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山奥に潜む白身の サケ
第904回 2007年10月21日


 秋の味覚の代表格といえば「サケ」ですよね。しかしサケには普段食べていても知られざる秘密がたくさんあります。そこで今回はサケを徹底科学します。

 サケは、サケ科サケ属で、尾の近くにアブラビレというヒレがあるのが特徴です。そして、日本人が1年で消費するサケの量は46万トン。切り身にしてなんと57億枚にもなります。矢野さんは、獲れたてのサケをいただきに全国屈指の水揚げ高を誇るサケの町、北海道・標津町へ向かいました。漁に同行させてもらうと、漁師たちが向かったのは川ではなく海でした。漁は、産まれた後4年間海を回遊し、栄養をたっぷり溜め込んで、産卵のために産まれた川に戻ってくるサケの群れを、川にのぼる直前に海で一網打尽にしてしまう定置網漁で行われます。日本で水揚げされているサケの約9割がこの方法で獲られています。漁場に着くとすぐさま漁師たちが網を引き、活きが良くまるまる太ったサケがどんどん引き揚げられていきました。
オス、メス、負けオスの模様の違い  この銀色に輝くサケですが、なんと川に入ると色が全く違うのだそうです。その秘密を探るべく標津町を流れる、海から多くのサケが帰ってくる川へ向かいました。川を上るサケを見ると、漁で見た銀色ではなく黒色だったのです。さらに水中にカメラを入れて見ると、サケの体には模様がありました。オスには赤い縦のライン、メスは黒い横のラインが入っていたのです。実はこれは婚姻色といって、サケは川に戻ってくると産卵のためにオスとメスそれぞれこのような姿になり異性にアピールするのです。しかし、中にはオスとメスの模様が同時に出ているサケもいました。このサケの正体は、負けオス。メスを巡る争いで負けたオスが、降参の印としてメスの婚姻色である黒いラインを一時的に出すと考えられています。

所さんのポイント
ポイント1
オス・メスが異性にアピールするために体の模様に出す婚姻色。しかしメスを取られたオスは降参の印としてメスと同じ模様に変えるのだ!

 さて、サケと言えば食欲をそそるサーモンピンクですが、何故サケの身は白身でも赤みでもなくこんな色をしているのでしょうか?その秘密が隠されているという富士五湖の西湖に向かいました。そこでサケが釣れるというので早速釣りをしてみると、小さなヒメマスが釣れました。しかし、このヒメマスもれっきとしたサケだと言うのです。その証拠にサケの特徴であるアブラビレもついていました。実はヒメマスもベニザケも元々は全く同じ魚なのです。海で回遊しているものをベニザケ、海に出ず湖に生息するものをヒメマスと呼んでいます。ヒメマスを捌いてみると、身の色は白でした。何故ベニザケとは身の色が違うのでしょうか?実はサケの元々の身の色は白ですが、海に出てオキアミなどの甲殻類を食べることによってその殻に含まれるアスタキサンチンという成分で身が赤く染まるのです。ヒメマスの身が白かったのは西湖には甲殻類が少ないためでした。つまり身の色は食べるエサの色によって染まっていたのです。そこで、同じサケの仲間であるニジマス5匹にアスタキサンチンを2ヶ月与えてみると、5匹見事に赤色に染まりました。
 そして、サケの身の赤い色はイクラに移るためイクラを産んだ後のサケは身が白くなります。つまり、サケの身が赤く染まるのは最終的にアスタキサンチンの抗酸化作用で卵を守るためだと考えられています。

所さんのポイント
ポイント2
サケの身がサーモンピンクに染まるのは、アスタキチンサンという成分を含むオキアミなどの甲殻類を食べているからだった!

 ところで、数万匹に1匹しかとれないと言われ、1匹なんと10万円以上という「幻のサケ」、鮭児(けいじ)ですが、なぜそんなに美味しいと言われているのでしょうか?実は、鮭児とは、まだ回遊中の若いサケが大人のサケの群れに迷いこんで1年早く帰ってきてしまったもの。まだ未成熟なためイクラや精巣に使う脂肪分を身に溜め込んでいるのです。たしかに調べてみると鮭児の脂肪分は26%もあり、秋に獲れたサケと比べると実に3倍以上もあります。ならば、イクラの脂肪分を普通のサケの身に戻せば鮭児の味が再現できるのでは?ということで、鮭児の味を家庭で簡単に再現できる方法を見つけました。用意するのはスーパーで簡単に手に入るサケの切り身とイクラをほぐす前のスジコ。まずはスジコを一口大に切り、それをつぶし、中のエキスを取り出します。このスジコエキスにお酢を加え、油を少しずつ足しながら泡立て器でかき混ぜていきます。だんだんクリーミーになればスジコ版マヨネーズの完成です。あとはこのマヨネーズに普通のサケを付けて食べるだけです。肝心のお味は、鮭児の脂が蘇ったようでおいしいと所さんにも好評でした。しかも本物の鮭児だと1万円するところが、このスジコマヨネーズとサケでたったの900円で味わえるのです。
 さて、サケは1匹約4キロでそのうち皮の重さはおよそ270gです。これを捨てるのはもったいない!ということで、サケの皮を使ってサケ皮ジャン作りにチャレンジしてみました。まずは皮ジャンが作れるほど丈夫なのか、ブリとサバの皮と強度を引っ張って比べてみました。サケの皮ジャンを着て裏地を見せる所さん結果サケの皮は23ニュートンで、4ニュートンだったサバの皮の5倍以上も丈夫でした。実は、川の急流を遡上するサケは、傷ついても大丈夫なようにコラーゲンを多く含む頑丈な皮を身にまとっているのです。皮ジャンを作るために、余ったサケの皮を集め、北海道でアイヌ文化を継承する方になめしてもらいました。脂肪分をそぎとった皮を天日で丸一日干した後、乾燥した皮を丸めて専用の木槌でたたきます。そしてなめした皮を東京に持ち帰り革製品のお店でジャケットを作ってもらい、裏地をサーモンピンクにしたこだわりのサケ皮ジャンが見事に完成しました!



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