今週の放送内容

桂春院(けいしゅんいん)
9月22日放送

1598年、織田信長の孫、津田秀則により見性院として創建され、1632年美濃の豪族、石河壱岐守源貞政が現在の建物を完備し桂春院と改めた。
妙心寺の塔頭の多くは非公開だが、常時拝観できる塔頭の一つ。 滝を表す巨石が置かれた枯山水の坪庭「清浄の庭」、一直線に伸びる躑躅の植え込みが印象的な「真如の庭」、茶室の露地庭「思惟の庭」と「侘の庭」、趣の異なる四つの庭が鑑賞できる。
江戸時代禁止されていた茶の湯を禅僧が密かに楽しんでいた隠れ茶室・既白庵は、近江の長浜城から移されたと伝わる名席。

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今週は桂春院を訪ねます。


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織田信長の孫により創建された妙心寺の塔頭・桂春院(けいしゅんいん)。


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境内は深い緑に覆われ、木洩れ日が苔の美しさを際立たせます。


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江戸時代に再建された方丈の内部を飾るのは狩野山雪(さんせつ)の襖絵。


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金箔に松が大胆な構図で描かれています。


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対照的な山雪の水墨画。
禅寺ならではの落ち着いた風情を醸し出します。

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高い木々に囲まれた思惟(しい)の庭は茶室への露地庭。


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飛び石を進むと門の先は侘びの庭へと続いてゆきます。


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妙心寺では一時期、茶の湯が禁じられました。
そのため僧侶たちは気づかれないように工夫した
隠れ茶室を作りました。


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この寺には書院の背後に二重の襖で巧みに隠された
茶室・既白庵(きはくあん)が残されています。


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厳しい修行に明け暮れる禅僧たちの密かな楽しみ。
隠れた茶会の様子が目に浮かぶ桂春院です。


妙心寺境内の東北の隅にあり、正門から離れているためでしょうか、桂春院は同じく公開されている塔頭の退蔵院よりも参拝客が少ないように感じました。
でも、その分ゆっくりと鑑賞できます。
通常、庭に下りることは禁止されているお寺が多いのですが、桂春院では方丈から履物が用意されていて、「真如の庭」の裏手に回りこめます。「真如の庭」と植え込みで隔てられた場所は一面の苔に覆われ、その上に木洩れ日が陰影を作る穏やかな景観がひろがります。 庭としての名前もない空間ですが、個人的には四つの庭よりも好きになりました。


「流氷と満月」
作曲・演奏者:吉川 忠英