■ 鹿王院 (ろくおういん)  11月29日放送

京都・嵯峨野にある鹿王院は、1380年、室町幕府三代将軍・足利義満が24歳の時に自らの長寿を願い建立した禅寺です。義満自筆の「覚(かく)雄山(ゆうざん)」と書かれた額を掲げる山門は、600余年の時を経て、唯一、創建当時の姿を今に残しています。
本堂に祀られている御本尊「釈迦と十大弟子」は、鎌倉仏師・運慶の作と伝えられ、その傍らには義満自身の坐像も祀られています。庭園の中心を成す舎利殿は、後に義満が建てた金閣寺に似ていることから、「嵯峨野の金閣」ともいわれる壮麗なものです。



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嵯峨野の「鹿王院」は、およそ600年前に創建された禅寺です。


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石畳の続く参道。
境内は、移ろい行く時の中で、今も変わらぬ静けさに包まれています。


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この寺は、足利三代将軍・義満(よしみつ)が、24歳にして、自らの長寿を願い建てたもの。


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本堂には、運慶(うんけい)作と伝えられる 本尊が祀られています。
この仏に、長寿への祈りを一心に捧げた義満。
室町幕府の最盛期を築き、その生涯を閉じたのは51歳の時でした。

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背後遥かに、嵐山を望む庭園。
金閣寺も模した、と言われるほど壮麗な「舎利殿(しゃりでん)」が中心を成します。


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厨子の中に安置された 小さな多宝塔(たほうとう)には、「お釈迦様の歯」が納められ、古より信仰の対象として祀られています。


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ただ静かに佇む「鹿王院」。
鮮やかな色づきとともに訪れた嵯峨野の秋。
朱色の葉は、苔むした地に着き、一層その彩を増します。

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11月も下旬に差し掛かった頃の撮影。紅葉の色付きも真っ盛りと思いきや、今年、古都の紅葉は遅いようで、これからが見ごろといった感じでした。しかし賑やかな嵯峨野にあって、喧騒を忘れさせてしまう程の「鹿王院」の静けさには驚かされました。
創建当時のままという山門は、かの一休和尚もくぐったといわれ、その先に広がるのは、まさに静寂の世界。嵐山を借景とした庭園はとても幻想的で、その中に、ひっそりと佇む舎利殿はとても壮麗です。そして、驚きなのはその舎利殿の内部にある金色に輝く厨子を拝観できるということ!さらに、毎年10月15日のたった1日だけ、大厨子の中にある小さな多宝塔が御開帳されます。
多宝塔の中に祀られているのは、水晶に包まれた「仏牙舎利(ぶつげしゃり)」。仏牙舎利とは「お釈迦様の歯」のこと。日本のお寺で仏牙舎利を祀っているところは非常に稀だそうです。歯は口に生えているものですから、釈迦が唱えた説法が歯には込められていると考えられています。ちなみに「仏像」というものが仏教世界に誕生したのは、釈迦が入滅してから500年も後のこと。それまでの間、仏教徒の信仰の対象になっていたのが仏牙舎利や仏舎利(釈迦の遺骨)なのだとか。ご住職曰く、仏牙舎利信仰や仏舎利信仰は仏教界において「最も素朴な信仰の姿」なのだそうです。来年の10月15日、ぜひ足を運んで、この目で仏牙舎利を拝観したいものです。


「 出会い 」
作曲者:松谷 卓
演奏者:松谷 卓