カメラマン日記
〜トーマス・グラバー
(2006/4/12放送)〜

撮影は三月中旬、時折小雪も混じるという天候の予期せぬ寒さには、真冬より厳しく思えるほどでした。 グラバーが長崎の地を訪れたのは1859年、その4年後1863年(文久三年)に長崎湾を望む南山手にグラバー邸は建てられました。文久三年といえば将軍家茂の上洛に伴い新選組が結成され、京都では討幕派と佐幕派で凄惨な斬り合いが続いているときでした。そういった時勢の中で貿易商グラバーも討幕派の志士たちに武器や船舶の輸入販売という形で協力していたようでしたが、その足跡がグラバー邸にもみられます。調理場に続く廊下の天井を見上げると、坂本竜馬らを匿っていた“隠れ部屋”の入り口が見えます。普段は入ることができない“隠れ部屋”へ撮影のために、梯子を掛け上りましたが、もちろん心は150年前の坂本竜馬。屋根裏部屋なので大人が立つと頭が天井にあたるぐらいの空間は、息苦しくも感じられますが、この狭さもまた結束感や、強固な意志を作り上げていったのかも知れません。
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