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 冬の日本海 寒ブリの謎  #708 (2003/11/23) 

 冬に旬を迎える魚、ブリ西日本では丸々1本お歳暮に贈られる魚として親しまれています。そしてブリは出世魚。お寿司やお刺身でおなじみのハマチは、ブリの成長途中の魚なのです。そんなブリの不思議な生態、そしてブリ料理のおいしさの秘密について科学します。

小さいブリ  矢野さんは富山・魚津港を訪れました。始まったばかりのブリ漁に同行し、ブリを獲ろうというのです。朝2時30分に漁に出るのですが、意外なことに岸から僅か2キロ、結構沿岸近くで漁をするのです。これは季節によって海を大きく移動する回遊魚であるブリが水温に敏感で、17度前後の水温を好むため、冬、南下する時に、水温の高い沿岸付近を移動するため、なのです。
 いよいよ漁が始まりましたが、網にかかるのは最近話題の巨大クラゲばかり。ようやく体長30cmほどのブリが獲れただけでした。これではブリとも呼べません。

ブリ“口をパクパクしている”  ブリは回遊魚マグロやカツオも同じ回遊魚ですが、この2種が泳ぎ続けないと死んでしまうので養殖が難しいのに対し、ブリは養殖がしやすいのです。これはなぜなのでしょう?
 そこでブリを泳げない狭い水槽に入れてみました。するとなんと口をパクパクとさせて、まるで淡水魚のようになったのです。回遊魚は口を開けっ放しにして泳ぎながら海水を取り入れることによって、エラから酸素を吸収できるのですが、ブリは口をパクパクさせることで、海水を吸収しそこから酸素を取り出すことが出来るのです。このためあまり泳げない所でも養殖が可能なのです。

所さんのポイント
ブリは、泳ぎ続けないと死んでしまうと言われる回遊魚なのに、じっとしていても口を開け閉じして生き延びることが出来る!

 ブリの代表的な料理がブリ大根。しかしなぜマグロ大根やタイ大根は無いのでしょう?そこで「目がテン!」が作ってみました。するとタイ大根は大根に全然味が染みません。これはタイが生涯大きく移動することの無い近海魚(白身魚は一般的に近海魚)であるため、回遊魚ほどに脂肪分を体内に蓄えていないためなのです。

 では、同じ回遊魚であるマグロならばどうでしょう。ところがマグロ大根は、マグロが固くなってしまったのです。長距離を移動する回遊魚は身が赤いですが、これは熱すると固くなる筋形質タンパク質を持っているからなのです。この筋形質タンパク質の中には酸素を筋肉に運ぶミオグロビンがあり、これが赤色の元なのです。ところが回遊魚の中では比較的移動距離が少ないブリにはこのミオグロビンがあまりありません。なので熱してもブリの身は固くならず美味しく食べられるのです。ブリの身があまり赤身でないのが、何よりの証拠です。

所さんのポイント
ブリは近海魚の特徴も兼ね備えた回遊魚だった。つまり赤身魚と白身魚の中間。なので煮てよし生でよし!!


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