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満開で一週間 (秘) サクラ
第876回 2007年4月1日


 春爛漫、今年も「サクラ」の季節がやってきました。そして満開のサクラにつきものなのが、年に一度のお待ちかね「お花見」ですよね。しかし、今お花見の主役・ソメイヨシノが危機を迎えているというのです。一体、どういうことなのでしょうか?

 そもそもサクラには、「マメザクラ」、「エドヒガン」、「オオシマザクラ」などの自生している野生種と、「ソメイヨシノ」を含む、人の手で栽培された園芸品種がいます。野生種は園芸品種に比べ、花びらの色が淡いのが特徴で、お馴染みの「ソメイヨシノ」は、「エドヒガン」と「オオシマザクラ」から生まれたといわれています。ソメイヨシノは「エドヒガン」の、葉より花が先に咲くという特徴と、「オオシマザクラ」の特徴である「花が大きい」といった、両品種の良い部分を受け継いだそうなのです。

 さて、毎年話題になるのが、サクラの開花予想ですよね。矢野さんは日本一早く咲くソメイヨシノを見ようと調査を開始。以前、目がテンでソメイヨシノの開花に関する実験をしたところ、立春からの積算温度、つまり毎日の最高気温を足した合計が540℃になると花が咲くということがわかりました。
 そこで、立春から調査当日の3月15日までの積算温度を計算してみると、なんとすでに540℃を突破している県がいくつもあったのです。その中でも最も積算温度が高い鹿児島県では、3月15日の時点で540℃を130℃上回る675・8℃もありました。
 早速、スタッフが鹿児島県に急行してソメイヨシノを見てみると、なんと咲いていないどころか蕾も膨らんでいませんでした。これは540℃を超えた他の県でも同じでした。一体、どういうことなのでしょう?しかも、その4日後の3月20日、なんと全国のトップを切って東京で開花したのです。その時の東京の積算温度は586.2度。これは一体どういうことなんでしょうか?
 専門家によると、開花には暖かさだけではなく休眠から目覚めるための寒さも必要だというのです。実は、秋に休眠したソメイヨシノは、冬に2〜12℃の間で800時間以上過ごすと休眠から目覚め、開花するスイッチが入り、この時点から積算温度が540℃を超えると開花するのです。つまり、サクラの開花には「春の暖かさ」だけではなく「冬の寒さ」も必要不可欠だったのです。
 昔、サクラ前線は南から北上するのが基本でしたが、最近は温暖化の影響により南部では冬の寒さが足りなくなり開花が遅れることが多くなりました。今年も暖冬でサクラ前線はおかしくなり、開花条件を日本で最初に満たしたのが東京だったというわけなのです。

所さんのポイント
ポイント1
サクラが開花するには、「春の暖かさ」だけではなく、サクラが休眠から目覚めるスイッチとなる「冬の寒さ」も必要不可欠だった!

 なんと、お花見の主役、ソメイヨシノがもうすぐ一斉に枯れてお花見が出来なくなるかもしれないという学説があるのですが、一体、どういうことでしょう?実は、通常のサクラは200年から300年生きるといわれていますが、ソメイヨシノはたったの60年と極端に短いそうなのです。
心材腐朽した幹  そこで、街のソメイヨシノを樹木医の方と調べてみました。そして、放射線を使って木を切らずに中を調べたところ、なんとほとんどのソメイヨシノの幹の中に穴が開いていることが分かりました。実際に切断してみてみると、幹の中心部は手でも崩れてしまうほど腐っていたのです。これは「心材腐朽」という、カビで木の中心部が腐る病気だそうです。
 なぜ多くのソメイヨシノがこの病気にかかってしまうのでしょうか?その理由は、ソメイヨシノの栽培法にありました。ソメイヨシノは、台木となるマザクラに切れ込みを入れて、そこにソメイヨシノを挿す「接ぎ木」という方法で栽培されます。1年経つとマザクラと共に根を張って、栄養の吸収が良くなる二重根となるのですが、その後マザクラの根は腐り、そこから腐朽菌という菌が繁殖し中心部から腐ってしまうのです。
 この病気のために一説では寿命がおよそ60年といわれるソメイヨシノは、戦後に植樹されたものが多く、60年経った今、危機に瀕しているというのです。そのため、たくさんのソメイヨシノがある場所では、数年かけて新しいソメイヨシノに徐々に植え替えたり、ソメイヨシノに見た目はそっくりで心材腐朽しない新品種の「コマツオトメ」や「ジンダイアケボノ」に植え替えたりしているのだそうです。

所さんのポイント
ポイント2
接ぎ木で栽培されるソメイヨシノは、台木が腐ってしまうため寿命が約60年と言われており、今ピンチを迎えている!

 さて、お花見している人たちにインタビューしてみると、もう少し長くお花見をしたいという不満が聞かれました。確かに、サクラは花が咲いてから一週間くらいで散ってしまいます。
そこで、「散らないサクラを育てよう!」という目がテン大実験にチャレンジ。植物の専門家に尋ねてみると、温度を10℃以下に保って、花びらにある、「細胞壁分解酵素」という花を散らす酵素の活性を抑えれば良いとの事でした。
サクラ実験大成功! そこで、満開のソメイヨシノを丈夫なテントで囲み、冷風機で外側からテントを冷やし、さらに内側に雪を敷いてテント内の温度を4℃に保ちました
すると1週間後、テントのすぐ隣に植えておいた、同じ日に咲いたソメイヨシノはほぼ散っていましたが、テントの中のサクラは見事に満開を保っていました。実験は大成功でした。



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