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発見 タマゴ 長期保存法
第952回 2008年9月28日


 目玉焼きにオムレツ、厚焼き玉子に生卵。毎日の食卓に欠かせないタマゴは、主婦の強〜い味方!今回は、意外と知らないタマゴの真実に科学で迫ります。

 タマゴは50年ほど前からほとんど値段が変わらず、「物価の優等生」と言われ続けてきました。しかしついに今年8月、飼料の高騰で一部のブランド卵がついに値上げされたのです。でも、タマゴはなんで今まで値段が上がることがなかったのでしょうか?その秘密を探るべく、矢野さんは養鶏場で採られたタマゴが集まる施設を訪れました。なんとこの施設では1日およそ20万個ものタマゴを洗い、汚れやひび割れのある不良品をはじき、パックして出荷しています。しかもそのほとんど全てがハイテクの機械で行われているため、作業員も9人だけ。ハンマー検査の様子(自動ひび卵検出装置)この低コスト化こそ、タマゴが値上げしない理由だったのです。試しに矢野さんは落書きしたタマゴと、殻の表面にノコギリで傷をつけたタマゴをいくつか混ぜてみると、2種類ともはじかれてしまいました。落書きはカメラで認識し、ひび割れはタマゴ一つ一つを綿棒のようなハンマーで叩き、その音で判別していたのです。そして、こっそり忍ばせておいたゆで卵も機械はこのハンマーで判別し見事にはじきました。さらに別の装置ではタマゴに光を当てて、中に血の入った血卵も検出しはじいていたのです。

 ところで、使い切れずに冷蔵庫の中で余ってしまいがちのタマゴ。もったいないですよね。そこで、矢野さんが長く保存できる方法を探るため、あれこれ実験してみました。まずは、生卵より長持ちしそうなゆで卵はどれぐらいもつのかを確かめるため、同じ日に採られた10個のタマゴのうち、半分の5個を茹で、食中毒などの原因となる菌が繁殖した水の中へ両方のタマゴを10分間漬けたあと、35℃で24時間置いてみました。そして、内部の菌の数を調べてみると、生卵はほぼ菌がいないのに対し、ゆで卵には菌が大繁殖していたのです。実は卵白には、風邪薬などにも利用されているリゾチームという抗菌作用のある酵素が含まれていて、茹でてしまうとこのリゾチームが働けなくなり、抗菌効果がなくなってしまうのです。つまり、ゆで卵より生卵のほうが長く保存できるのです。

所さんのポイント
ポイント1
卵白の持つ、抗菌作用があるリゾチームという酵素は、茹でると働けなくなってしまうので、ゆで卵より生卵のほうが長持ちするのだ!

 生卵は冷蔵庫で2週間〜20日程度も保存できるそうですが、なぜ抗菌作用があるのに腐ってしまうのでしょうか?そこで、2〜3日おきに生まれたタマゴを2週間分用意し、動かないようにゆで卵にして断面を見比べてみました。すると古くなるにつれて比重の軽い卵黄が浮き上がり、殻に近付いてきていました。卵黄には抗菌作用がなく、殻に接触すると、そこから細菌に侵されやすくなってしまうのです
 ならばと矢野さんは次に、タマゴを冷凍保存してみることに。しかし、冷凍庫の中でタマゴは水分が膨張し、殻が割れてしまいました。そのまま放置し解凍してみると、白身は戻りましたが、黄身は固まったままで、元には戻りませんでした。実は、タマゴには卵黄だけに脂質が含まれていて、その脂質を包んでいるタンパク質が冷凍することにより分解し、固まってしまうので、卵黄は解凍しても元に戻らないのです。矢野さんはこの冷凍卵で玉子焼きに挑戦してみましたが、白身と混ざらず失敗。そこで、目玉焼きを作って、所さんにスタジオで試食してもらうと、その味は大好評。なんと、タマゴはラップをしてから冷凍すれば2ヶ月は持つそうです。

 さて、ゆで卵の殻を剥こうとすると、白身も一緒にくっついてボロボロになってしまうのはよくある悩みですよね。そこで、お弁当などに入っているつるつるのゆで卵を作っている工場を覗いてみました。すると工場では、10℃の冷蔵庫で1週間置いたタマゴを使っていたのです。そこで新鮮なタマゴと1週間経ったタマゴ各10個をゆで卵にして殻を剥く時間を計ってみました。結果、1週間経ったタマゴは4分弱でキレイに剥けたのに、新しいタマゴは15分以上もかかってしまい、しかもボロボロ。実は、タマゴの薄皮「卵殻膜」は繊維が交錯したメッシュ状になっていて、新鮮な卵白は細かい構造なので、この隙間に入り込んでしまうのです。しかし1週間経つと、卵白の構造が粗く変化するので、くっつきにくくなるのです。キレイに殻の剥けるゆで卵を作るには、ちょっと古いタマゴを使うのがポイントだったんです。

所さんのポイント
ポイント2
キレイに殻の剥けるゆで卵を作るには、一週間ほどたったちょっと古いタマゴを使うのがコツなのだ!

 さて、天ぷらもタマゴが欠かせない料理の一つですよね。試しに天ぷらの名店で衣にタマゴを使わない、タマゴなし天ぷらを作ってもらうと、硬くてサクサク感のない天ぷらになってしまいました。この違いはどこにあるのでしょう?同じ分量の材料でタマゴありとタマゴなしの天かすを作ってもらい、その量を比べてみると、タマゴありのほうが多くの天かすができ、その断面には細かい穴がたくさんあいていました。イクラ入り衣の天ぷら実はタマゴは水の粒子を細かくする乳化作用を持っていて、水が熱で蒸発すると、周りのタンパク質が固まって小さな穴をたくさん作ります。これがサクサク感を生んでいたのです。ならばと矢野さんは、サケの卵イクラでも乳化作用があるのではと、イクラを使った衣の天ぷら盛り合わせを作ってもらい、所さんに試食してもらいました。味は意外にも好評でしたが、イクラの卵には、乳化作用があっても水分が抜けた後の穴を保つ凝固作用がないので、食感はいまいち。やはり天ぷらにはニワトリのタマゴを使うのが一番のようです。



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