。
これをひっぱりながら進み、帰りはこれを手繰り寄せ戻る。


潜り始めてから1時間半。
入口から1kmの地点でそろそろ引き返そうとした時...2人が接触!
そしてフィンが地底に触れた!砂がまい上がる!


一瞬で視界が奪われた。
しかし、ケーブダイビングを始めて20年以上のグラシアは冷静。
ガイドラインのワイヤーをたぐりよせ、出口を目指すはずだった。


しかし、さきほどのトラブルでワイヤーが岩にこすれて切れた。
2人はさすがにパニックに。
必死に切れたワイヤーの端を探すが...どんどん砂は舞い上がる。
焦りが呼吸を荒くし、エアーを消費していった。


生死をかけた一発勝負のダイブ


このままでは命はない...そう考えたグラシアはエアドームに向かう事を提案。
エアドームとは洞窟内に存在する空洞のこと。


視界の悪い中、記憶を頼りに進む。
そして...なんとかエアドームにたどり着いた。
しかし、ここに長居はできないと分かっていた。


実はこのエアドーム内は異常なまでに
二酸化炭素の濃度が高く、酸素が薄い。
地上の酸素濃度はおよそ21%で安全限界は18%と言われる。


しかし、ここには16%しかない。
それを知っていた2人。一刻も早く脱出ルートを見つけるしかない。


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しかし、もう2人分のエアーは残っていなかった。
出口までいけるのはギリギリ1人。


そこで体重が軽く酸素の消費が少ないマスカロが助けを呼ぶことに。
グラシアはマスカロに命を預けることを決めた。


午後5時10分。
生死をかけた一発勝負のダイブが始まった!


暗闇の中、およそ1kmを泳ぐマスカロ。
頼りは地図だけ...もし迷えば死ぬ。
呼吸が荒くなる...エアーは持つのか。


マスカロが出発してすぐに、グラシアは低酸素の影響で鈍い頭痛が起こっていた。


エアドームを出ておよそ1時間。地図のルートを進み出口までたどり着いた!
マスカロはなんとか洞窟から脱出した!
すぐに助けを求めるマスカロ。
水中洞窟探査の仲間たちが救助に向かった。


グラシアの居所は地図上でわかっている。
これでもう大丈夫...なハズだった。


遭難から60時間。グラシアの生死は?


夜8時。救助に向かった仲間のダイバーが戻ってきた。
しかし、そこにグラシアはいない。
実はマスカロが必死に脱出したため、砂が舞い上がり視界が悪くなり進めなかったのだ。


マスカロはこの最悪の状況を家族に伝え、レスキューを要請した。
レスキューが到着したのは夜10時。


洞窟内には侵入禁止命令が出された。
そして、明るくなるのを待って捜索する事に...


翌朝。救助本部に地図の専門家が呼ばれ、ある作戦が立てられた。
それはエアドームの真上から穴を掘り、中に酸素を入れる作戦!


だが、ドリルが用意できたのは夜8時だった。
グラシアがエアドームに入ってすでに30時間。


穴が空けば酸素が届く...
しかし手作業で作られた洞窟の地図には誤差があり、穴はエアドームにたどり着かなかった。
遭難から丸2日。グラシアの救助はもうムリなのか?


一方、マスカロたちはこれまで撮影してきた動画から目印を確認。
視界が悪くてもグラシアのもとへたどり着ける方法を探していた。


さらに、ケーブダイビングに詳しいベルナットという男性が駆け付けた。
すでに遭難から50時間、視界が悪い中ベルナットは救助へ向かった!


そしてついにエアドームにたどり着いた。
ベルナットは横たわるグラシアを発見。なんとグラシアは生きていた!
この時、体温はわずかに32度。間一髪の救出劇だった。


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そんな中、なんとグラシアはベルナットの持ってきたエアーを背負い、自力で脱出。
遭難から60時間が経っていた。


九死に一生を得たグラシアだったが、
なんとあの事故からわずか2週間、地図を改良するため再び洞窟に潜ったという!
懲りない人だった。

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