放送内容

第1410回
2018.01.28
ミステリージャーニー・群馬 の科学 場所・建物 人間科学

 これまで、日本一肥満の少ない「三重県」や…何度も訪れたくなる「京都」など、全国各地の“謎”を、科学の視点で迫ってきたシリーズ企画。
 その名もミステリージャーニー。第7弾の舞台となるのは…「群馬県」。
 実は群馬県は“知られざる健康県”だったんです!では…なぜ群馬の人々は健康なのか!?その謎を解明するため、科学者達が群馬へ降り立ちました!知られざる謎に科学者たちが迫る目がテン・ミステリージャーニー「健康の群馬」編!

“温泉の熱さ”が頻尿改善のカギになる!?

 頻尿になりにくい県・第一位の群馬。その秘密に関係する場所というのが…日本三名泉のひとつに数えられる、「草津温泉」。地元の方たちは、確かに頻尿の悩みは少ないようです。しかし草津温泉の効能を見てみると…頻尿という項目は見当たりません。という事で、1つ目のミステリーは「草津温泉と頻尿の謎」。すると!現れたのは、泌尿器外科のスペシャリスト、東邦大学・三井要造助教。三井先生によると、そもそも頻尿とは、膀胱に尿が少ししか溜まっていなくても、自分の意思とは関係なく過敏に尿意を感じてしまう病気だと言うんです。
 尿意を感じるメカニズムは、膀胱内に、約200mlの尿が溜まると、自律神経を介して大脳が感知。すると大脳から膀胱に指令を出し、排尿するという仕組み。これは交感神経と副交感神経の2つの自律神経が関係しています。「交感神経」は、人が活動している時に働きだす神経。これが働いている間は、尿意を感じるまでの容量が増えます。一方、「副交感神経」は、人がリラックス状態の時に働く神経。これが働いている間は、尿が一定量溜まると尿意を感じ、排尿させる役割を果たします。健康な人の場合は、膀胱に約200mlの尿が溜まるまで尿意を感じないのですが…この2つの自律神経のバランスが、ストレスや高齢化などの原因によって乱れると、通常よりも尿意を感じる膀胱の容量が減ることで、少しの尿でもトイレに行きたいと感じてしまう。これが、頻尿の原因の1つなんです。

 三井先生によると、一般的に朝起きてから夜寝るまでに8回以上トイレに行く場合を頻尿の疑いがありと言われているそうなんです。さらに、夜中に2回以上トイレに行くたくなり目覚めてしまう「夜間頻尿」。これは、寝ている間も自律神経の乱れにより、尿意を感じる膀胱の容量が減っているため、夜中に何度もトイレに行きたいと感じてしまうんです。
 では…草津温泉と頻尿改善には一体どんな関係があるのでしょうか?そこで先生に連れられてやって来たのは…草津温泉に江戸時代から続く伝統的な入浴法「湯もみ」。草津温泉の源泉は90℃と非常に高いため、「六尺板」と呼ばれる板を入れ、湯をもむことで入浴ができる温度に下げていたんです。するとここで…泌尿器外科のスペシャリスト、三井先生が「実は、草津温泉のこの“熱さ”が、頻尿の改善のカギになる」と解説。温泉の熱さが頻尿改善のカギとは、一体どういうことなんでしょうか?そこで、実際に温泉に入浴してみました。さっそく、その温度を測ってみると…なんと44.5℃!実はこの熱いお湯に入ることで、交感神経が刺激されます。すると尿意を感じるまでの容量が増えるので、「すぐトイレに行きたい」と感じなくなり、頻尿の改善につながるというんです。

 さらに、草津温泉に入っている人たちを見てみると…何やら、一度、お風呂から上がって体を休めている様子。三井先生によると、「交感神経を最大に刺激するためには10分程度入浴する必要があるが、この熱い温泉では長時間は難しい」。5分間入浴してから一度、岩場などで5分休憩。その後、ふたたび5分入浴することで、交感神経を最大まで刺激させることができるそうです。この入浴法を1回行うと、一晩は頻尿が改善される可能性があると言います。

ポイント1

群馬が“日本一頻尿が少ない”理由は、頻尿改善につながる入浴法を自然と行っているためだったのだ!

こんにゃくの“ある食べ方”が血糖値上昇を防ぐ!?

 糖尿病になりにくい県・トップ10入りの群馬。その謎が“ある食べ物の食べ方”にあるということで、やってきたのは…下仁田町。実は群馬県、こんにゃく芋の収穫量が日本一。国内の年間収穫量の9割以上を占めているんです。ということで、2つ目のミステリーは…「こんにゃくと糖尿病予防の謎」。すると現れたのは、糖尿病研究のスペシャリスト!横浜市立大学、寺内康夫教授。寺内先生によると、そもそも糖尿病というのは、すい臓から出るインスリンというホルモンの働きが低下することによって常に血糖値が高くなる病気。通常インスリンは、血液中の糖分をエネルギーに変え、筋肉や臓器に配分する役割を果たすのですが、肥満や加齢などの影響でインスリンの機能が低下すると…血液中の糖分をエネルギーに変えることができず、常に血糖値が高い状態になり、体中の細胞がダメージを受けてしまいます。

