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ロンドン、ザ チェイス81番地。 ここは、夏目漱石がまだ英語の教師だった頃、 イギリス留学中に住んだ家です。 |
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初老の夫人が営む3食付きの下宿でした。 部屋代が高いとか、住み心地が良くないとか、 様々な理由で下宿先を転々と変えていた漱石が、 二年の留学期間中、5番目に住みようやく腰を落ち着けたところです。 |
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階段をいくつも上がった、3階の一室が、彼の部屋。 1901年7月20日の日記には、 引っ越してきたときの様子がこんなふうに書かれています。 |
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午前、Miss Leale方ニ引越ス 大騒動ナリ 四時頃書籍大革鞄来ル 箱大ニシテ門ニ入ラズ 門前ニテ書籍ヲ出ス 夫ヲ三階ヘ上ル 非常ナ手数ナリ 暑気甚難シ 発汗一斗許リ 室内乱雑ヲ容ルゝ能ハズ |
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「とにかく本を運び込むのに手間がかかった。 おまけにべらぼうな暑さで汗がびっしょり。 参った、参った…」 そんな彼の声が聞こえてきそうです。 |
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日本における最初の国費留学生として、 英文学研究のためにロンドンへやってきた漱石。 彼は、周囲の期待を裏切ってはいけないと猛勉強していました。 部屋の中でも庭でも、本ばかり読んでいる毎日。 |
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下宿先の夫人が感心して、 「日本に帰ったらさぞ偉い人になるのでしょうね」と言うと、 彼はこう答えたそうです。 「私は、偉くなる為に本を読んでいるわけではありません。」 |
| ディレクター日記 |
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