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体幹 の科学
第1230回 2014年6月8日


 続々と発売される体幹のトレーニング本。でも、体幹って一体なに?スポーツ選手じゃなくても鍛えるといい事あるの?今回は、そんなまだまだ知らないことがたくさんある「体幹」を科学します!

①体幹の秘密 インナーマッスルVSアウターマッスル!

 体幹の専門家・早稲田大学スポーツ科学学術院 金岡恒治教授に体幹について教えてもらいます。体幹は手足と頭を除いた胴体部分のこと。体幹にある筋肉は、「体幹筋」と呼ばれ、この「体幹筋」が今 注目されているんです。
 その体幹筋の中でも特に重要なのは、体の表面にある筋肉ではなく、深いところにある「インナーマッスル」と呼ばれる筋肉。なぜ重要なのかというと、頭を含む上半身と骨盤をつないでいる骨は、脊柱だけで胸郭と骨盤の間には骨格が無いので安定しません。そこで、骨に変わってインナーマッスルが体を支える役割を担っているんです。
 重要なインナーマッスル、1つ目は、脊柱の一つ一つの骨に直接ついている「多裂筋」。そして、2つ目は、「腹横筋」。腰回りの空白地帯をぐるりとコルセットのように包んでいます。これら2つのインナーマッスルが、骨盤と上半身上部をしっかりつなぎ一体となって、上半身を支えているんです。よく言う「腹筋」は表面に見えている筋肉でアウターマッスルと呼ばれています。
 インナーマッスルは、このアウターマッスルよりも深い位置にある筋肉。普段は意識していませんが、インナーマッスルは日常生活のあらゆる局面で最初に動く筋肉。例えば、ものを取るとき、それが重いものか軽いものか?脳が判断してインナーマッスルを動かします。なので、インナーマッスルが衰えていると体勢が崩れやすくなり、怪我につながるんです。お年寄りが怪我をしやすくなるのは、こういうことと関係があると考えられています。

 それでは、インナーマッスルが鍛えてある人とそうでない人では、どんな違いがあるのか、実験です!協力してくれるのは、全日本学生ボディビル選手権大会チャンピオンの向井さん21歳。対するは普段体を動かす"ある仕事"をしている29歳の女性です!二人には、インナーマッスルを使う競技に挑戦してもらいます。不安定な体勢になるバランスボードの上に乗り、お盆を右手にのせます。そして、左手を腰においたらスタート!この体勢を何秒間維持できるかを競います!ちなみに、20代の4名に挑戦してもらったところ平均タイムは19秒75。
 まずは、ボデイビルダーの向井さん!記録は…先ほどの20代の平均以下の16秒!続いて、29歳女性の副さんは…5分が経っても余裕そう…圧倒的に副さんの勝利!実は彼女、現役のバレリーナ!バレリーナは不安定なポーズをとるので、常に体勢を安定させるためにインナーマッスルを普段から鍛えているのです。一方、毎日筋トレをしているという向井さんは、インナーマッスルを鍛えても見えないので外にあるアウターマッスルをメインにトレーニングしているとのことでした。
 金岡先生によると、普通の筋トレでは、アウターマッスルは鍛えられますがインナーマッスルは、あまり鍛えられないそうです。
 それでは、自分のインナーマッスルが鍛えられているか?簡単にインナーマッスルの強さを調べる方法をご紹介します! その名も「バランス年齢チェック」。リビングや庭など、広めで周りに物がない所で行います。

1.手を腰にあて、片足を上げます。目をつぶったら計測スタート。
2.足がその場から大幅にずれたり、上げている足が下についた時点で終了となります。国立長寿医療センターによると以下の数値が年代別の目安となります。
 20代 70秒以上
 30代 69秒〜55秒
 40代 54秒〜40秒
 50代 39秒〜20秒
 60代 19秒〜10秒
 70代 9秒〜5秒
 80代 4秒以下


②生活習慣からインナーマッスルを鍛える方法!

