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慎重VS勘!! 山登り勝負
第1004回 2009年10月3日


 10月3日は(と・ざん)で、登山の日。現在、空前のブームになっている登山ですが、増え続けているのが山の事故!昨年の遭難件数は、なんと過去最悪の1631件!そこで今回は、登山に秘められた驚きのミステリーを解明します!

1つ目のミステリ
ーは「慎重な人ほど迷う?」  なぜ人は山で迷うのか?その謎を解くため、神奈川県にある標高814mの星ヶ山に、登山初心者2名に登ってもらいました。実はこの山は普段人が入らないため登山道が分かりにくく迷いやすいのです。2人には正しいルートだけが書かれた地図とコンパスを渡します。まずは1人目がスタートし、二股の分かれ道という第一の関門へ。ところが、勘に頼るタイプの彼はなんと地図も見ずに間違った方向へ。しかし、藪が深くなると正しい道に引き返すという繰り返しで、なんとか山頂へゴール。そして後からスタートした、慎重な性格だという男性は、足元にある靴跡など様々な目印を見つけて進んで一見順調に進んでいきますが…いつの間にかコースを外れ迷ってしまい、なんと一周して元の道に戻ってしまいました。なぜ慎重派の彼が迷ってしまったのでしょう?専門家に伺うと、下ばかり見て歩くと、周りの景色が目に入らないため、エリアを一周してしまうこともあるのだとか。そこで実験!グラウンドで足元だけしか見ることの出来ない特殊なヘルメットをかぶってもらい、50m先のゴールを目指し歩いてもらいます。すると、皆さんは真っ直ぐ歩いているつもりでも、とんでもない方向へそれてしまい、ゴールへたどり着けたのはなんと10人中、たったの1人だけでした。これは、リングワンデルングと呼ばれる現象で、草木や霧などで視界が悪い状態だと発生しやすいのだそうです。今のところ、道迷いを防ぐには人工衛星で位置を特定できるGPSの使用が最も良い方法です。

所さんのポイント
ポイント1
慎重に足下だけを見て歩くと、人は方向感覚を失い、迷いやすくなってしまうのだ!

2つ目のミステリーは「真夏でも凍死?」
 7月、北海道で起きた遭難死亡事故の死因は低体温症。つまり凍死!なぜ夏の山で凍死してしまったのでしょうか?その原因を探るため、こんな実験!富士山に、Tシャツ一枚だけの男性と、比較のためTシャツの上に3枚重ね着をした男性に登ってもらい、体温の変化を測定します。この日の気温は22℃と過ごしやすい温度。しかし、標高が上がるに連れ気温は下がり、Tシャツ一枚で寒さと戦いながら、なんとか目的地の五合目に到着。気温はなんと13℃。ところが、2人の体表面温度をサーモグラフィで見比べてみると、Tシャツ一枚の男性の体表面温度は上がり、逆に厚着した男性は下がっていたのです!さらにTシャツ一枚の方は、体温もふもとからほとんど変化はなかったのに、厚着の方は35℃台まで下がっていました。理由を専門家に伺うと、汗で濡れると、低体温症の原因になることがあるといいます。確かに厚着の男性は大量の汗をかいていました。そこで実験!人工気象室で富士山五合目と同じ13℃を再現し、乾いたTシャツの上に重ね着した状態と濡らしたTシャツの上に重ね着した状態それぞれで、体表面温度の変化を観察します。濡れTシャツと乾きTシャツの体表温比較実験開始から20分後…乾いたTシャツでは体表温が下がるどころか上がっていたのに、濡れたTシャツは急降下という結果に!さらに実験を続けたところ、濡れたTシャツのままでいた男性の顔は青ざめ、鼻水が!遂にはドクターストップで実験中止。夏山での低体温症の最大の原因はやはり大量の汗によるものだったのです。さらに、怖いのは汗だけではなく、予想外の大雨で下着が濡れて低体温症になった事例も起こっているので、登山にはレインコートなど防水対策も不可欠なんです。

所さんのポイント
ポイント2
夏山でも、自分のかいた汗が体温を奪い、低体温症を引き起こしてしまうことがあるのだ!

3つ目のミステリーは「低い山でも高山病になる?」
 登山者を苦しめる高山病は、標高の高い山で気圧が低下し酸素が薄くなることで発症します。そして、日本で最も高山病件数が多いのが、富士山。しかもドライブ気分で行ける五合目でも高山病が発生しているというのです!そこで実験。まずは河口湖駅で、バスで富士山に登る前の人たちに、積み木をそれぞれ形のあった穴に入れるおもちゃに挑戦してもらい、クリア時間を測定します。その結果、ふもとでは20人の平均は30秒でした。続いて、標高2300mの富士山五合目で、バスに乗ってきた人たちに同じおもちゃにチャレンジしてもらうと…ふもととほぼ同じタイムでできる人もいましたが、50秒かかってしまった人もいたため、平均は34秒でした。実は、遅かった人は頭痛もあり、思考力や判断力が鈍るという、高山病の一歩手前と考えられる状態だったのです。雨の日のクリア平均40秒医師によると、車などで短時間のうちに高度が上がることで、酸素濃度が下がってしまい、高山病を発症することがあるそうです。さらに、雨となった翌日も五合目の小屋の中で同じ実験をしてみると、1分以上かかってしまった人が2人もいて、平均は40秒とさらに遅くなりました。実は、天気が悪い日は気圧が下がり、高山病の危険がより高まってしまうのです。対策としては携帯用酸素ボンベの使用や、具合が悪くなったら速やかに下山することが重要です。



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