放送内容

2018年6月12日 ON AIR

最も恐ろしいとされる寄生虫の真実

治療しなければ100%死に至るという恐ろしい寄生虫が注目されている。


その寄生虫に命を奪われそうになった男性、大内明さん。
彼の身に起こった命の危険とは?


忍び寄る殺人寄生虫の脅威


北海道・札幌市に住む大内さんは高校を卒業後、道内で造園業の会社に勤務していた。
この頃からなぜか顔色の悪さを指摘されるようになっていたが、
体調が悪いという訳ではなかった為、特に気にはとめなかった。


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ところが今年1月に事態は急変。
ある日、同僚が自分の顔を見て驚いている。


一体何があったのか?
自分の顔を見てみると...なんと顔面が黄色く染まり、白目も黄色くなっていた。
これは黄疸という症状だった。


とにかく病院へ。
そして血液検査、CT検査の結果...恐ろしい事態が判明した!


CT画像を見てみると、肝臓の中心に大きく黒くなっている部分がある。
実はこの部分、なんと寄生虫の幼虫に作られた病巣だった。


それは恐ろしい殺人寄生虫、エキノコックスと呼ばれるもの。
エキノコックスとは主にキツネなどイヌ科の動物に宿る寄生虫。


キツネの腸管で幼虫から成虫となり卵を生む。
その卵はフンと一緒に体外に排出され、土や水・草木に付着、
それが野ネズミなどに経口感染すると、ネズミの体内で卵は幼虫に成長。
そのネズミを、またキツネが捕食するという循環を繰り返している。


だがそのサイクルの中、偶然、エキノコックスの卵を人が体内に取り込んでしまう事がある。
それは大自然の沢の水だったり、草木だったり...様々な理由が考えられる。


そして、人の体内に取り込まれたエキノコックスの卵は肝臓に付着。
そこで幼虫になり、今度は袋状の病巣を作り、増殖を始めるのだ。


こうして肝臓を蝕み、やがて破壊。命を脅かす。
黄疸が出ていた大内さんの肝臓は6割以上がエキノコックスに冒されていたという。


そして、この寄生虫のなによりも恐ろしいことは
感染者のほとんどが重症化するまで自覚症状がないという点。
その為、重症化してから感染が明らかになるケースも少なくない。


長期間潜伏し、気づいた時には重症化


大内さんの場合、肝臓の手術が必要なほどに重症化していた。
そして医師によると、感染したのは15年から20年前だという。


この寄生虫は、感染後に症状が発症するのは10年以上たってから。
その為、感染経路が本人にもわからない。


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大内さんはこれまでキツネには近づいたことも無く、沢の水も飲んだことは無い。
考えられるのは造園業での作業中、偶然土に混じったエキノコックスの卵が体内に入った
可能性だという。


もしそうだったとしても、10年以上前の出来事。
結局、明確な心当たりもなく、感染経路も不明なままだった。


ただしエキノコックスが感染するのは卵の状態。
その為、ヒトからヒトへの感染はない。


今年3月、大内さんは肝臓の手術を受けた。
現在エキノコックス症の根本的な治療は感染部位の切除しかない。


大内さんは肝臓の6割である1.5kgを摘出し、体には痛々しい傷が残った。


気がつかないうちに感染し長い時間をかけ、ある日突然命が脅かされる。
そんな恐ろしいエキノコックス。
今までは北海道での感染が主だったが近年、埼玉や愛知でも報告されている。


その理由は...犬。
今年3月、愛知県では捕獲された野犬の糞便から確認されている。
エキノコックスはキツネだけでなく犬にも感染しその卵を排出するのだ。


しかし専門家によると、急激に広がったりする可能性は少ないという。


とにかく、予防のためには清潔にして体内に寄生虫を侵入させないこと。
さらにエキノコックスは熱に弱く、加熱することでも身を守れるという。


そして感染が疑われる場合は血液を調べると感染しているかどうかを検査できる。
早期に発見することができれば切除部位も少なくて済む。
恐怖の寄生虫エキノコックス...これ以上感染が広がらないことを願う。

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