■ 正伝寺(しょうでんじ)   6月15日放送

洛北西賀茂に建つ正伝寺。かつては後醍醐天皇の勅願寺として、堂塔伽藍を完備し偉観を誇ったが、応仁の乱で焼亡し、その後、秀吉・家康の援助で再興した。
現在は本堂と庫裏、庭園を残すのみだが、小堀遠州作の「獅子の児渡し」は、はるかに比叡の霊峰を取り入れた借景式の庭園で、禅苑の心の静けさを味わうことができる。




西賀茂の閑静な高台に立つ正伝寺。深い緑に囲まれた参道をたどると、初夏の風にのった鳥の声が心地良く、心が次第に落ち着いてきます。


なだらかな石段の先に、静かに佇む本堂。


白砂の庭を眺める方丈は、豊臣秀吉が築いた伏見桃山城の遺構です。この寺に移築されてからは、本尊を守り続けてきました。

壁や襖に残る障壁画は、画家・狩野山楽が中国・西湖(せいこ)の四季を五十八面にわたって描いたものです。山楽の作品の中でも傑作といわれ、格調高い趣を偲ぶことができます。

庭越しに望む比叡山が、心に残る正伝寺です。


観光バスが乗りつけるような有名寺院ではないので、訪れる人も少なく、ゆったりとした時間を過ごすことができる通好みのお寺です。
撮影中、タクシーで本堂脇まで来る拝観者が多く見られましたが、山門から歩いて行かれることを是非オススメしたい! 
木々に囲まれ、鳥の囀りに耳を傾けながら歩くこと5分。参道はなだらかな坂道と石段なので、歩きやすく、次第に心が落ち着いてきます。ただ残念なのは、すぐ隣にゴルフ場があり、途中カートとすれ違うことがあるんです・・・日常を忘れ穏やかになった心を、いきなり現実に引き戻されたようでガッカリしてしまいました。

庭はシンプルな構成の枯山水庭園ですが、白壁越しに眺める比叡山は素晴らしく、お天気の良い日など広縁に腰を下ろし、ゆっくり過ごす拝観者も多いようです。
狩野山楽の障壁画は国の重要文化財に指定されています。1997年から美術院国宝修理所で4年がかりの修復が行われ、昨年3月から公開されました。大覚寺の「牡丹図」など、華美な作品を描いた山楽の初期の作品と伝えられています。しかも、これほど大展開で描かれたものは稀で、おそらく当代唯一のものといわれ、美術史上からみても非常に貴重な遺品だそうです。撮影時も美術大学の学生が訪れ、熱心に見ていました。
方丈に安置されているご本尊は、とてもやさしいお顔をしていらっしゃいます。血天井・障壁画だけでなく、仏様のお顔も是非拝んでいただけたらと思います。


「 童屋根からのささやき 」
演奏/作曲:冨田 勲