 普段の生活と、インナーマッスルの関係を知るため3名の方に協力してもらい実験です。まず、1人目は・営業職の新崎さん45歳。外回りが中心で1日に2〜3箇所、場所を移動し、営業活動をしています。そんな新崎さんの記録は13秒でバランス年齢は60代でした。
 続いて2人目は、事務職の上野さん42歳。1日8時間パソコンの座り作業が中心です。その記録は2秒!バランス年齢は80代以下という結果に。
 そして最後の挑戦者は、熱海の温泉旅館で働く渡部さん53歳。ベテランの仲居さんとして館内を忙しく動き回ります。8時間の勤務で、ほとんどが立ち仕事です。そんな渡部さんの記録は1分でバランス年齢は30代。インナーマッスルの強さは職業によって大きな差がありました。
 なぜこのような結果になったのか?その理由は、座っている時背もたれ等があると、体を支える必要がないのでインナーマッスルはゆるんでいる状態で、あまり使われていません。しかし、背筋を伸ばして立ち上がると…上半身を支えなければいけません。インナーマッスルの腹横筋が内側に働き、コルセットのように下腹部を引き締めます。 さらに、多裂筋が背骨を支えて姿勢を維持するんです。つまり、歩いたり走ったりしているだけで、インナーマッスルは鍛えられるんです。ちなみに、歩く距離の多い営業職の方のタイムがのびなかった理由は姿勢。悪い姿勢というのは、筋肉を使わないので楽なんです。インナーマッスルを使わなくても、人間は立つことが出来るのですが、使わないということは衰えてしまうということ。さらに、この状態は骨に相当な負担がかかるため、腰痛の原因にもなるのです。
 普段からインナーマッスルが鍛えられる歩き方は、天井から一本の糸で吊られているようなイメージで歩くこと。意識的に普段から、姿勢良く歩くことが大切なんです。


③長生きの秘訣は体幹にあり?

 熊本県のあるお宅で迎えてくれたのは守田満さん91歳。一見、普通のおばあちゃんに見える守田さんですが、90歳を超えた今でも健康でいられる秘訣があるそうです。それがトレーニング。階段の駆け上がりに、100メートルの坂道ダッシュを3本。守田さんはこのトレーニングを週3回続けています。
 守田さん、実は陸上の世界では有名人なんです。これまでに、数々の大会で優勝しメダルもたくさん!実は、マスターズの陸上大会で、100mと200mの部で世界記録を持っているのです!そんな守田さんですが、陸上を始めたのは70歳から。それまでは、スポーツとは無縁、葬儀屋さんで働いていました。日中は長時間の立ち仕事。重いものを運んだりする肉体労働を67歳まで続けていました。そして、70歳で初めて出場したマスターズの大会で、なんといきなり日本記録を樹立。専門家に守田さんの走り方を見てもらうと「体の安定性がすごくいい。体幹筋がしっかりしている」とのこと。
 金岡先生によると、スポーツをやっていない一般の人でも歳を取れば取るほど、インナーマッスルが大事になってくるそうで、定年後、家に引きこもりがちになり歩く距離が減ったりする方などは要注意。年をとってくると、歩幅が狭くなったり、足が上がらなくなるのは、インナーマッスルが弱くなって体勢を安定させることが難しくなっているため。このことによって起きる"つまずき"は寝たきりになる原因1位なんです。

 そこで、自宅で30秒でできるインナーマッスルを鍛える方法を紹介!
 「お腹引っ込めトレーニング」!このトレーニングで意識する場所は、腰骨のくぼみ部分。腹横筋が使われていることがよくわかりやすいので寝て行うと、その部分が使われていることがわかるのではじめは寝て行います。

1.あおむけになり、腰に手を当て骨盤のコリコリしたところから指2本分下へ指をあてます。そこから指2本分内側へずらしたところを、内側に引き込むイメージでお腹に力を入れます。
2.指で触っている部分が硬くなっていればインナーマッスルを使っているという証拠。
3.息を吐きながらお腹を引っ込めます。10秒間×3セット。これを毎日行うだけでいいんです。

 3このトレーニングをやっておくと、日頃からインナーマッスルを意識して生活することができます。



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