2020年1月2日(木)・1月3日(金)あさ7時から日本テレビ系で生中継の第96回箱根駅伝。当中継サイトでは「箱根駅伝を支える人」にも注目。今回は、箱根駅伝の交通対策を担う警察官の舞台裏や思いを探るべく小田原警察署へ。箱根駅伝ではランナーの安全確保はもちろん、テレビ中継という面でも、中継カメラ車の円滑な進行面でお世話になっているのだ。

話をうかがったのは小田原警察署交通第一課 交通総務係長 落合賢一氏。2020年3月に定年を迎えるため、今大会がいわば「最後の箱根駅伝」となる。小田原警察署管内走路での警察官の配置計画を担当している落合氏。対策の体制からご自身の思いまで、箱根駅伝にまつわる様々なエピソードを語っていただいた。

■当日の朝は4時に出勤

--まず、これまでどのように箱根駅伝に携わられてきたか、教えていただけますか?

箱根駅伝には、1986年〜1992年と2009年~2016年の第二交通機動隊勤務時、パトカーでランナーが通過する数時間前に警戒・巡回したり、「先行警戒車」で先頭ランナーの前を走行し、交通障害がないかなどを確認する任務や、交通対策の計画策定といった任務に携わりました。
そして2017年から、現在の小田原警察署において山間部の5区・6区を含む約30kmにわたる管内走路の交通対策計画の策定を担当しています。

--毎年計画を立てるにあたり、ノウハウはどのように蓄積されているのでしょうか?

毎年大会終了後、現場についた警察官から「こういう風にした方がいい」などと意見を聞いて、必ず翌年の計画には反映させるようにしています。
また私は高速道路交通警察隊にもいたことがあり、そこでも同じように大規模交通対策の計画を立てていました。それらも含め、ある程度経験をしてくると「どこでどのような規制が必要でどのように対策していくか」は覚えていくようになりましたね。

--年間のスケジュールを教えてください。

まず大会が終わったあとに、現場に従事した警察官の意見を精査して書面化していきますが、翌年の大会の本格的な準備は10月の終わりごろからになります。11月には様々な会議が増え、一番忙しくなるのは12月に入ってからですね。この時期になると担当する人員がある程度決まるので配置をしていきます。
勤務体系の異なる署員をうまく配置するのはとても気を遣います。特に往路5区は注目度も高く失敗できませんし、復路は朝が早いので、箱根と小田原市内の2つの布陣を組まなければなりません。皆、協力的なので助かっています。
当日従事する警察官は、早朝のため車で出勤せざるを得ないので、駐車場を市役所にお借りして確保したり、門を早い時間に警備員の人にあけてもらったりといった準備もしています。私自身も、朝4時に出勤をして、計画の最終確認をしながら従事する警察官を待っています。

■「何もなく」終えることが一番

--箱根駅伝を迎えるにあたっての交通対策に従事する際の心構えを教えてください。

何もなく、選手に怪我なく、観客の方にも素晴らしい大会と思っていただく、というところが一番ですね。その土台を作るために警察官がいるのではないかなと思います。警察官自身も箱根駅伝に従事するというのは誇りになってくるわけです。
今や箱根駅伝は国民的行事となりました。レースが安全かつ円滑に進むよう縁の下の力持ちとして交通対策を施しています。

--印象に残っている出来事はありますか?

箱根はどうしても雪が降ることもありますよね。箱根駅伝では白バイが先導をしていますが、雪で山を通れない場合は代わりの先導としてパトカーを用意しておかないといけません。過去には天気や道路の状況を見て判断を迫られる局面もあり、特に神経を使いました。

--地元にお住まいの方とはどのようなコミュニケーションを取られるのですか?

箱根駅伝となると警察は朝から活動することになるので、住民の方はとても協力的で、温かく「朝早くから大変ですね」などと言ってくださいますね。

--今年、箱根では豪雨による被害もありました。今大会への影響などはどのように考えられていますか?

箱根登山鉄道が動いていない箇所もありますから、車が多くなるか、もしくはテレビ観戦に流れ人が少なくなるか、どちらかになるだろうとは思っています。
あまりにもマイカーの流入が多い場合は、走路をクリアにするため流入車両に対して早めに規制をかけたり、駅伝観戦でない通行車両に海沿いのう回路を案内することも視野に入れています。山の中は道路が一本しかなく必ず渋滞してしまうので、観戦に来られる方はバスを利用するか、マイカーであれば規制の時間帯より早く箱根に入っていただくのが良いかと思います。
また、例年往路の対向車線が渋滞する上、路肩に車を止めて中央線付近まで出てきて応援する方が見受けられますが、危ないので絶対にやめてください。我々もなるべく渋滞がないように対策を行いますが、ランナーの安全を第一とするとどうしても交通規制をかける必要が出てきます。例年に比べて渋滞が激しくなることが予想されますので、皆様にもぜひご協力いただけたらという思いです。

■車が来ない箇所の前後には必ず警察官がいる

--業務以外で、ご家族で箱根駅伝のお話をされることはありますか?

担当しているときは家庭で話すことはあまりありませんが、昔、子供が小さい頃には、家族で「お父さんあそこにいるんだよ」などと話をしていたようです。私も、勤務が当たっていない時には「ここの規制はよく担当したな」と観戦しながら話すこともありました。

--落合さんは2020年3月に定年を迎えられるそうですね。

今回は特に、私としては最後の箱根駅伝ですので、何事もなく終わらせるという心構えでやってきました。何もなく終えられたら気持ちよく退職できるのかなと思っています。後進にノウハウを余すところなく引き継ぎ、来年は、箱根駅伝の中継を暖かいところで家族と観戦したいと思います。

--ランナーや、観戦される方へのメッセージがありましたら教えてください。

山のカーブなどでは、大型車と中継車がすれ違い困難な場所がいくつかあります。そういった場所では必ず先行の小田原警察署所属の白バイや規制担当の警察官がいて、大型車を止めたり、駐車車両を排除したりと、レースが円滑に流れるように対策をしています。毎年、当たり前のように進んでいるレースですが、先導の白バイ、中継車、ランナーが通過する1時間前から警察官が現場に立って規制していますので、協力していただけたら幸いです。
また、私も現場の交通規制を担当していた時、何事もないようにと周囲を見ながらですが、ランナーの姿を目にすると、心の中で「頑張れ」と思いました。特に、息子と同じ大学の選手だったりすると思わず声を出してしまいたい気持ちになったことを覚えています。もちろん勤務中なのでそうはいかないんですが、「山をこれだけ登ればゴールまであと少しだ、頑張れ」などと警察官も心の中でランナーを応援しています。