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 都会で発見山菜の科学  #581 (2001/05/13) 

 山は新緑真っ盛り!草木が思いっきり成長するこの季節、まさに山菜取りの絶好のチャンスです。中でも幻の山菜と呼ばれる「アマドコロ」。ユリ科の植物で、食べると美肌効果があるそうです。ハードスケジュールのせいで、最近お肌がピンチの魚住アナウンサーのために矢野左衛門が立ち上がりました。「見つけられなければ即打ち首!」と言われた決死の山菜大捜索で明らかになる、山菜の知られざる素顔の数々。同じ植物なのに、山菜と野菜にはずいぶんと違いがあるのです。今回はあなたも山に行きたくなることうけあいの、山菜の秘密を科学します。

 山菜とは、食用とされる草のこと。そもそも古来から食べられる草のことを菜と呼んでいましたが、室町時代から栽培される草類が定着してそれを圃菜(ほさい)と呼ぶようになり、野のものは採れる場所により山菜、野菜、水菜と言われていました。現在のように栽培したものを野菜、野山などで採れるものを山菜と呼ぶようになったのは、江戸時代からなんです。つまり、山、水辺、野原に生えている食用となる植物は、すべて山菜なんです。「ならばこのお江戸にも山菜はあるはず」と、矢野左衛門は、高層ビルの立ち並ぶ新宿の街へと繰り出しました。するとさっそく都会のど真ん中、都庁の真下でオニタラビコという、食べられる草を発見しました。さらに植え込みの中に春の七草のゴギョウ、車行き交う道路の中央分離帯では俗にペンペン草とも言われるナズナハコベ、ヨモギなど全部で11種類も見つかりました。この中には意外にもタンポポも含まれていました。葉っぱをサラダにするとおいしいタンポポも、立派な山菜だったのです。

 でも山菜というからには、やっぱり山でしょ。と言うわけで、アマドコロを求めて山にやって来た矢野左衛門。この道25年の名人に教わりながら、山菜採りスタートです。けれど思いっきり武士の姿の矢野左衛門、これでは山へは行けません。マムシなどの毒ヘビや虫などから身を守るために長袖長ズボン、長靴は必需品です。そして山菜採りの道具となるハサミやコテも忘れてはいけません。さらに山菜取りにはルールがありました。

 1.根こそぎ採らないこと。食べる分だけ採りましょう。
 2.芽は全て採らずに必ず残すこと。
 3.国立公園や自然保護地域では採らないこと。

 これらはみんなが山菜採りを楽しむための、最低限のマナーです。絶対に守ってください

 ところで、ツクシはスギナの子とよく言われますが、ツクシは成長したらスギナになるのでしょうか?実はツクシはスギナの胞子葉と呼ばれるもの。ツクシとスギナは地中でつながっていて、胞子を飛ばす役目の葉っぱなのです。そして三大山菜のひとつフキノトウも、ツクシと同じようにフキの本体と地下でつながった部分です。ちょっと違うのは、フキは胞子でなく種子でふえる植物なので、フキノトウは種を作る花をつける部分なのです。さらに矢野左衛門は三大山菜のひとつタラノメもゲットしました。タラノメが採れるのはまだ木が小さな頃ですが、タラノキは成長すると6mの巨木になるそうです。その反面、山菜に関する言葉として、ウドの大木というものがありますが、三大山菜の最後ウドは成長してもせいぜい2m程度なのです。日本で採れる山菜は、およそ300種類!矢野左衛門はそのうち25種類を採ることが出来ました。

所さんのポイント
都会の真ん中でも山菜採りはできるぞ!

 山菜といえば苦い。これが日本の常識。野菜大好きのウサギさんやサルさんに与えると、野菜は食べても山菜は全く食べません。動物達は山菜が嫌いなようです。実は山菜には、ポリフェノールが含まれていました。しかし野菜にはほとんど含まれていません。これこそが山菜の苦味の元だったのです。不規則な生活の多い現代人にとって、抗酸化作用を持つポリフェノールを多く含む山菜は、とても優れた健康食品です。さらに山菜には驚くべき効果がありました。養分を塗ったシャーレに菌をまんべんなく塗りつけ、その上にレタスとフキの葉を置き、1週間菌を増殖させてみました。すると驚くことに、レタスには増殖した菌が、フキの葉には全くついていません。苦味の成分ポリフェノールには菌を撃退する力も持っていたのです。ポリフェノールは芽の中に多く含まれ、その苦味で動物や細菌を寄せ付けません。その後ポリフェノールは茎などを作る繊維質リグニンに変化、大きく育った植物を支える役割も果たしていたんです。山菜の苦味は、敵を寄せ付けず植物の生育を助ける大切な物質だったのです。

所さんのポイント
山菜の苦味は、身を守り成長を助けるスーパーパワーを持っていた!

フキの地下茎の全体  山菜を探すうちに、ふらちなアイデアを思いついた矢野左衛門。「畑で山菜を育てれば大もうけじゃ!ふはははは」一攫千金を夢見た矢野左衛門は、畑にフキの種をまきました。けれど同時にまいた野菜のコマツナは芽を出したのに、フキは全く芽を出しません。一体どういうことなんでしょう?実は植物の種は、もともとすぐには発芽しないものなんです。山菜の多くは芽が出るまでに1年から2年かかります。一方野菜は、長年の品種改良によってすぐに芽が出るようになっているんです。けれど野菜は種をまかないと収穫できないのに、なぜか山菜は一度採っても翌年同じ場所から生えてきます。山菜には、野菜とは全く違う増え方のメカニズムがあったのです。矢野左衛門は、試しに自生しているフキの根元を掘ってみました。2時間もの重労働の末出てきたのは迷路のように絡み合った巨大な根っこのようなもの。これは地下茎といって植物の栄養を蓄えている器官です。山菜の多くは多年草でこの地下茎に養分を蓄えています。そのため摘み取っても地下茎が残っていればそこからまた芽出るのです。一方野菜は1年草のため、多くは根を持つだけで、一度収穫してしまえば種をまかない限り芽は出ません。この地下茎こそが、過酷な環境で生き抜く山菜のたくましさの象徴だったのです。

アマドコロ全形  幻の山菜「アマドコロ」探しを再開した矢野左衛門。その時、図鑑で見たとおりの姿の草を発見。ついにアマドコロとご対面か!?と思いきや、それはアマドコロに良く似た毒草のホウチャクソウ。茎の色と掘り出した時に地下茎が無いのがアマドコロとの違いです。その他にも野山には毒草が多く間違えて食べると命を落とすこともあるので、山菜採りに行く時は、必ずベテランの方と一緒に行きましょう。それから探すこと数時間。今度こそ本物のアマドコロ発見です。これで魚住アナウンサーのお肌もしばらく安泰です。

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