放送内容

第1444回
2018.09.30
北極カメラ の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 今回の目がテン!は、「放送30年記念北極カメラプロジェクト完結編」
 果たして、氷の大地に1年間放置したカメラは無事なのか!?

「カナックは行くのが超大変だった」

 すべての始まりは去年のこと。放送開始30年目プロジェクトとして、北極に一年、定点カメラを仕掛けたら何が映るのか?試してみることに。しかし、天候不良で飛行機が飛ばず、酒井さんは、カメラを設置するカナックまで行くことができませんでした。
 そこで、北極で氷河の研究を行なう北海道大学の杉山教授にすべて丸投げ!30年目記念プロジェクトにも関わらず氷河上のカメラの設置から、設置の様子の撮影まで丸投げしちゃったんです。設置から一年、回収まで丸投げするわけにはいかない!そこで、この任務を託されたのが、移住体験プレゼンターの金丸慎太郎さん。
 目指すは、カメラが設置された人類最北の集落カナック。直接は行けないので経由地のイルリサットに降り立ちました。 カナックへのフライトは2日後。グリーンランド初上陸の金丸さん、この街、最大の見どころへ。それは、壮大なスケールの世界自然遺産、巨大な氷が織りなすアイスフィヨルドです。北極圏グリーンランドならではの大自然の絶景を満喫。

 気分よく迎えたフライトの日。ところが、天候不良のため、フライトがキャンセルに。その2日後、滞在5日目。2回目のフライトチャンス。金丸さんが宿泊先のモニターで確認すると、そこにはキャンセルの表示が。
 翌日、滞在6日目。臨時便が出るとの知らせで急いで空港に駆けつけましたが、臨時便ですらキャンセル。まさにぬか喜び。
 滞在8日目、4回目のフライトチャンスもキャンセル。実はこの時期、グリーンランドの沿岸部は天候が不安定。フライトがキャンセルになりやすいんです。さらに次のフライトもキャンセルとなり、合計5回のキャンセル。
 落ち込む金丸さんを元気づけようとディレクターが誘ったのが、やっぱり世界遺産。世界遺産も3回目、もういいだろうとテンションだだ下がりになったその時、嬉しい出会いが!クジラのペアです。専門家の北海道大学、三谷先生によると餌を食べている最中のザトウクジラだそうです。

 クジラに元気をもらった金丸さん、次のフライトチャンスにかけます。
 滞在13日目。6回目のチャンス。天候がすぐれない中、不安を抱え、向かった空港。荷物を預けることはできましたが、悪天候のため重量制限がかかり、名前を呼ばれた人だけが飛行機に乗れるとのアナウンスが。すると、金丸さんの名前が。フライトのキャンセル5回。滞在13日目にしてようやく所さん人形が待つカナックへ!

「北極カメラ回収も超大変だった」

 12日間足止めを食らった世界遺産の街イルリサットから北へ飛行機で1100km。北極に一番近い自然集落、カナックへ。カナックは、人口600人程の小さな町。空港に迎えに来てくれたのが、北海道大学低温科学研究所、杉山慎教授。去年、定点カメラを酒井さんの代わりに設置してくださった方です。
 まずは、杉山教授のチームが夏の間借りている家で作戦会議。定点カメラは他の観測装置と一緒に設置されていて、2日後に行われる先生たちの調査に同行、カメラを回収することになりました。
 それまでの間、先生たちの研究を見学。こちらは、川の水量の変化を見る調査。0℃の水の中に入り北極圏グリーンランドの自然と天候の関係を調べています。北極圏で研究を行っている理由とは?
 杉山教授によると、グリーンランド氷床は、速い速度で氷を失っており、その海に与えるインパクトは地球規模。グリーンランドにおきていることが原因で日本の気象にも影響を与えるといいます。
 極寒のグリーンランドの海に、カメラを沈める調査。北極圏の海底に、何がいるのか?映っていたのは、海底を埋め尽くす、クモヒトデの一種。エビらしき生き物も映っていました。

 寒いところの海は、あまり生き物がいないように思われがちですが、氷の下だからこそとても豊かな生態系があります。
 食卓にも、豊かな生態系の恵みが。この日はアザラシのしょう油ソテーと謎の物体。こちらは、アッパリアスという可愛らしい北極の海鳥。地元の猟師が獲ったものを分けてもらいました。獲り方はかなりダイナミック、大きな虫取り網のようなものでダイレクトキャッチ。勿論、ここでしか食べられないもの。調理もダイナミック。丸のまま塩ゆでに。

