ディレクター日記
岩手県立花巻農業高等学校。
その広大な敷地の一角に、宮沢賢治が新しい農村のあり方を夢見ながら住んだ家があります。元々賢治のおじいさんの隠居所として建てられた家だけに、簡素ながらも、しっかりとした家です。

オルガンの置いてある部屋は、賢治が後から増築した部屋です。そこは、彼の理想の暮らしを実現するための部屋でもありました。
昼間は畑を耕し、夜はこの部屋で楽団の練習をしたり、自作の童話を語り聞かせたり。賢治が住んだのは3年ほどでしたが、理想に燃えた彼を支えたのは、この家だったのかもしれません。

後に病に倒れ、実家に戻り、この家に戻ってくることのなかった賢治。
日頃都会の喧噪の中で暮らす私ですが、こうして自然に囲まれた場所で、賢治を思いながら、晴耕雨読の生活をするのも悪くないなと思うのでした。