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刀も平気!? カタツムリ
第885回 2007年6月3日


 梅雨、ジメジメとした嫌な時期でもカタツムリにとっては待ちこがれた季節です。今回はカタツムリに秘められた様々な謎に科学で迫ります。

 ♪デンデン虫 虫 カタツムリ〜♪と子供達もみんな知っている身近な存在のカタツムリ。しかし、都会の子供達は本物のカタツムリを見たことがないと言うのです。そこで、都内の公園でカタツムリを探してみました。ところが、てんとう虫をはじめ、昆虫はたくさん見つけられたものの、肝心なカタツムリは見つからなかったのです。カタツムリを研究している方に聞いてみると、都会にはほとんどいないとのこと。そこで都内を離れ千葉県の林の中を捜索してみたところ、次から次へとカタツムリを発見しました。では、なぜ都内の公園にはカタツムリがいなかったのでしょう?
 そもそもカタツムリがいる場所は、木が生い茂っていて日光が入りづらく、落ち葉に地面が覆われている場所です。それに対し都会の公園は、枝が剪定され、落ち葉は掃除され、露出した地面に日光が降り注いでいます。これにより「湿度」に大きな差が生まれます。千葉の公園の湿度は73%で、全くいなかった都会の公園はたったの49%でした。この湿度が多い所が、餌となるコケやカビが生えやすくカタツムリがいる条件となっていたのです。

 さらに、多湿な場所にいるもう一つの大きな理由がありました。それは、カタツムリは、本当は貝だからだというのです。
 その証拠を探ろうと、代表的な巻貝のサザエと比べてみました。すると確かにカタツムリの殻と形も似ていて渦の巻き方も同じでした。さらに成長の過程を見てみると、カタツムリは、生まれた時から殻があり渦の数を増やしながらおよそ3年で大人になりますが、一方のサザエも同じ成長過程でした。その他にも、カタツムリもサザエも触覚を持ち、体の下側にある口にはヤスリ状の歯があるなど、そっくりな部分が多く、分類上も腹足綱という同じ仲間でした。
 ならば、味も似てるのでしょうか?ということで、サザエのつぼ焼きならぬカタツムリのつぼ焼きを作り試食することにしました。すでに水煮されている食用カタツムリのエスカルゴをサザエの殻に入れ、ダシとしょう油で味をつけ、20分火にかけます。こうして出来た目がテン特製カタツムリのつぼ焼きを、一般の方々に中身がカタツムリということは内緒で食べて頂きました。すると、おいしい、軟らかいと大好評で実はカタツムリだと気がつく人はほとんどいませんでした
 ここまでよく似たカタツムリとサザエですが、決定的な違いはやはり住んでいる場所です。では、なぜカタツムリは海でなく陸上に住めるのでしょう?そこでカタツムリの殻の中を最新鋭機器で調べてみると、殻の中の白い膜で覆われた部分に肺があったのです。サザエにはえらがあることから、カタツムリはえらが肺に進化したことで陸上に暮らせるようになったと考えられています

 さて、次は歌に出てくる「ヤリ出せ」のヤリとは一体どこのことなのか調べてみました。木の上で向かい合って徐々に近づいていく2匹のカタツムリを観察していると、白い管のようなものが出てきました。これがヤリなのか?と思いきや実はオスの生殖器だったのです。恋矢さらに驚くことに、メスだと思っていたもう片方のカタツムリからもオスの生殖器が出てきたのです。実は、カタツムリはオスとメスの区別がない雌雄同体の生き物で、メスの生殖器は頭の右横の生殖口の中にあります。ここにお互いのオスの生殖器を差し合って受精するのです。
 そしてヤリとは、生殖器と一緒に出ていた細い針のようなものでした。これは、恋矢(れんし)といって交尾の際に、互いを刺激するために使われるものです。

所さんのポイント
ポイント1
ツノ出せヤリ出せの「ヤリ」とは恋矢(れんし)というカタツムリの生殖活動に欠かせないものだった!

 カタツムリは壁や金網、天井など色々なところで見られますが、一体そんな場所をどうやって歩いているのでしょう?カタツムリの歩いている様子を裏側から見てみると何やら、後ろから前に波立っているのが見えました。カタツムリの歩行を再現したロボットを見てみると、波のような動きで前に進みました。「進行波」と呼ばれるこの歩き方は、接地面積が広いためどんな場所でも、バランスを崩さずに移動できます。
 ではその移動能力はどれほどすごいのか実験です。まずは油を塗って滑りやすくしたツルツルな板の上を歩かせてみました。カエルでも滑り落ちてしまった板の上を、カタツムリは、板を逆さにしても滑り落ちもせず歩きました。続いて粘着材を塗ったベトベトする所で試してみても、しっかりと歩きました。刃の上を歩くカタツムリ最後に、切れ味抜群の日本刀の刃の上に緊張しながらもカタツムリを置いてみました。すると、なんとカタツムリはゆっくりながらいとも簡単に歩ききってしまいました
 しかも、お腹をチェックしてみても、カタツムリには傷一つありませんでした。実はカタツムリの足は腹足といって骨のない筋肉だけでできているために自在に形を変えられるので刃を包み込むこともできてしまうのです。
 さらに剣山の上も乗せてみると、カタツムリが楽々と歩いた跡には粘液が付いていました。そこでこの粘液を採取し、専門家に調べてもらいました。すると、この粘液はビンガム流体といって、接着性と流動性を併せ持つ特殊な粘液だったのです。だからカタツムリはどんな場所もくっつきながらも、移動するときはスムーズに動けていたのです。

所さんのポイント
ポイント2
カタツムリは骨のない腹足と、特殊な粘液の力で、どんな場所でも自由自在に歩けるのだった!




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