 糖尿病が進行すると、腎不全、神経障害、失明といったような合併症の要因になるそういうことも知られているんです。
 そんな糖尿病予防のカギとなるコンニャク。地元のスーパーへ行ってみると…たくさんのこんにゃくが陳列されています!さすが、こんにゃく芋の収穫量・日本一の群馬県。板コンニャクは常時400個。玉こんにゃくや…刺身こんにゃく…さらにはこんにゃく麺のラーメンなど20種類ものこんにゃく製品がお店に並んでいました。寺内先生によると、こんにゃくは血糖値が急激に上昇するのを抑えることができ、糖尿病の発症予防にもつながると言うんです。ではこんにゃくを食べることで、どれくらい血糖値の上昇を防ぐことが出来るのでしょうか?実験です。女性被験者に協力して頂き、1日3食、決められた時間に食事をとってもらい、1日目は普通に食事。2日目は、同じ食事に1日200gのこんにゃくを加え、こんにゃくがあるかないかで血糖値の上がり方にどれくらい違いが出るのか測定しました。まずは、こんにゃくを食べなかった時のグラフです。食事開始から2時間後の血糖値の変化を朝昼晩で平均しました。続いて、こんにゃくを1日200g食べた時の変化を見てみると…血糖値は急激に上がらず、ピークの値も低い数値を示していたんです。

 寺内先生によると、血糖値の急激な上昇をおさえる“より効果的なコンニャクの食べ方”が群馬の食生活に隠されているというんです。そこで、週3回はこんにゃくを食べるというお宅にお邪魔し、地元のこんにゃく料理を食べさせてもらいます。ズラリと並んだ、地元ならではのコンニャク料理。普段は、これらをおかずに、なんとご飯を食べているそうです。こんにゃく料理を美味しくいただいていると…最後に出てきたのは、地元の特産物を使った、群馬の郷土料理「こしね汁」。するとここで…糖尿病研究のスペシャリスト、寺内先生が!このこしね汁に含まれているこんにゃくの食べ方にこそ、糖尿病予防のカギがあるそうなんです。
 ではこの食べ方が、糖尿病予防にどうつながっているのでしょうか?寺内先生は「こんにゃくにはグルコマンナンという食物繊維が含まれている。これは体の中で消化されない、水分を吸収する"保水性"という働きがある」と解説。通常、人が食べ物を食べた時、胃で分解された食べ物は、そのまま体に栄養として吸収されますが…こんにゃくと汁物を一緒に食べることにより、グルコマンナンが、その汁を吸いながら膨張し、他の食べ物と絡み合います。すると、体にそのまま吸収されるはずだった栄養は、グルコマンナンによって吸収がゆっくりになるといいます。

 そのため、血糖値の上昇が緩やかになるということが知られているので、糖尿病の予防につながるんです。

ポイント2

群馬の食生活に欠かせない“こんにゃくの食べ方”が糖尿病の予防に役立っていたのだ!

“群馬伝統の踊り”に肩こり改善の秘密が!?

 肩こり症になりにくい県・ベスト3の群馬。その謎を探るべくやって来たのは、桐生市。まずは、本当に肩こりに悩む人が少ないのか?40歳以上の地元の方に聞いてみると…確かに、肩こりに悩む人はあまりいない様子。実は、その秘密が"群馬伝統の踊り"に隠されていると言うんです。
 その踊りとは…群馬県伝統の「八木節」。群馬県桐生市では八木節祭りというお祭りが毎年夏に開かれており、約55万人が参加する一大イベント。さらに地元の小学校でも、運動会で八木節を披露するなど、子供から大人まで、幅広い層に浸透している舞踊なんです。…と、その時!現れたのは、スポーツ医学のスペシャリスト、国士舘大学、・須藤明治教授。須藤先生によると、須藤先生によると、八木節の動きを見れば"肩こり改善との関係"が分かるというんです。そこで3つ目のミステリーは…「八木節と肩こりの謎」。この謎を探るため、後藤アナが八木節の踊り方を教わります!と、ここでスポーツ医学のスペシャリスト須藤先生が!八木節は、肩甲骨が上に上がって一回縮んで開く。これを繰り返しているため、肩こりの解消に繋がるんだそう。須藤先生によると、八木節の腕を上げ下げする動作は、肩甲骨周辺の開閉運動になっているそうで、この動きにより、肩こりの原因の1つでもある肩周りの血液中の老廃物が流れ出し、血流が良くなることで肩こりの改善に繋がっていたんです。

 さらに須藤先生が注目したのは“八の字の動き”。8の字の動きの時にインナーマッスルが鍛えられるため、バランスが崩れていた肩が正常な位置に戻り、肩こり改善に繋がると言うんです。ではこの八木節が、どれだけ肩こりに効果があるのでしょうか?そこで…こんな実験!集まっていただいたのは、肩こりに悩む、20代の男女2人。普段パソコンを使うことが多いという男性。その硬さを計測してみると…結果は…61。20代の肩の平均の硬さは55なので、肩が凝っていることがわかります。では八木節を踊る事で肩の筋肉はどれぐらい柔らかくなるのでしょうか?5分間八木節を踊ってもらい、その後、ふたたび計測してみると…結果は…55!八木節を踊る前の数値と比べると、約1割下がっていました。

 同様に女性にも八木節を5分間踊って頂き、測定してみると…66から61と、こちらも約1割下がっていたんです。

 須藤先生によると、「この八木節を5分間、週3回程度、例えば月・水・金など間をあけて行うと、固まっている慢性的な肩こり改善の効果があるのでは」と解説。

ポイント3

群馬に伝わる伝統の「八木節」が、肩こりの改善に効果的だったのだ!