■ 三室戸寺 (みむろとじ) 6月21日放送

その始まりは、約1200年前と言われる三室戸寺は、京都市の南に位置する宇治市にある古刹です。山の斜面にあり、山門をくぐると長い上り坂。高い木立の中を進み、急な階段を上ると、7〜8月の開花を待つ沢山の「蓮」が葉を広げる境内が現れます。
本堂は、江戸時代に創建された堂々たる禅寺風の建築で、深い緑を背景にその威容を誇っています。天皇・貴族の信仰を集めた後、庶民の信仰のよりどころとして西国三十三所霊場の札所として親しまれてきました。
今でも軒下には、足腰の健康を祈る小さな草鞋(わらじ)が奉納され、痛いところを撫でると回復すると信じられている「おびんずる様」が鎮座します。

毎月17日に公開される宝蔵庫には、藤原時代の仏像が五体安置され、平安時代の仏教美術の優美な作風を今に伝えています。特に正座する「勢至菩薩坐像」などは、大陸から伝来し日本の風土に馴染み始めた当時の仏教の様子が、「正座」という日本の生活様式を取り入れたお姿から伺われ、貴重です。
五千坪の庭園にはこの時期、一万株のアジサイが咲き誇り、見るものの目を楽しませてくれます。30種類を超えるアジサイは、高い杉木立の中、雨に濡れながら鮮やかな色合いを見せ、前述した蓮などと並んで、「花の寺・三室戸寺」という呼び名にふさわしい美しさを見せてくれます。




1200年の歴史を持つ宇治の三室戸寺。深い緑の中、そぼ降る雨にぬれながら参道を行くと、天皇・貴族たちの厚い信仰を集めたという寺の境内が見えてきます。



禅寺風の見事な本堂は、西国観音霊場(さいごくかんのんれいじょう)の札所(ふだしょ)です。人々は、小さなわらじに丈夫な足腰を、おびんずる様には病気などの回復を祈ります。



豊かな自然の中、寺は平安の昔からの貴重な宝物(ほうもつ)を守り続けてきました。


月に一度公開される、五体の重要文化財の仏像。
特に藤原時代の作の、正座したお姿は、仏教が日本の生活様式に根ざしてきた貴重な証です。



一万株のあじさいが咲き誇るアジサイ庭園は、今がまさに見頃。
およそ30種の色とりどりのアジサイは、雨にかすむ木立ちの中、深い色合いの美しさを競い合います。



眩しい夏が来る前の、つかの間の安らぎ。梅雨の宇治を、三室戸寺のあじさいが静かに彩ります。



下見をしたときは、強風の晴天でした。汗ばむほどの陽気で、木々の緑も美しくみずみずしい輝きを見せていましたが、ロケの日はいかにも梅雨真っ最中!!という密度の濃い雨が降りしきり、スタッフは1カットも撮影しないうちからずぶ濡れ。
コンディション的には最悪でしたが。ところがこの宇治の山寺の情景は意外にも晴れていたときより遥かにしっとりと美しく変化していました。緑も石段も本堂も下見の時の絵葉書風な印象から、情緒あふれる日本映画の舞台になりそうな雰囲気でビックリ!特に今が盛りのアジサイの花は、雨の中でしか見られない色合いを惜しげもなく見せてくれて、「これなら濡れ甲斐があるな・・・」と思わざるをえませんでした。
特に目を奪われたのは、境内の蓮の葉の上に降りしきる霧雨。葉に落ちた細かい雨粒が、小さな震えを見せながら葉の中央に集まっていく様子は、一生懸命に天の恵みを吸って、自然の命の燃え上がる暑い夏を迎える準備をしているように見え、目を離す事が出来ませんでした。番組の中ではわずか数秒・・・しかしカメラが止まった後でも、現場の目は意外にそんな所に釘付けになっているものなのです。
チョッとした感動のシーン・・・とか言いながら、撮影終了後には濡れ鼠の体に思いっきりシャワーが浴びたいな〜というのも本音でしたが。


「 Soft and Gentle 」
作曲者:ガイルモラン
演奏者:チックコリア