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格安食材で偽タコ焼き
第931回 2008年4月27日


 これから旬の海の幸、タコ!日本人は世界で捕れるタコの1/3の量を消費しているほどタコ好きなんです!そこで今回はタコのおもしろい生態を科学します。

 年々その値段が上がっているタコの現状を調査するため、矢野さんが明石のタコで有名な兵庫県明石市へ向かい、漁師の方とタコ漁へ出航しました。タコ漁とは、プラスチック製のタコ壺を海へと投げ入れ海底に沈めておくだけのシンプルな漁法。5日前に沈めていたタコ壺180個を引き上げていくと、空っぽの壺ばかりでしたが、そして51個目、ようやくタコが入っていました。なかなか捕れないからタコは高かったのです。さらにタコ壺を放っておくとなんと驚くことに、タコ自らが外へ出てきて、船の上を歩きながら船底にある生簀(いけす)へと入っていったのです!これは水が無くなり苦しくなったタコが歩き回り、そこにちょうど良く入り口が作られていたため入っていったようです。そもそもタコは軟体動物で海底を歩きながら移動している生き物です。しかしあまり素早い動きが得意ではないので天敵であるウツボに襲われてしまいます。だから岩場などの狭い場所に隠れて身を保護する必要があり、壺は身を隠すのにもってこいなので、中に入っていくのです。

所さんのポイント
ポイント1
タコは素早い動きができないので、岩場などの狭い場所に隠れて身を保護する。タコ壺はタコにとってちょうど良い隠れ場だった!

 さて、タコは一見頭に見える部分が実は胴で、一般的に足と呼ばれている部分は腕になります。そして腕が生えている付け根のあたりが頭になります。そんな軟体動物のタコは果たしてどれくらい柔らかいのでしょうか?そこでこんな実験をしてみました。水槽の右側に体長40cmのタコ、左側にエサのエビを入れ、その間を穴の開いた板で区切り、どれくらいの穴まで通り抜けることができるのかを試しました。10cmは楽々通過し、続いて5cmの穴も見事にクリアしたので、次は4cmの穴に挑戦。これもなんとかクリア!そしてついに3cmに挑戦しましたが、結局通り抜けることはできませんでした。茹でたタコの顎板結果、体長40cmのタコは4cmの穴まで通り抜けられました。ではなぜ3cmの穴は通れなかったのでしょうか?茹でたタコを裏返して見てみると8本の腕が集まる中心に口があり、そこには黒くて硬い顎板(がくばん)と呼ばれる硬い歯がありました。これはタコがエビなどの甲殻類を食べる時に殻を割るためのものです。その大きさが3.5cmもあるため、顎板より小さい穴は通り抜けることが出来なかったのです。

所さんのポイント
ポイント2
どんなに体が柔らかいタコでも、口に顎板という硬い歯があり、その大きさ以上の穴は通り抜けることはできないのだ!

 ところで、タコはどうして腕が8本もあるのでしょうか?そこで、タコが海底で住んでいる状況を再現し、海水の流れを調整できる装置でタコがどれくらいの流れに耐えることができるのか実験してみました。まずは東京湾程度の毎秒40cmの海水の速さで試したところ、タコは8本の腕に付いた吸盤を張り付かせ耐えました。続いて太平洋と同じ毎秒80cmにしてもビクともしません。ならば、黒潮クラスの毎秒120cmの速さではどうでしょう?すると、さすがのタコも今度は腕が離れ流されてしまいました。では、タコの腕を紐で縛って半分の4本にするとどうなるのか再び実験してみました。すると毎秒40cmの流れにはなんとか耐えましたが毎秒80cmの速さで簡単に流されてしまいました。8本腕の方が潮の流れが激しい場所でも流されなかったのです。実はタコは泳ぐというよりも海底を歩くことが多く、腕に付いている吸盤に重要な役割があるのです。タコは吸盤を相手に押し付けたら吸盤の中心部にある筋肉を一旦下げて空気を抜き、そして引き上げることで中を真空状態にしています。だから強力にくっつき、吸盤を吸い付けて、時にはサメなどの大きな獲物を襲うこともあるのです。
タコと4つの食材、硬さ比較グラフ  さて、タコを使った料理といえば、なんといってもたこ焼き!その魅力は、食感や噛みごたえですよね。自由に動くタコの脚の筋肉は4方向からの筋繊維が絡み合っているため硬く、そのため独特の歯ごたえがあるのです。しかし庶民の味のタコ焼きのタコの値段が高くなってしまったら、手がだせなくなるかも!?ということでタコの代わりとなる食材を探してみました。「コンニャク」「カマボコ」「エリンギ」「モツ」「グミ」とどれも食感には定評のある食材でニセたこ焼きを作り、“タコちゃいまんねん選手権”を開催!街の人に中身を知らせずにそれぞれのニセたこ焼きを食べてもらいました。30人の方に食べてもらった結果、おいしかったのは1位エリンギ、2位カマボコ、3位モツ、4位コンニャクという順番でした。グミは熱を加えることでゼラチンが溶けてしまい失敗でした。そして、グミ以外の4つの食材の硬さを測定してみると、この順位はタコの硬さに近い順位でもありました。
 つまり第2のたこ焼きにふさわしい食材はエリンギということでした。エリンギはキノコ独特の繊維質がタコの複雑な筋肉に近い食感だったのが高評価につながったようです。



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