ディレクター日記
 〜ルソー (2003/8/13放送)〜

 今回はフランスとスイスにロケに出たのですが、恋の話が多かったような気がします。この番組は作家さんが台本を書いてくれるのですが、著名人の長い人生の中のどの部分に注目するかというのは、ディレクターとしても興味のあるところ。恋の成就した話やうまくいかなかった話が家のエピソードと重なって、誰もいない空間なのにふと人の息づかいが聞こえてくる・・そんな番組ができたらいいなといつも思っています。
 さて、ルソーがヴァランス夫人と過ごした家ですが、二人が別れるきっかけとなったのは、夫人に新しい恋人ができたからです。そのことが発覚するきっかけとなったのは、夫人が恋人からの手紙をライティングデスクに隠し持っていたのを、偶然家政婦が掃除中に見つけてしまったことからでした。そのことを知ったルソーはその日のうちに家を出るのですが、この家にはそのライティングデスクや、ルソーがその日歩いただろう石畳の道などがそのままのこっています。失意の彼の気持ちはどんなものだったのだろう?撮影スタッフたちは撮影を始める前に机に触れ、石畳を歩きます。彼の気持ちに少しでも近づけるように、そしてそれを映像にしてみなさんに伝えるために。
 僕たちは何度も何度もその場で台本を読み返します。そんな風にして撮影はいつも始められるのです。

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