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ミステリージャーニー[多摩川]
第1344回 2016年10月2日


 以前の放送で、地域魅力度ランキング1位「函館」の人気のヒミツや…日本一肥満が少ない「三重県」の謎を解明。そして、密教聖地「高野山」に科学の視点で迫ったシリーズ企画その名も…「ミステリージャーニー」。
 第4弾の舞台となるのは…行楽シーズンにぴったりの「多摩川」。身近でよく知られた川ですが、まだまだ多くの謎が隠されていたんです!
 その謎を"科学の視点"で解き明かすべく…科学者たちが多摩川へ降り立ちました!今回は…科学者たちが迫る「目がテン・ミステリージャーニー 多摩川編」。

①多摩川 アユ復活の謎

 多摩川を散策していると…釣りをしている人がいました。一体何を釣っているのか近づいてみると…なんと「アユ」!いま、鮎釣りスポットとして人気の多摩川。実は江戸時代は"鮎の産地"として知られ、つかみ取りできるほど多くの天然鮎が生息。それは、将軍様へ献上されるほどだったんです。しかし1960年代。高度経済成長期に多摩川流域の人口が急増。洗濯機や合成洗剤が普及したことにより、家庭排水で水質が悪化し…多摩川はいつしか"死の川"と呼ばれ、鮎も徐々に姿を消していきました…。それが現在、なんとおよそ460万匹もの鮎が生息しているというんです。さらに日本橋にある三越本店では、多摩川で獲れた"天然鮎の一夜干し"も販売されており、即完売するほどの人気商品! では…なぜ「死の川」とまで呼ばれた多摩川で、鮎が復活を遂げられたのでしょうか?そこで1つ目のミステリーは…「多摩川、鮎復活の謎」。このミステリーを解明していただくのは…全国の河川を調査すること18年。川のスペシャリスト…日本大学・安田陽一教授!安田教授によると、多摩川に鮎が復活した要因は…なんと「下水処理」!実は多摩川に流れている水の7割は"下水処理水"。実はそれが鮎の復活に大いに関わっているというんです。
 1967年、全国の河川で水質の悪化を防ぐため「公害対策基本法」が制定。排水規制や下水道を整備し、多摩川の水質が改善されました。家庭から流れ出た生活排水を浄化して作る「下水処理水」。生活排水に含まれる「窒素」や「リン」は、水をキレイにする過程で成分を3割残し、多摩川へと流れ出ます。そして流れ出た窒素やリンは、鮎のエサとなる「藻」の養分となり、藻の成長を助けます。そのため、他の川に比べて窒素やリンが多い多摩川には、より多くの藻が生えているんです。では、どれだけ藻が多いのか…実験!同じく東京湾に注ぐ多摩川と荒川、それぞれにタイルを沈め、10日間で藻が付着する様子を比較します。まずは荒川。10日後タイルを取り上げると…藻が少しついています。一方、多摩川の方を見てみると,…タイル一面が覆われるほどに、藻が付着していました!実は、多摩川は、"水の汚れを表す指標"である「BOD」の値が都会の他の川に比べ低く、清流と呼ばれる四万十川に近い数値なんです。安田教授によると、多摩川は人の手によってキレイになった、まさに"奇跡の川"だったんです。

所さんのポイント
ポイント1
多摩川の鮎復活の謎は…川に流れ出た「下水処理水」が鮎のエサとなる「藻」をたくさん育てているためだったのだ!


