■ 拾翠亭(しゅうすいてい)
  9月10日放送


茶室「拾翠亭」は、五摂家の一つであった九条家の別邸として建てられ、茶会や歌会などに使用されていました。現存する公家屋敷の数少ない遺構で、貴重な文化遺産です。
数奇屋風の書院造りで二層からなり、二層の外回りには縁高欄と言われる手すりが施され、簡素な中にも貴族的な優美な外観を呈しています。
「拾翠」の名前には緑の草花を拾い集めるという意味が込められており、その昔平安時代に貴族の方々がのどかな春の日に野辺に出て、草花を摘んで楽しまれた慣わしに因んで名づけられました。
また、翠という字にはみどりの美しい鳥のカワセミの意味があり、かつてこの池に数多くのカワセミが飛来したことから「拾翠」と名づけられたとも言われています。



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京都市のほぼ中央に広がる京都御苑。
広大な敷地にはおよそ5万本もの木が植えられ、
市民の憩いの場として親しまれています。

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苑内の一角に佇むのは拾翠亭。
摂政や関白を務めた九条家の茶室として、
今から二百年ほど前に建てられました。
簡素な中にも優美な姿を誇り、貴族の趣を今に伝えます。

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広間の前には九条池が広がります。
池から吹く心地よい風に、秋の気配が漂います。

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長い年月を経て、黒くなった小間の壁。
ところどころに残る本来の色をほたるに見立てる
公家ならではの風情が心に残ります。

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御苑に面して建つ「茶房染井」は、
懐かしい雰囲気に包まれています。
程よい甘みが散策の疲れを癒すひととき。

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穏やかな、心やすらぐ京都の旅です。

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広い京都御苑を歩いていると、各所に楠や欅、銀杏などの巨木が圧倒的な存在感で佇んでいるのを目にします。梅や桃、桜など多彩な木々が四季折々に美しい花を咲かせるのも御苑の魅力。これほど豊かな自然の宝庫が街中にあるなんて、ステキなことだとずっと思っていました。
中でも好きな風景が、九条池にかかる高倉橋から眺める拾翠亭。池面に映る、その優美な姿に憧れ、一度は中を見てみたいと思っていた願いが今回ようやくかなったことは嬉しい限りです。
とくに8月から9月中旬にかけては百日紅の花が邸宅を彩り、美しい映像が撮影できます。
広縁に腰を下ろし、のんびり池を眺めていると、京都市の中心地にいることを忘れてしまうほど心が落ち着いてきます。池には鯉に混じって亀が多く生息しており、鷺もよく見かけますが、撮影時は残暑が厳しかったせいか姿を見せてくれませんでした。
御所張りと呼ばれる障子の張り方など、随所に公家ならではの趣が見られるので、ぜひ一度お立ち寄りください。


「 Threads of Love 」
作曲者:Lorie Line
演奏者:LORIE LINE