 ゆでることで羽毛がむしりやすくなるそうです。その味は、レバーみたいな味だそう。
 迎えた回収の日。雲一つない青空の下、出発。カナックの町の背後にある険しい山を2時間半ほど歩くと氷河の端に着きます。氷河はすっぽりと山全体を覆っていて、先生たちは数か所、研究用の観測装置を設置しています。目がテンのカメラもその中に。移動距離およそ20km、高低差840mの行程です。
 石と氷の荒涼とした風景。でも、氷河が目視できるところに草が。北極圏にも、短い夏の間には、小川が生まれ、花などの色々な命をはぐくむ源になっています。

 しかし、さらに山を登り氷河の端に達すると、厳しい自然が生み出す荒れ地に。氷河の端までで、すでに2時間半。ここからは、かんじきに履き替えて氷河の上を進みます。観測ポイントまではここからさらに1時間以上。氷河の上で行うこの日の調査は、何時間も歩いた疲れも見せず、雪を掘り、この場所の氷河が成長しているのか減っているのかを調べます。

 冬はマイナス40℃以下になり、人を寄せ付けない場所。夏の間だけできる貴重な調査。
 地球上でも指折りの過酷な環境に放置された定点カメラと所さん人形の運命は?出発から5時間半。定点カメラはありました!一年間北極で耐え抜いたカメラと所さん人形。

 さっそくカメラのデータを回収。果たして、映像は映っているのでしょうか?

「北極カメラ映像①」

 撮影スタートは2017年7月21日。奥に見えるのは海で、その奥には入り江の反対側が映っています。24時間常に30分に一度、撮影してるのですが、不思議な点が。実は、夜がこないんです。この時、北極は夜がこない白夜という時期で、太陽は沈まなかったんです。

 8月3日。真夏の北極は大雪。所さん人形に雪が降り積もります。その後、積もった雪は溶け続けて、氷河の表面が顔を出します。完全に凍ってツルッとしています。これが氷河の表面。この場所で、氷河の厚みは100m。

 ここで、注目の現象が起きていました。所さん人形の左側、少し黒くなっている部分を見ていくと、黒いところの氷河がどんどん溶けているのが分かります。

 この黒い色の正体は、実は氷河特有の生き物。その正体はシアノバクテリアという微生物。光合成ができるので、栄養が少ない氷河でも生きていけるんです。このシアノバクテリア、実は大きな問題があるんです。氷河の上では黒い粒状になっていおり、黒いと太陽の熱をよく吸収するので氷が溶けるスピードを加速させてしまいます。その結果、氷が穴だらけに。1999年のカナックの氷河と2011年の氷河を比べてみると全体的に黒くなっているのが分かります。それだけ氷河全体が溶けやすくなってしまったということなんです。
 つづいて注目するのは海。海から白いものが沸き上がっていますが、これはまさに雲が誕生する瞬間。氷河の冷たい空気と海からの湿った空気がぶつかって、海の上で雲がどんどんできるそうで、この雲が飛行機キャンセルが多い原因なんです。

 映像が止まったのは、9月2日。わずか40日ほどでバッテリーが切れてしまいました。

「北極カメラ映像②」

 実は、もう一台別の場所に定点カメラを設置していたんです。もう一台のカメラは、カナックのとある家の物干し台に設置していただきました。8月は白夜なので、もちろん夜が来ません。太陽の動きに合わせて、建物の影がぐるぐる回っているのがわかります。時々、太陽が画面奥に映りますが沈んでいません。

 計算上は、8月23日から夜がきますが、最初のうちは太陽が一瞬しか沈まないので、夜になった感じがあまりよくわかりません。白夜が終わって、8月27日に初めて街灯が点きますがすぐ消えてしまいます。そして9月になると、町の方にも雪が降り始めます。だんだん夜の時間が伸びているのがわかります。定点カメラにも、太陽が西の空に沈むのが映るようになりました。10月に向けて、どんどん夜の時間が長くなっていきます。そして、太陽は地平線すれすれを移動して、沈むようになりました。だんだん、申し訳程度しか太陽が地平線の上に出なくなってきました。
 さらに、10月20日、海に雪が積もっています。

 これは海の水が凍ってその上に雪が降り積もったんです。そして10月28日。この日がこの年最後の昼間でした。これ以降、太陽が地面から顔を出さない極夜です。空は赤くはなりますが、これは、朝焼けと夕焼けが直結してるんです。一度も太陽は地平線より上に出ていません。

 11月2日にカメラは停止。この日は最高気温がマイナス10℃、最低気温はマイナス16℃でした。
 カナックだと白夜と極夜、それぞれ4か月続くそうです。

 こんなスゴイ場所で暮らす人たちの生活、気になりませんか?皆さん、どういう生活をしているのか?その様子は後日、ご紹介します。