■坪内逍遥 『最愛の妻と暮らした 終のすみか』

(2003/11/12放送)
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打ち寄せる波が、秋の訪れを運ぶ熱海。
その海を眺めるように、佇む家があります。
近代演劇の基礎を築いた文学者、坪内逍遥の家です。
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庭の古い二本の柿の木にちなみ、「双柿舎(そうししゃ)」と名付けたこの家に移り住んだのは、大正9年。62歳のとき。
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逍遥は昔気質の、家事を一切しない人だったけれど、朝食にはかならず、自分でトーストを焼きました。
火鉢に網を乗せ、バターをたっぷり塗ったパンにこんがりとした焦げ目がつくと、食卓へ。そこには、温かい紅茶を淹れて待つ、妻の姿があります。
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「小説神髄」、シェイクスピアの翻訳・・・。
自分の作品はもちろん、所有する数々の書物は、普段は目に入らぬよう、窓辺や階段の脇の、ひっそりとした棚に隠した、逍遥。
彼は、自らの人生の物語を、最愛の妻との日常のなかで、終わらせたかったのでしょう。
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終のすみかとなったこの家で。夫婦ふたり、寄り添いながら。
幸福な、優しい時間とともに。
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■坪内逍遥 『最愛の妻と暮らした 終のすみか』

(2003/11/12放送)
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今回の放送のBGM♪
「RICORDO ANCOR」RUSSELL WATSON
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次回(11月19日)の『心に残る家』は トーマス・ハーディ「心豊かに育った生家」をお送りします。 お楽しみに。 |
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