②人気の多摩川バーベキュー

 多摩川沿いにはバーベキュー場が11か所ほどあり、毎週末、多くの人たちで賑わっているんです。中でも、多摩川緑地バーベキュー広場は、年間およそ15万人が訪れる人気スポット!ではいったい、なぜ多摩川のバーベキュー場にはこんなに大勢の人が集まるのでしょうか?
 続いてのミステリーは…「多摩川、バーベキュースポット人気の謎」。
 このミステリーを解明していただくのは…心の働きを科学的に研究する。心理学のスペシャリスト…神奈川大学・杉山崇教授!杉山教授によると、多摩川バーベキュー人気の理由は「土手」に隠されていると言うんです。
 バーベキューをするとストレスを発散出来ます。しかしそこに"日常"が入ってしまうとストレスが解消されにくくなってしまうんです。そのため、"完全なる非日常"が必要だと言うんです。土手の下へ降りると土手があるために、バーベキュー場からだと住宅街が見えません。多摩川のバーベキュー場はこの土手のおかげで、市街地や住宅街から遮断されているんです。そのため、日常を思い出すものが少なく完全なる非日常になり、結果、ストレスの解消には重要で最適な場所となります。これを「遮断効果」と呼びます。遮断効果とは、外からの刺激を出来る限り少なくし、日常の世界を感じない状態のこと。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどのテーマパークは、住宅など生活感のあるものは見えないような造りになっており、遮断効果を使って非日常性を生み出すことで"特別な世界観"を作り上げているのです。多摩川の場合、土手が住宅街を遮断し、手軽に非日常性を楽しめる効果があるため、バーベキューをより一層、心地良いものにしてくれ、ストレス解消にもつながっているというんです。
 では…ここで実験です。多摩川でバーベキューをしている時と、住宅街でバーベキューをした場合、ストレスにどれだけ違いがあるのか?ストレス測定機を使って検証します。住宅街で30分バーベキューをした後のストレス値を測ると…結果は54。他の皆さんも個人差はありますが、2桁後半の数値でした。しかし、多摩川で同じ時間バーベキューをした後に計測すると…ストレスの数値は…わずか2でした。他の皆さんも個人差はありますが、住宅地に比べ、ストレス値が格段に下がっていたようです。これについて杉山教授は、「本来は日常性を感じさせない自然豊かな清流や標高の高い場所は簡単に行ける場所ではない。遠ければ目的地に着くまでにストレスを感じてしまう。多摩川のバーベキュー場は、電車を下りて数分で、土手に囲まれた非日常空間に来れる。これが多摩川の人気の秘密」と解説。

所さんのポイント
ポイント2
多摩川のバーベキュー場の人気の秘密は、土手の遮断効果で非日常性を手軽に味わえることにあったのだ!


③多摩川サイクリング人気の謎

 多摩川を散策していると…サイクリングをしている人がたくさん。
 実は、大田区から羽村市までの約53kmに及ぶサイクリングロードは、通称"タマサイ"と呼ばれ、愛好者の間で人気のスポットとなっているんです。ではいったい…なぜここまで人気なのでしょうか?そこで三つ目のミステリーは…「多摩川、サイクリングロード人気の謎」。このミステリーを解明していただくのは…都市部の交通事情を科学的に解析する交通システム工学のスペシャリスト…日本大学・稲垣具志先生!早速、渡辺裕太くんも着替えて先生と一緒に多摩川をサイクリングしました。すると…多摩川のサイクリングロードは車道と分けられて作られており、快適に走る事ができることに気が付きました。確かに、一般道を自転車で走っている時は、車や歩行者を気にしたり信号で止まったりするためストレスを感じます。しかし多摩川サイクリングロードは信号もなく車道と分かれているため、ストレスフリーな環境が整っているのです。さらに走り続けると…住宅街やビル群など、色々と景色が変わって、飽きないことに気が付きました。
 これについて稲垣教授は、「実はこの景色の移り変わりこそがこの多摩川のサイクリングロードの最大の人気の秘密になる」と解説。"景色の移り変わり"が人気の秘密!?一体どういうことなのでしょうか…?稲垣教授は、「この多摩川のサイクリングロードは、土手の上を走っていく区間が結構あり、とても見晴らしがいい。そうすると150m〜300mぐらいまでの間隔で運動場があった後に茂みがあり、その先に一軒家があるなど…目標物がどんどん登場してくるので、到達目標の連続が行われる。そのために、先を進んでいるという感覚になって、まず飽きが来ない」と解説。多摩川のサイクリングロードを走ってみると…並木道の先に水門…そして大きなマンション。さらにその奥にはビル群があったりと、走るにつれ連続して新しい目標物が次々と現れ、到達目標が更新します。この目標物があることで「あそこまで行ってみよう」という気持ちになり、飽きずにサイクリングを楽しむことができるというんです。同じく東京湾に注ぐ荒川のサイクリングロードと比較してみると…荒川は片側の土手が壁になっており、景色の移り変わりがあまりなく、目標物が少ないようです。多摩川でサイクリングを楽しむ人に話を聞くと…やはり、景色の移り変わりを楽しみながらサイクリングをしていました。

所さんのポイント
ポイント3
多摩川サイクリングロード人気の秘密は、到達目標が連続で現れるため、飽きずに楽しめることだったのだ!




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