今週の放送内容

実相院(じっそういん)
10月14日放送

鎌倉時代、静基(じょうき)権僧正により創建された実相院は、皇族の血を引く人々が住職を務めた元 天台宗寺門派の門跡寺院です。東山天皇の中宮・承秋門院(じょうしゅうもんいん)の御所の一部を移 築したというだけあって、客殿・四脚門・御車寄・大玄関など御所そのままの優雅な造りを残しています。
狩野派の絵師により描かれた襖絵は、格式の高い門跡寺院だけが飾ることを許されたそうです。鶴の 間の「群鶴図」や大玄関の「群仙図」など、躍動感にあふれた自由な描写が印象的です。
10月14日から11月30日まで、秋季特別展が開催されます。歴代の天皇が記した書物など、数多く の寺宝が公開されます。紅葉の季節には、回遊式の庭と枯山水の庭の絶景も楽しめます。

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京都・心の都へ。
今週は、実相院(じっそういん)を訪ねます。


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かつて、皇族の人々が住職を務める
寺として名を馳せた、実相院。


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大宮御所の一部をそのまま移築したという客殿は、
300年もの時を経てなお、当時の壮麗さを留めています。


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広間に飾られた襖絵は、
ここに暮らす女院たちの心を潤してきました。
狩野派ならではの自由な描線を眺めながら、
何を想い描いたのでしょう…。


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今日から特別公開されている、皇族ゆかりの寺宝。


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生地を貼り合わせて作る押絵(おしえ)は、
御所に受け継がれた優美な文化を今に伝えます。

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後陽成(ごようぜい)天皇が書き写したという
「仮名文字遣(かなもじづかい)」は、
日本古来の仮名の使い方を記した、貴重な文書です。

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客殿を囲むのは、洛北の自然を生かした、2つの庭。


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回遊式の庭を彩る木々は、
四季が移ろうごとに色を変え、
さまざまな表情を織り成します。


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奥へ進めば、高貴な人々が蹴鞠に
興(きょう)じた枯山水の庭。
華やかな記憶が息づく、実相院です。


実相院といえば、庭の木々が板間の床に映り込む「床みどり」と「床もみじ」が有名です。私は初めて「床 みどり」を見ましたが、その光(緑の木々)と闇(黒光りする床)のコントラストの美しさに、しばし目を奪わ れてしまいました。「床もみじ」も見たい!・・・紅葉の時期、再び訪れることを心に誓ったほどです。
皇族の人々が暮らしていたというゴージャスな客殿ですが、なぜか心地よい生活感も感じられ、高貴な のに身近な、とても不思議な空間でした。それぞれの広間が広すぎず狭すぎず、ちょうど暮らしやすいサ イズなのかもしれません。
打ち合わせの際、お寺の方にいろいろな寺宝を見せて頂いたのですが、“これは○○天皇が書かれた…” なんていう解説を聞けば聞くほど“私みたいな庶民がこんな間近で見てしまっていいのだろうか?”とドキ ドキしてしまいました。個人的に印象的だったのは、皇族の引き出物としてゆかりの人々に配られるという ボンボニエール(砂糖菓子を入れる銀の小箱)です。今回は残念ながらご紹介できなかったんですが、女 性なら誰もがかわいい〜っ!≠ニ叫んでしまうはず…の愛らしさです。


「月夜のしずく」
作曲・演奏者:菅井えり