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宇宙風船 の科学 [後編]
第1350回 2016年11月13日


 番組放送28年目突入の記念に、成層圏へ食材を打ち上げ美味しくなって戻ってくるか大実験!

■生魚の開き → 干物になる?
■豆腐 → 高野豆腐になる?
■大根 → 半月切り…たくあんになる?千切り…切り干し大根になる?
■殻ごとの生卵 → 冷凍卵になる?
■ビール → フローズンビールになる?

名づけて「成層圏DE和定食!」

①「成層圏DE和定食」打ち上げ

 打ち上げ当日朝。食材準備開始。大根は、たくあん用に半月切りと切り干し大根用に千切りに。食塩水の中に、生のアジの開きを浸して干物の準備。下ごしらえは完了です。そしてもうひとつ、地元モンゴルの名物「アーロール」という乳製品も追加。これは遊牧民のお母さんに作って頂いた牛乳で作ったヨーグルトを煮詰めて乾燥させた食べ物。2日間干して完成するのですが、成層圏で乾燥させたら、数時間で完成するのでは?というわけで、アーロールも一緒に打上げます!
 前日と同じバルーン装置の準備を千葉工業大学とモンゴル工業技術大学の皆さまに手伝ってもらいます。食材を乗せるための装置を作ってくれたのは、宇宙システムエンジニアの山口さん。パソコンで必要部品をデザインし、3Dプリンターで作成。ひとつひとつ角度も細かく設計し、絶妙なカメラアングルを実現してくれました。
 実験食材をセットし気球を放球!食材を乗せた気球が成層圏へ向けて出発!気球に乗せた通信データを追って車で追跡開始。データを受信するのは山梨大学の美濃教授。打上げ10分後、高度は4500m。地上の温度は20℃でしたが上空ではマイナス4.4℃。この時、食材は特に変化なし。そんな中、干物に早くも変化が!打上げのときと比べて少し表面が乾いたように見えます。そのまま様子を見つづけてみると、30分後には、かなり干物のような姿になっています!そのころ、ビールも一部凍り始めたように。さらにビールの様子を見ているとブクブクと泡が発生。フタに開いた、ストローの穴から泡が飛び出してきて、フローズン状態になってきました!
 気球が上空20km地点に。空が暗くなり、地球が青く見えて来ました。そして30km付近。気球が破裂する予定でしたが、まだゆっくりと上昇。地球の輪郭を大気の層がぼんやりとふちどる、幻想的な世界です。成層圏に浮かぶアジ、見た目はすっかり干物です。大根や豆腐は、中の様子がわかりません。ビールはフローズンを超えてカチカチ。卵やアーロールは判別不能。その時、地上から肉眼で30km以上上空に浮かぶ気球が見えました!打上げのときに直径3メートルほどだった気球は、20メートル近くまで膨らんで、なお上昇し続けていました。その大きな気球に、ちょうど太陽の光が反射して、肉眼でも見えたのだといいます。
 そして、放球から2時間13分後…気球は、この日の最高到達点、33.125kmに達しました。これぞ宇宙の入り口!目がテンも28年目にしてついに宇宙へ進出しましたー!
 ちょうどこの時、気球は短冊状に破裂。天然ゴムの気球ですが、マイナス数十℃の気温の中で固くなり、ガラス玉が割れるようにバラバラの破片になったと考えられるそうです。気球が割れて、食材を乗せた装置が空気抵抗のほとんどない成層圏を急降下!地上の追跡体は落下してくる気球を追います。最後に示した信号を目指して、道なき道をすすむこと1時間…気球発見!
 早速、食材たちの様子を観察。ビールがあった場所が空洞に!落下中にどこかへ行ってしまいました。卵は冷凍卵になっていませんでした。豆腐は見た目とさわった感触が高野豆腐っぽい!打ち上げ前は生の状態のアジは干物のようになっていました!

所さんのポイント
ポイント1
アジと豆腐は成層圏の乾燥空間で何かしらの変化があったようなのだ!


②成層圏DE和定食を試食!

 まずは豆腐…高野豆腐になっているのか?食感は、ボロボロ。水分は、かなり抜けているものの、高野豆腐には、惜しくもなりきれなかったようです。
 続いて大根!切り干し大根になっているのか?食感は切り干し大根を戻したときの感じに。半月状に切った大根は、食感がたくあんになったのですが、味なぜか辛くなっていました。
 期待のアジは、見た目も味も完全に干物。秋山先生たちに試食してもらうと、「今度から打ち上げるとき毎回一緒に飛ばそう」と言うほど絶品の出来に!豆腐は、惜しいところまでいったので「中野豆腐くらい」との感想でした。実験の結果は、先生たちの評価と合わせて、大根とアジはクッキング成功!
 しかし、ナゼおろしてもいない大根が辛くなりアジはおいしくなったのか?帰国後、大根がたくあんになるのでは?と提案してくれた露久保先生に辛くなった理由を伺うと「大根が成層圏に行ったことで、氷点下にさらされて大根が凍結。氷の結晶が大根の細胞を破壊して酵素が化学反応を起こし、辛味成分である「イソチオシアネート」が生まれたので、辛味を持った大根が作られた。大根おろしで起こる反応と同じもの。」とのこと。成層圏で大根は、ちょっと珍しい、「ピリ辛たくあん」になったんです。
 さらに、アジが美味しい干物になったことについて、2人の食品研究の専門家から驚きの見解が!東京海洋大学の濱田教授は「低温で水分が蒸発し凍結乾燥状態になっているので、タンパク質の熱変性もなく物ができた。低温なのでうま味成分の分解が抑えられたのでおいしかったのだと思う。」とのこと。
 文教大学の笠岡教授は「気圧が下がりアジの細胞膜が膨らんで壊れて、うま味成分が流出しておいしくなったのでは」とのこと。

所さんのポイント
ポイント2
成層圏の環境は、アジの干物を作るのに、とてもいい環境である可能性があったのだ!




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