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冷凍OK?不死 クラゲ
第948回 2008年8月24日


 夏の終わりの時期になると、海にたくさん出てくるクラゲ。今回は海に浮かぶ謎多き生物、クラゲの知られざる生態に科学で迫ります。

エチゼンクラゲが泳ぐ姿  最近は、水族館で癒されると人気を集めているクラゲ。その反面、ここ数年日本海で大量発生し、網を破ったり、他の魚が捕れなくなるなど、エチゼンクラゲが漁業に深刻なダメージを与えて問題になっています。では、秋になると忽然と姿を現す、エチゼンクラゲの大群は一体それまでどこに潜んでいるのでしょうか?
 実は、エチゼンクラゲの生まれ故郷は中国沿岸で、その証拠に中国では、6月頃に小さいエチゼンクラゲが見られます。そして、一ヶ月をかけ1000km以上離れた日本海にやってくるのです。しかし、ふわふわと漂っているだけのように見えるクラゲにそんな長距離を移動することができるのでしょうか?そこで長距離を移動するというタコクラゲが、水の流れが止まった水槽内で、10分間どれだけの距離を泳ぐのか測定してみることに。すると、5分程経過したところで、なんとほとんどのクラゲが底に沈んでしまったのです。クラゲの種類を変えて再度実験しても結果は同じでした。実はクラゲは元々泳ぎが得意ではないため、水流の助けがないと移動できないのです。エチゼンクラゲは、中国から日本海へ時速2キロで流れる対馬海流に乗り移動していたため、突然大量発生したように見えていたのです。

所さんのポイント
ポイント1
エチゼンクラゲは、中国沿岸で生まれ、流れの速い対馬海流に乗り日本海に移動してくるので、突然大量発生したように見えていたのだ!

電子レンジに入れる前後のクラゲ比較  では、クラゲの傘の動きは一体何なのでしょう?その答えがわかるという実験をしてみました。死んだミズクラゲを電子レンジに入れて30分加熱し、チン!すると、ミズクラゲは直径3分の1程になり、重さは600gから30gになってしまいました。 
 なんとクラゲの体は95%が水分!加熱によってその水分が蒸発してしまったのです。しかもクラゲには内臓もほとんどなく心臓もありません。そのため取り込んだ栄養や酸素を自ら動いて全身に送る必要があるのです。泳いでいたように見えていた動きは、クラゲが傘の中央にある胃の役割をする部分で吸収した栄養分を全身に送る拍動(はくどう)という動きだったのです。さて、世界最大級のエチゼンクラゲは、なぜ巨大化してしまうのでしょうか?そこで、まだ小さい5cmのエチゼンクラゲと、同じ大きさのミズクラゲに同じ量の動物プランクトンを与え、どれだけ食べるか観察してみます。するとミズクラゲに比べエチゼンクラゲの方が明らかに傘を激しく動かしてどんどんプランクトンを吸い込んでいました。1時間後に残したプランクトンの量を比べてみても、エチゼンクラゲの方が圧倒的に多く食べていました。エチゼンクラゲが巨大化する理由は、他のクラゲと比べて触手と口の数が多いため、大量のプランクトンを一気に集めて食べることができ、さらに動物プランクトンだけではなく植物プランクトンも食べるという、好き嫌いのない性質にあったのです。

 ところで、全てのクラゲが毒を持っていると言いますが、果たしてその毒はどれほどのものなのでしょう?ミズクラゲの触手から毒の成分を採取し、生命力の強いザリガニに注射したところ、たった30秒で死んでしまいました。実はクラゲが毒を持つのはエサを獲るためのもの。まず拍動によってプランクトンを集め、触手に触れたものに毒針を刺し、毒の力で動きを止めてから口の中に取り込むのです。ちなみにミズクラゲの毒針は短く、人間の皮膚には届きませんが、薄い部分を刺されると痛みが出る場合があるそうです。次に、クラゲの生命力の強さをみるためにこんな実験を行いました。クラゲをマイナス60℃の超低温フリーザーで1時間、カチンコチンに凍らせて、常温の海水に戻してみると、なんと7分後に動き出し見事に復活したのです。実は、クラゲの体には凍っても損傷する器官が少ないので生き延びることができるのです。では、生き物に必要な酸素が少ないとどうなってしまうのでしょうか?そこで通常の海のおよそ3分の1の酸素量しかない海水にクラゲと小さな海水魚を入れ様子を観察してみました。すると10分後、魚は力尽きて底へ沈んでしまいましたが、クラゲは3時間以上も生きていたのです。クラゲは酸素濃度の低い時には、極力エネルギー消費を抑えて生活する能力があると考えられているのです。さらにクラゲは体の一部が傷ついて無くなっても、全体の4分の1までの損傷なら自分で修復できてしまうという、驚異の生命力を持っていたのです!

所さんのポイント
ポイント2
クラゲは、体が凍っても、海の酸素が少なくても生き延びることが出来る驚異の生命力を持っているのだ!

 そんなクラゲにとって脅威なのは、船!しかし、クラゲは船のスクリューに巻き込まれないように危険から身を守る能力を持っているといいます。そこで、クラゲの入った水槽に水中スピーカーを設置し、録音した船のスクリュー音を流してみました。すると元気に泳いでいたクラゲ達の動きがピタリと止まったのです。実はスクリュー音には高音域の音がたくさん含まれていて、クラゲはその振動を傘についている感覚器で受け取り、動きを止め、海の底へと沈んでいき危険から逃れていると考えられているのです。もちろんエチゼンクラゲもこの能力を持っているそうで、対策にはまだまだ悩まされそうですね。



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