2回目でもおいしい!目がテン!?ライブラリー


鍋に不可欠! ハクサイ  #564 2001/01/14

 いよいよ冬本番。この時期食卓を賑わせる冬野菜の代表格がハクサイ。鍋に浅漬けにキムチに中華料理に大活躍です。しかし、こんな冬本番に旬を迎えて、ハクサイはどのようにしてその身を守っているのでしょう?またあの大きさや、白い葉っぱにいったいどんな謎が隠されているのでしょう?今回はそんなハクサイの謎を科学的に解き明かします。

 ハクサイはなぜあのような独特の、立った形をしているのでしょうか?それは立葉と呼ばれる、垂直に生えた特殊な葉に秘密がありました。種をまき、発芽したハクサイの葉が15枚程度まで増えてくると、葉が立ってきます。この立葉が壁となり、中心から生えてくる若葉が横に広がることができずに、葉のギッシリつまったハクサイに成長するのです。このハクサイ、実は人間が品種改良したからなのです。それでは元々のハクサイはどんなものだったのでしょう?「目がテン!」でハクサイの祖先再現にチャレンジです。方法は簡単。若葉が横に広がるのを妨げている立葉を毎日広げればいいのです。

緑菜  続けること2週間、ついに葉の広がった、青々としたハクサイが出来ました。名づけて“緑菜(りょくさい)”スタジオで所さんが試食。すると普通のハクサイに比べ苦味やエグみが多く、生で食べておいしいものではありませんでした。

 この苦味の原因は葉緑素でした。葉緑素が光合成することで老廃物ができ、それが苦味の元となっていたのでした。そのためハクサイは、葉を丸めて中に日光が当たらないようにして光合成が行われるのを防ぎ、苦くならないようにしていたのです。

 ハクサイの浅漬けの製造方法を見てみましょう。方法は簡単。大量の塩を振りかけ、重しを上に載せるだけなのです。すると、なんと1日でハクサイは水でひたひたになってしまいました。ハクサイに加えた塩により、ハクサイの細胞の周辺が濃度の高い塩水となったためにそれを薄めようと細胞の中の水が外に引き出されます。この浸透圧の働きにより、ハクサイから大量の水が出てしまったという訳です。ところで、ハクサイはそんなにたくさんの水分を含んでいるのでしょうか?そこでキャベツとレタスと、水分含有量を比べてみました。

ハクサイの細胞写真「葉脈」  すると、殆どその水分含有量は変わらなかったのです。しかしそれぞれの野菜に同じ量の塩を加え、一晩漬けてみるとその差は一目瞭然!ハクサイが600ccもの水を出したのに対し、レタスは250cc、キャベツに至ってはわずか50ccと、大きな差が出たのです。ではいったいハクサイはなぜ、あれだけの水分を出すのでしょう?それは葉脈部分の違いでした。それぞれの野菜1kg分の葉脈だけを切り取ってみると、ハクサイの葉脈はキャベツやレタスの3倍もありました。葉脈の細胞写真を見ると、葉脈の細胞の方が葉脈以外の部分の細胞よりも大きく水をたくさん含んでいたのです。そのため葉脈が葉全体の中で大きな割合を占めるハクサイが、水をたくさん出したのでした。この葉脈の細胞が大きいことは、鍋料理にも活かされていました。鍋の中で加熱されたハクサイは、細胞壁と細胞膜が壊れ、細胞の中の水が飛び出していきます。するとそのすき間にうまみが染み込みやすくなるのです。鍋料理に必ずハクサイが入れられるのは、ハクサイが周囲のうまみを吸い込みやすい野菜だったからなんです。

 水分をたくさん含んでいるハクサイ。これでは真冬に凍結してしまうのではないでしょうか?普通、野菜は霜が降りたり気温が0℃以下になると細胞内の水が凍って枯れてしまう「霜枯れ」を起こしてしまうのですが・・・。

 そこで現在ハクサイを栽培している最北端、仙台へと出向きました。この時期気温がマイナスにもなる仙台で、ハクサイの内部に温度計をセットし、温度を測ってみました。すると驚くことに、外気温がマイナス0.5℃を記録してもおよそ4℃をキープしていました。ハクサイの寒さ対策とは何なのでしょう?ハクサイを半分に切ると中にたくさんのすき間があいているのがわかります。ハクサイは、このすき間に大量の空気をため込んでいるのです。空気はダウンジャケットや家の2重窓などに見られるように断熱材としての性質を持っています。ハクサイの葉を次々はがしながら枚数を数えてみるとキャベツの55枚を楽々しのぐ73枚。ハクサイは葉をたくさん重ねることで空気をため込み、保温効果を増していました。

所のポイントハクサイは、究極の重ね着野菜だった!


 なんとハクサイは寒さに強いばかりではなく、寒いほどおいしくなるというのです。中には、冬の寒い時期にわざと収穫を遅らせ、ハクサイに何度も霜をあてる栽培方法まであります。実はハクサイは、気温が低くなるとデンプン等の養分を、甘いショ糖やブドウ糖に変化させ、内部に行き渡らせるために甘くなるのでした。どうしてそんなことをするかというと、糖分には水が凍るのを防ぐ働きがあるためです。試しに砂糖水と真水を冷凍庫に入れて一日冷やしても、真水は当然凍っているのに対し、砂糖水は凍りません。そこで「目がテン!」は、寒さが一層厳しくなる夜10時から朝4時までに扇風機で風を送り、よりおいしいハクサイ作りに挑戦しました。風をあて続けること2週間。そうして出来たハクサイを収穫し、糖度を測ってみました。まず普通のハクサイの中心部分の糖度は7.2。そして我らが極甘ハクサイは、なんと8.0!見事成功です。

 スタジオで試食した所さんも、その出来栄えに大満足でした。ちなみに1個のハクサイの糖度を測ると、中心に向かうほど甘くなり、一枚の葉では先端になるほど甘くなるという結果が出ました。

所のポイントハクサイは寒ければ寒いほど甘くなる!!




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