ディレクター日記
 〜ハーマン・メルヴィル (2004/10/27放送)〜

日本でもおなじみの「白鯨」の作者、メルヴィルの家はマサチューセッツ州のピッツフィールドという小さな街にあります。今では住宅地の一角ですが、彼が住んでいた19世紀当時、彼の家の周りに他の家はほとんど無かったようです。繊細な心理描写を得意とするメルヴィルの小説は、当時のアメリカ社会ではほとんど受け入れられず、彼の死後に評価を受けました。人嫌いだった彼は、町から遠く離れたこの場所で、書斎にこもって小説を書き続けたのだそうです。しかし、発表されたのはごく一部でした。彼は自分の小説の評価に絶望し、この家から引っ越すとき、自分の書いたもののほとんどを燃やしてしまったのだそうです。彼の書斎から見えるのは、広々とした畑と遠くの小高い丘。彼はその景色をとても愛していました。いつまでも変わらない穏やかな景色は、絶望に打ちひしがれている彼の心をどれだけ癒したことでしょう。
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