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日本の味! みそ の科学
第778回 2005年4月24日


 愛知万博の会場内で、ご当地グルメの味噌カツ丼や味噌カツドッグ、味噌ソフトクリームなど、名古屋の味噌料理が注目を浴びています。この名古屋の味噌は豆味噌といって、主に中京地方でしか普及していない味噌なのですが、調べてみてビックリ、なんとこの豆味噌こそが、元祖日本の味噌だというのです。

 日本で食べられている味噌は主に3種類。米と大豆が原料の米味噌麦と大豆が原料の麦味噌、大豆だけで作られる豆味噌があります。
 早速矢野さんは、日本の味噌で最もメジャーな米味噌作りに挑戦しました。作り方は、蒸してすりつぶした大豆と、蒸した米に麹菌という菌を繁殖させた米麹を混ぜ、塩を加えて約30度の樽で熟成させます。すると、米麹に含まれる酵素が米の炭水化物を糖に分解します。これで、あの味噌の甘味が生まれるのです。また、米麹の酵素は大豆のタンパク質をうま味成分であるアミノ酸に分解し、味噌の独特のうま味が出てくるのです。
 そして、最短の熟成期間である1週間で、矢野さんの手作り米味噌(西京味噌)が完成。スタジオで所さんが試食したところ、ちゃんと味噌になっていました。

 さらに矢野さんは、愛知県で豆味噌の作り方も取材しました。米味噌では米に麹菌を繁殖させていましたが、豆味噌では大豆に繁殖させます。しかし、麹菌を繁殖させるときに、普通に大豆の粒に繁殖させるのかと思ったら、わざわざ一度、大豆をすりつぶし団子状に固めてから麹菌を振り掛けるのです。これを味噌玉というそうなのですが、どうしてわざわざ、味噌玉を作るのでしょうか。
 その理由は、大豆に納豆菌が繁殖しないようにするため。実は、空気中には納豆菌が大量に存在していて、納豆菌は大豆への繁殖力が強力なのです。そこで、蒸した豆をすぐに団子にし、外側に麹菌を繁殖させて壁を作ることで、納豆菌の繁殖を防ぐのです。また納豆菌は空気が無いと繁殖しないので、たまたま納豆菌が中に入りこんでいても、空気の少ない内部では納豆菌が増えないという仕組みなのです。
豆味噌熟成  そして、豆味噌作りのもう一つの大きなポイントは熟成期間。なんと2年間も巨大な味噌樽で熟成させるのです。大豆のタンパク質をうま味であるアミノ酸に変えるには時間がかかるのです。結果、豆味噌と他の色々な米味噌とのグルタミン酸の量を比較してみると、なんと豆味噌にはどの米味噌よりも2倍以上のグルタミン酸が含まれていたのです。
 日本では、最初はこの豆味噌が作られていたのですが、豆麹を作るのが大変なことや、豆味噌の完成に時間がかかるということから、米を加えた米味噌が普及したのだそうです。

所さんのポイント
ポイント1
日本の味噌の元祖・豆味噌は、原料はダイズだけにもかかわらず、手間ひまがとてもかかる。しかし、その分うま味は多いのだ!

 なぜ、味噌汁は煮立たせてはいけないというのでしょう。そこで街の人に、煮立つ前に火を止めて作ったみそ汁と煮立たせて作ったみそ汁を飲み比べてもらい、どちらが美味しいか判断してもらいました。すると7割の人が煮立つ前に火を止めた方が「美味しい」と評価したのです。その一番の理由は、香りが良いからということでした。
液体に火が着いた  そこで味噌汁を煮立てた時に出てくる蒸気を蒸留してみると、集まった液体の中にはみその香りが凝縮されていました。つまり、あの蒸気には香りの成分が多く含まれているのです。さらに、その液体を蒸留し濃度を上げてみると、なんと今度は、この液体に火が着いたのです。

 実は、この味噌の匂いの正体はアルコール。米味噌が樽の中で熟成されるときに、酵母という微生物が糖をアルコールやエステルなどの香り成分へ変化させているのです。しかし、このアルコールなどの香り成分は、90度以上になると揮発してしまうため、みそ汁は煮立つ直前にすぐ火を止めるのが一番良いというわけなのです。
 しかし、豆味噌料理には味噌煮込みうどんや土手鍋など煮込んでいるものも多いですよね。なんと豆味噌には、ほとんどアルコールなどの香り成分が含まれていないのです。これは豆味噌に、香り成分に変化する糖が殆ど含まれていないためなのです。豆味噌は香りの無い代わりにうまみに特化した味噌だったのです!

所さんのポイント
ポイント2
米味噌の香り成分は、米の糖がアルコールやエステルに変化したため生まれたものだった!90度以上で飛ばさないようにしよう!




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