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劇的 リンゴ 変色防止法
第963回 2008年12月14日


 日本人に広く愛される、甘くてちょっと酸っぱい果物、「リンゴ」。そこで今回は、寒い冬に旬を迎える不思議な果物、リンゴの秘密に迫ります。

 もぎたてのリンゴを食べようと、矢野さんは全国で収穫されるリンゴの半分以上を生産するリンゴ王国・青森のリンゴ畑へ向かいました。ところが…畑のどこにもリンゴが見当たりません!実は青森県のリンゴの収穫は、早い品種で9月から始まり、11月の下旬には終わってしまうのです。でも、収穫が終わっているのに、リンゴが長期間売られているのはどうしてなのでしょうか?そこで矢野さんは収穫されたリンゴの集積所へ。ようやく見つけた大量のリンゴは選果場で選別され、出荷されると思いきや、長いものだと来年のお盆まで「CA冷蔵庫」という特別な冷蔵庫の中で保存されるというのです。巨大な冷蔵庫の中の酸素濃度は大気の1/10に保たれ、人間が入ると酸欠になってしまうため、立ち入りは禁止で、リンゴの出し入れもすべてオートメーション化されています。しかし、なぜ酸素を少なくするとリンゴが長期間保存できるのでしょう?実は、果物は酸素を吸って二酸化炭素を出し呼吸をしていますが、周りの酸素が少なくなると、呼吸を抑え冬眠のような状態になるため、より長期間の保存が可能となるのです。
たくさんの気泡を出すリンゴ  では、同じく冬の果物としてお馴染みのミカンは、冷凍ミカンとして保存されているのはなぜでしょう?そこでこんな実験です。水の中に皮を剥いたリンゴとミカンを沈め、フタをして周りの空気を抜いてみると…リンゴの実からミカンよりもたくさんの気泡が出てきたのです。実はリンゴは体積のおよそ3割が空気と言われるほど、スカスカの構造なので空気をよく通し、低酸素になっても中心にまで酸素が届きます。しかし、ミカンは隙間が少ないため酸素が内部に届きにくく、極端な低酸素になると傷んでしまいます。リンゴは低酸素での長期保存にむいた果物だったのです。

 さて、甘くて美味しいリンゴといえば「ミツ入り」ですよね。そこで、ミツたっぷりのリンゴからミツ入りの部分だけを切り出し、フードプロセッサーですり下ろして漉し、目がテン特製『ミツだけジュース』を作っちゃいました!さぞかし甘いだろうと思いきや、スタジオで飲んだ所さんはビックリ!なんとミツだけジュースよりも、ミツを取り除いた残りの部分で作ったミツなしジュースの方が断然甘かったのです。一体どういうことでしょう?そこで、2つを糖分析計にかけてみると、ミツだけジュースには主な甘味成分の果糖がミツなしの半分程度しか含まれていませんでした。その代わりに多かったのが、ソルビトールという、果糖の半分程度の甘さしか持たない、糖アルコールでした。リンゴの葉で、光合成により作られたデンプンは、このソルビトールへと変化し、果実に運ばれます。そして果実の中でさらに分解され果糖などになります。ところが、リンゴが完熟すると、果実の中の糖は飽和状態になりソルビトールは分解されないまま蓄積します。これがミツの正体なのです。つまり、ミツ自体は甘くないけれど、ミツが入っているということは、完熟している証しなのです。

所さんのポイント
ポイント1
ミツ入りリンゴのミツはソルビトールというあまり甘くない成分。でもミツが入っているのは甘い完熟リンゴの証しなのだ!

リンゴを入れたモヤシの成長比較、10日後  さて、リンゴをそのまま冷蔵庫に入れるとダメな事、主婦の皆さんならご存知ですよね。でも、なぜなんでしょうか?そこで、2つの密閉容器の片方に、ホウレンソウだけ、もう一方にホウレンソウとリンゴを入れ冷蔵庫の中で放置してみました。10日後、ホウレンソウの状態を見比べてみると、リンゴを一緒に入れたホウレンソウは黄色く傷んでいました。実は、リンゴは他の野菜の成熟を促進してしまう「エチレン」という物質をたくさん放出するのです。だからリンゴはポリ袋に入れてから冷蔵庫に入れるのが正しい保存法なのです。しかし、モヤシ工場ではエチレンガスがモヤシの成長に一役買っているというのです。そこで2つの容器の一方にリンゴを入れモヤシを育ててみました。するとリンゴのない方はどんどん伸びるものの、細いモヤシになり、リンゴがある方は、横に太く、立派なモヤシに成長したのです。
 さて、リンゴ最大の弱点といえばすぐに色が変わってしまうことですよね。変色の原因はリンゴに含まれるポリフェノールという成分。リンゴが切られると細胞に含まれる酵素が働き始め、ポリフェノールが酸素と結合して茶色になってしまうのです。この変色を防ぐには、昔から塩水につけると良いと言いますが、しょっぱさが気になってしまう方も多いはず!そこで、他に変色を止めるものがないかを探してみました。用意したのは、砂糖、お茶、日本酒、レモン、酢の5種類。輪切りにしたリンゴをそれぞれに1分間浸し、取り出してから6時間後、なんとレモンに浸けたリンゴだけが全く変色しなかったのです。さらに、塩水とレモンで同じ条件の頂上対決を行っても、レモンの勝利でした。実は、レモンのビタミンCは、酸素がポリフェノールと結びつく前に、酸素を奪い取ってしまうので変色を防いでくれるのです。さらに、変色してしまったリンゴをレモン汁の中に漬けてみると、15分後、驚くことにリンゴの変色が元に戻りました!レモンの力恐るべしです!

所さんのポイント
ポイント2
リンゴの変色を防ぐには、定番の塩水よりも、ビタミンCを含むレモン汁の方が、より効果が強いのだ!




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