■ 真如堂(しんにょどう)   9月14日放送

東山の真如堂は、京都でも屈指のもみじの名所として有名です。984年の創建といわれ、三重塔や本堂などの堂々たる建築物は、江戸時代の再建です。応仁の乱などの戦乱で焼かれ、本尊とともに各所を転々とし、この地に再建されたのです。秘仏の阿弥陀如来像が安置されている本堂は、巨木を使った柱の豪壮さと、中国風の人物などが描かれた欄間の彫刻の精緻さが同居する、すばらしい空間です。歴代天皇や将軍・時の権力者の厚い信仰を集めたことでも知られ、後醍醐天皇が寄進した舎利塔や、足利将軍義政が寄進したルソン(フィリピン)の壷などの寺宝が展示されています。また、東山を借景とする「涅槃の庭」も、名庭園の誉れ高い傑作といわれています。




秋雨にけむる、東山・真如堂。
気の早いもみじがしっとりと色づき始め、もうすぐ境内は燃え立つような紅葉に包まれます。



1018年間の寺の歴史は、波乱に満ちたものでした。
戦で焼かれ、本尊と共に難を逃れ、再びこの地に建ったのは309年前。繊細さと壮大さが同居する本堂には、今、そんな苦難の時代を感じさせるものは何もありません。

ほのかな灯りに浮かぶ、後醍醐天皇寄進の舎利塔や、足利将軍義政が寄進した、フィリピン伝来の油壺が見事です。


降りしきる雨は、やがてほのかな冷気を呼び、木々の緑をゆっくりともみじへと変えてゆく。雨に濡れる緑もそろそろ見納めと思えば、セミ鳴きしきる日々の記憶すらどこか懐かしく、生き物たちも、去りゆくまぶしい季節を惜しんでいるかのようです。


東山三十六峰を借景とする名庭、「涅槃の庭」。見事な造形美の向こうに広がるたとえようもなく美しい墨絵の世界が、見る人の心をひきつけてやみません。



取材の日はあいにく雨でしたが、それがまた風情をかもし出しとても美しい映像が撮影できました。もみじの名所を秋の初めに撮るというのも難しいものだなと思っていただけに、秋雨に濡れた緑の美しさには正直びっくりでした。紅葉の季節には、押すな押すなの大賑わいになるだけに、一番見ごろの時期になる前に訪れておくのも素敵なことかもしれません。よく見ると様々な野鳥が雨宿りをしたり、雨上がりに梢で歌ったり、苔むす庭の上でえさをついばんだり、東山の自然の豊かさが真如堂の風格ある境内で楽しめたロケでした。
「涅槃の庭」は、東山を借景とする庭名です。東山の山々は雨が強いときにはかすんで見えず、降りが弱くなるとまさに墨絵のような姿を見せ、そしてあっという間にはっきりしてくるというめまぐるしい移り変わりが見事で、じっと眺めていてもあきません。 繰り返しになりますが、ハイシーズンでない雨の日に、焦らず急がず鳥や山を見るぐらいのつもりでお寺を訪れるという、ちょっと変った京都のたびもまた素敵なものではないかと感じた、真如堂の一日でした。


「 the miracle of moon 」
作曲:Hauss Hoinkis
演奏:f.r.e.u.d.