放送内容

第1373回
2017.04.30
縄文生活 の科学 物・その他

 科学の発達で便利になった現代人の生活。けれど、それは遥か昔から、先人たちが積み上げてきた知恵と技術があったからこそ!今こそ昔の生活に学ぶべきなのでは?
 そこで、「歴史研究会」を発足!実際に歴史を体験し科学します!
 第一弾は「縄文時代の生活」に迫ります!

現代っ子が挑戦!丸い石の斧で木が切れる?

 今回、酒井さんと目がテン歴史体験プレゼンター・都丸紗也華さんが訪れたのは、岩手県にある御所野遺跡。縄文時代の住居跡や道具が発掘された貴重な遺跡で、現在は、発掘調査の通りに、住居やムラを忠実に復元しています。縄文時代の生活とは、どんなものだったのか?御所野縄文博物館の高田和徳館長によると、縄文時代の生活は今考えてもハイレベルな技術があったそうです。

 まずは都丸さん、縄文時代の服を再現したものにお着替え!これは、編布と呼ばれる木の皮の繊維を、水に浸して柔らかくしたもので編まれた縄文時代の布。服や敷物に使っていたと考えられています。

 続いては、縄文時代の住居・竪穴式住居へ。これまで、竪穴式住居の屋根は茅葺きだと考えられていたのですが、御所野遺跡では、発掘調査からわかった、屋根に土を乗せる土葺きを再現しています。
 住居の中に入ってみると、竪穴式住居は、地面を深く掘って、その上に作られています。住居の深さを測ってみると…1m8cmもありました。一体何のために、こんなに深く掘られているのでしょうか?

 縄文時代の建築物に詳しい首都大学東京の山田昌久教授にお聞きしました。山田教授は「竪穴式住居というのは地熱を利用するというのがあったと思います。土の温度が一定なので、外の温度の変化の影響を受けにくくなる、だから冬場暖かくなるし夏場は涼しくなる」と解説。さらに、掘ることで出た土を再利用、屋根に乗せて、保温効果を高めています。科学的に理にかなった快適な住居のようです。

 続いて2人が気になったのは、住居に頑丈そうな太い木材がたくさん使われていること。ここで疑問!縄文人は、大きな木材をどうやって大量に手に入れていたのでしょうか?
 謎を解くカギは、ある道具。それは…石斧と呼ばれる石の斧。実際に日本各地の縄文遺跡から発掘された石の刃を基に復元したものなんですが・・・よく見てみると、石斧の刃は一応尖ってはいるものの全体は太く丸い石のまま。現代の鉄の斧と比べると、とても木を切ることができるように見えません。

 そこで!歴史体験プレゼンターの都丸さんが石斧で木が切れるのか?挑戦!切ってもらうのは、直径15センチの栗の木。無理だと思ったらギブアップボタンを押してもらいます。それでは、体験スタートです!お、意外にも、ちょっと当てただけで木が削れています。そして開始から11分後。力のない都丸さんでも、よく削れています。そこで、男性に石斧(せきふ)で木を切ってもらうと・・・どんどん切れて行きます。石斧は、木を切る道具としてとても優秀だったんです。でも、丸っこい石でどうして木が切れるんでしょうか?実際に、石斧で木の伐採(ばっさい)実験を行ったことがあるという先ほどの、山田先生に理由をお聞きしました。
 山田先生は「石は鉄と違って、薄い刃を作ると石が折れてしまう。なので刃を厚くしなくてはならない。それをちゃんと縄文人は考えた」と解説。実は、厚く丸みを帯びた形こそが木を切るための大きなポイントだったんです。山田教授は「(刃を)丸く作っていると、その丸みで木の中をうまく、摩擦を少なくして入っていく。効率的に切り口が広がっていく。縄文人は、それがわかっていて刃を丸みを持って作っていた」と解説。

ポイント1

縄文人は、摩擦を少なくした、丸い石の斧で効率的に木を切る能力を持っていたのだ!

縄文時代の食生活 どうやって魚を捕まえる?

