第二部 都の空間装飾-障壁画の美
第二部のテーマは「空間装飾」。まずは、御所のインテリアから。

「獅子」と「狛犬」。さあ、どっちがどっち?
御所の中にある紫宸殿(ししんでん)にあった狩野孝信筆の「賢聖障子(けんじょうのそうじ)絵」。魔除けの獅子や狛犬ととともに中国古代の賢人聖人32人が描かれており、中には、著名な諸葛亮や太公望の姿も見える。狛犬たちのブルーの目がなんだかかわいい。
次は、京都の寺院を代表する世界遺産・龍安寺に、NYから初の里帰りとなった「列子図襖(れっしずふすま)」。

仙人が飛んでいるように見えるのは「風」が感じられるから。
これは、明治の廃仏毀釈運動の際に龍安寺から流出した後、米国フロリダのコレクターがハワイで購入し、メトロポリタン美術館に寄贈されたもの。
そして、同じく龍安寺の石庭。「四季」が見られるということで、これも楽しみにしていた作品の一つ。一年掛けて4Kで撮影し、パノラマで再現した約4分30秒の「石庭の四季」を見て唸った。

16メートルを超える画面での4K映像体験は強烈。
小鳥飛び交う緑の夏。黄と紅に葉が燃える秋。枝ぶりも寂しい灰色の冬。枝垂桜(しだれざくら)舞い散る春。だが、季節が次々と過ぎ去り変わっても禅寺の石たちはほぼ変わらない。夏の雷雨に揺れる木々、庇(ひさし)から落ちてくる雨だれ。心細さを感じるほど石庭の空気感がこちらに伝わってくる。何度も繰り返し体験したくなる不思議な空間だ。
最後に、武家の象徴、二条城の障壁画。まずは、二の丸御殿黒書院一の間、二の間の全69面が勢ぞろい。普段は模写を飾っているので、これは京都でも接することができない作品だ。

胡粉(ごふん)を盛り上げて桜の花弁を3D表現。
暗い室内で、ロウソクの火にゆらゆら照らされた「夜桜」の陰影はさぞかし美しかったに違いない。また、二の丸御殿大広間四の間を飾っていた「松鷹図」15面も参上。

「鷹」だけど「狗鷲(いぬわし)」。
ギラギラした眼の狗鷲(いぬわし)は、徳川将軍家の威光を象徴。こちらも大きな障壁画で、長押(なげし)をも貫く大きな松も相まって迫力がある。
「特別展 京都」は巡回展ナシの一度きり。開催期間も48日間と短かめだが、「ここでしか見られない京都」。京都好きなら見ておきたい。
