放送内容

2018年8月14日 ON AIR

殺人冷蔵庫の真実

アメリカ、アラスカ州アンカレッジ。
仰天スタッフはある人物を訪ねた。


マット・クレブスさん。
去年、彼の家族に想像もつかない悲劇が起こった。
その原因はなんと冷蔵庫だった。


別荘で家族が謎の体調不良に


去年の夏休み...父のマットは仕事で出張。
長男は友達の家に泊まりに行き、母のサラと二男ギャビン、末娘のキャロラインの3人は
自宅から1時間程離れた、『キャビン』と呼ぶ場所へ行っていた。


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キャビンとは、設備が簡易的な別荘。
ここはより自然を感じるため、電気も通っていなかった。


3年ほど前にこの別荘を建て、休日は頻繁に訪れ、アウトドアを楽しんでいた。
そんな楽しい休日が、この冷蔵庫によって最悪の日へと変わる。


翌日早朝、末っ子のキャロラインが頭痛を訴え始めた。
市販の風邪薬を飲ませたが、その3時間後...次は吐き気を訴え始めた。
妻は"風邪が悪化した"くらいに思っていた。


するとまもなく兄のギャビンにも同じ症状が!
しばらくして今度は母親のサラも!
結果、家族みんなが同じ症状になった。


時間が経つと足元がおぼつかなくなり、意識が朦朧としはじめた。
実はこのとき、正常な判断力を失っており病院に行こうとすら考えることができなかった。


3人の異変に周囲が気付いたのは夜のことだった。
本来なら、母サラが長男を友人宅に迎えに行くはずが...その時間が大幅に過ぎていた。


おかしいと思った友人の父親が別荘まで向かうと、そこには苦しむ3人の姿が!
何があったか聞いても答えられない状況を見た友人の父はすぐに救急車を呼んだ。


意識はあるかないか、ギリギリの状態。
家族が陥っていたのは一酸化炭素中毒だった。


一酸化炭素中毒で奪われた若い命


一酸化炭素は、酸素よりも数百倍、血液内に吸収されやすく
体内に一酸化炭素が多く入ると酸素の供給が邪魔され、様々な症状が出る。


初期症状は頭痛。
さらに多く取り込むと、吐き気、判断力の低下などが起こる。


しかし、この時点では血色が良く、周りから気づかれないことも多い。
重度になると呼吸困難や意識障害、肌が赤くなるのが最大の特徴。
そして最悪の場合、死に至る。


一酸化炭素は無色無臭で、人の感覚では気づくことができないが、
長男の友人の父親は、症状の特徴をたまたま知っていたため、
とっさに彼女たちを外へ出した。


即効性のある治療法はなく、より多くの酸素を吸入し続けるしかない。
アラスカ州には対応できる病院が無く、2000キロ以上も離れたシアトルの大病院に移送。


そこで、高い圧力をかけ酸素を体中に送る、高圧酸素治療を行った。
その甲斐あってか、なんとか母のサラと娘のキャロラインの2人は一命をとりとめた。
しかし家で発見された時点で、既に10歳の二男・ギャビンは亡くなっていた。


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原因は別荘にあった冷蔵庫だった


一酸化炭素中毒で悲劇に見舞われた一家。
その原因は、別荘にあった冷蔵庫の仕組みにあった。


実は、電気がないこの別荘で使っていたのは、ガス式の冷蔵庫。
主に電気がないアウトドアで利用され、日本でも使う人がいる。


その仕組みは、プロパンガスなどを燃焼させることで起こる「気化熱」を利用し、
中を冷やしている。


例えば、カセットコンロを使ったとき、ガス缶に触ると冷たくなっているが、
これも、ガス缶内で液体が気体になることにより「気化熱」が起こっているからである。


一方で一酸化炭素は、酸素が少なくなり、不完全燃焼が起こると発生する。
つまりこの冷蔵庫のどこかが故障し、不完全燃焼が起こったことで、
部屋中に、一酸化炭素が放出され続けてしまったのだ。


そして、冷蔵庫から一番近い場所で寝ていたギャビンはより多くの一酸化炭素を取り込み、
亡くなったと考えられた。


現在、幸い助かった2人は日常生活に問題はないが、
事故の後遺症でたまに物忘れがあるという。


実際に事件が起きた別荘には...原因になった冷蔵庫がまだ設置されている。
故障の詳細をまだ調査してもらっている途中だという。


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アメリカでも日本でも、一般家庭において一酸化炭素検知器の設置義務はない。
命を守るために、注意してほしい。

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