■ 哲学の道の桜 4月5日放送

大正時代、京都帝国大学の哲学者・西田幾多郎・河上肇・田辺元などが思索にふけりながら散策したということから名づけられた、琵琶湖からの疎水沿いに伸びる道をいいます。わかりやすく言ってしまうと、銀閣寺と若王子神社をつなぐ水路沿いの遊歩道です。
画家・橋本関雪の夫人が植えた500本のソメイヨシノが、毎年春には水路を覆うように咲き乱れ、京都でも有数の桜の名所となっています。ほかにも四季折々のさまざまな花が咲き、秋の紅葉も目を見張るほどの美しさを見せてくれる自然の美しさにあふれる東山の名所です。




百年以上前に作られた、琵琶湖から流れる疎水(そすい)。
哲学の道と呼ばれる水辺の道には、若王子神社から銀閣寺に至る迄の間に、五百本の桜が植えられ、満開の時を待っています。


少し春の遅い京都は、今一斉に花たちが咲き競い始めています。



なぜ人はこの流れに沿った小道に心惹かれるのでしょう。
静けさ、流れの音、鳥の声。
人それぞれ・・・ 答えなどありません。

流れを見つめていると、やり残してきた事が、ずいぶん遠く感じられます。
そしてこの町で、ありもしない恋が芽生えそうな気がしてきます。



西田幾多郎などの哲学者たちが、思索に耽りながら歩いた、「哲学の道」。
刹那に咲き、そして散る疎水の桜を見上げ、彼らは何を思ったのでしょう。

桜という時計の文字盤の上を、季節の針が通り過ぎていくときの、その早さ・儚さに胸打たれていたのでしょうか。



過ぎ去りし桜の思い出は、薄紅色の幻。
あの日あの時と同じ優しい春が、心を暖めてくれます。



撮影の日はすごく寒い日で、いわゆる花冷え。しかし残念ながらそう言うにはまだまだ桜の花の数が足りません。実際には数日後に五分咲きになるとのことで、桜の名所を紹介するにはまだ早いぞ、というお叱りを受けない映像を撮るのに大苦戦。もちろん開花している花もあり、それなりに美しいのですが・・・。しかも、番組では原則的に人影が映らないように気をつけているため、春休みのしかも休日に撮影をしていたので人の切れ目がなく、夜明け前から準備・夜明けと同時に撮影していたにもかかわらず、人のいないタイミング待っての撮影のために、普通よりずっと時間がかかってしまいました。

その代わりといっては何ですが、桜以外の花がたくさん咲いておりとても美しい。むしろ目を奪われたのは春を先取りするような、そんな川岸の花々でした。主役は決して桜だけではないのです。哲学の道を「桜の名所」と言い切ってしまうのは乱暴な話なのかもしれません。なんでこの道をみんな歩きに来たがるのだろう。ずっと考えていたのですが、名所だ名物だと喧伝されることで、むしろ安っぽく感じたり自分なりの楽しみ方ができなくなりがちなことが多い中で、ここは自分だけの時間・自分のための楽しみを見つけるのにとても向いている「癒しの環境」なのだろうなと思いました。哲学者たちが思索の世界に遊んだのも、同じような理由だったのかもしれません。


「 あの日にかえりたい 」
作曲者:荒井由実
演奏者:小野リサ