 縄文人の食生活とは?そこで、縄文時代の食文化に詳しい考古学者の岡村道雄先生に聞きました。岡村先生は「基本的に縄文人って、あまり動くものは獲ってない。罠みたいなものを作っておいてどちらかというと拾う」と解説。ここで疑問!“魚を拾う”って、どういうことなんでしょうか?
 そこで、岡村先生が再現してくれたのは縄文の頃から行われていたという、魚の習性を利用した仕掛け。一見、川に木の枝を刺しただけの、原始的にも思える簡単な仕掛けで、本当に魚を拾うことができるのか?当時縄文人が食べていたとされるイワナを川に放流。5分後…仕掛けの中を見てみると…本当に仕掛けの中にイワナが!水中を見ると、イワナがたくさんひっかかっています。これなら、拾えそう。都丸さんがチャレンジ。現代っ子の都丸さん。生きている魚が怖いそうで、捕まえられません。

 結局、岡村先生にお手本を見せてもらうと…。本当に拾うように、次々と生きたイワナを取っていきます。なぜ、こんな簡単な仕掛けに魚は引っかかるのでしょうか?
 実は、今回放流したイワナなどは茂みや岩場に潜り込みエサを待つ習性があります。茂みのような仕掛けを作ると、その習性からイワナが勝手に潜り込んで、勝手に出られなくなるんです。この“待ちの漁法”は、現代でも行われています。川の中に足場を組み、上流から下ってくるアユを待つ“ヤナ漁”は、産卵期になると川を下るアユの習性を利用した待ちの漁法の代表。

ポイント2

縄文時代の魚の習性を利用した仕掛けは、現代でもなお続く“待ちの漁法”だったのだ!

縄文時代のハイテク生活 竪穴式住居で眠れる?

 竪穴式住居の中に用意したのは縄文式土器やナイフなどの調理用具一式。食材は、捕まえた魚をはじめ縄文時代に食べられていたもの。都丸さんには、これらを自由に使って料理を作ってもらいます。それでは、チャレンジスタート!

 まず都丸さんが始めたのは火起こし。縄文時代の火の付け方は「弓ぎり式」と呼ばれる方法。火きり棒を弓のツルに巻きつけ、火きり臼と呼ばれる木の板の上でこすり合わせ、摩擦熱で火種を作る方法です。
 でも都丸さんが手にしたのは…石。石を打ちつけて火を起こそうとしてます。火打石というのは確かにありますが…実はこれ、木の実を砕くための道具なんです。次に手にしたのは…火きり臼。正解です!しかし…弓の使い方がわからなかったため火きり棒を手で回します。ここでギブアップ。
 火の起こし方を教わりました。それにしても、一体なぜ木の棒と板だけで火をつけることができるのか?ポイントは、火きり臼に空いている切り込み。実は、この切り込みに科学があったんです。火きり棒と火きり臼をこすり合わせると、摩擦で熱せられた木のクズが削り出されます。この時、外側に切り込みがあることで熱い木屑が一か所に山になって溜まり、熱がこもって温度が上昇。火種が生まれます。あとは、火種を燃えやすい乾いた木の皮の中に入れて、空気を吹き込めば一気に火がつくんです。実際に、同じ形の木が縄文遺跡からも出土しているんです。

 火は準備できたので、調理開始!都丸さんが見つけたのは、黒曜石でできたナイフ。これは正解です。黒曜石は、マグマが急激に冷やされて固まったガラス質の岩石で、簡単に割れ、鋭利な破片ができるのが特徴です。その切れ味は…切れないナイフだとつぶしてしまうトマトをすっぱり!さらに、分厚いブロック肉も!縄文人は切れ味抜群のナイフを持っていたんです。
 都丸さんが、黒曜石のナイフで切ろうとしたのは、生の魚。なんと、ネット動画の知識で初めてなのになんとか魚をさばけています。その後も、手際よく魚をさばいていく都丸さん…一体どんな料理ができ上がったのか?え?せっかく火を起こしたのに、お刺身?ここで疑問!縄文時代の料理はどんなものだったのか?岡村先生に作ってもらいました。食材を次々にぶつ切りにして、土器で沸かしたお湯の中へ。土器がすでにあった縄文時代では、食材が焼かれた形跡がほとんどなく、基本はお湯で煮ていたと考えられています。今回のように調味料を使わず、食材だけを煮ることも多かったようです。完成したのは「縄文式ごった煮」。

 そして食事が終わると、すでに日も暮れ…外の温度は1度まで下がっていました。しかし、火を焚いた竪穴式住居の中は約11度と、外より10度も暖かかったんです。そこで、最後に縄文式の眠り方を体験。当時の布団は、動物の毛皮などが使われていたと考えられています。縄文式のふとんで、現代っ子は眠ることができるのでしょうか?10分後…都丸さんここでギブアップ。現代っ子が眠るには室温10度は寒かったようです。