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富士見三景のひとつ御坂峠に、
太宰治がこよなく愛した宿があります。
彼が、師である井伏鱒二の紹介で、
ここにやってきたのは、29歳のとき。
自殺未遂、薬への依存など、
これまでの荒んだ生活を、改めたかった太宰。
彼はこの地で、執筆活動に専念します。
作家としての意欲に燃え、
原稿用紙と向き合う日々。
窓外には、豊かな自然・・・。
大いなる安らぎに包まれながら、
ただひたすらペンを走らせた太宰。
彼はのちにこの頃の想いを作品にしました。
名作「富嶽百景」
「富士には月見草がよく似合ふ。
富士の山と立派に相対峙し、みじんもゆるがず」(「富嶽百景」より)
凛とした月見草の美しさに、太宰は理想の生き方を見たのかもしれません。
ここは文豪・太宰が、しばしの平穏を得た場所でした。
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