放送内容

第1459回
2019.01.20
古いもの見直し隊 の科学 物・その他

 かつては目にしていたのに、めっきり見かけなくなったものってありますよね。そんな昔懐かしい、古い物でも改めて見直してみると、意外な発見があるんです。目がテン新企画 その名も古いもの見直し隊!スマホサイズの洗濯板で靴下が劇的にキレイになる理由とは?さらに!昭和の時代に、どの家庭にもあった黒電話。調べてみると、意外な見直しポイントが!
 今回の目がテンは、古いもの見直し隊。黒電話と洗濯板を科学します!

若い女性に人気のパパのおさがり

 いま、SNS上で話題になっているキーワードがあります。それは…『パパのおさがり』。その真相を探るべく、SNSに写真を投稿した女性のお宅を訪ねてみました。迎えてくれたのは、学生のみらのさん。今日着ている服について聞いてみると…全身お父さんが、昔着ていたもの。いま、みらのさんのように、お父さんの服を着る10代、20代の若者が増えているといいます。その魅力を聞いてみると、古着やビンテージで個性的な服は人とかぶらないのでお父さんからもらっているといいます。また、大きいサイズなので、だぼっと着られてかわいいそうです。
 お父さんが残していた服は思い出の品や高値で購入したブランド品。大切に保管され、生地や縫製がしっかりとしているので、いまでも十分着られるんです。

〇〇の時にも使える黒電話!

 1900年代前半に発表されて以降、昭和の電話といえば黒電話が主流でした。全盛期にはほとんどの家庭に黒電話が普及していたんです。そんな黒電話を今回調べるのが…80年代ファッションに身を包んだ森富美です。
 そもそも現代の若者は、黒電話を使えるのか?そこで黒電話を手に若者の町へ。
 黒電話初体験の小学生の女の子は、当然わかりません。さらに10代の二人も使い方はわかりませんでした。そして20代の女性も。渋谷、原宿で出会った若者は、10人中1人しか黒電話の正しい使い方がわかりませんでした。ちなみに、25歳の真知子アナもわからなかったそうです!
 そこで、渋谷で出会った、10代の2人。使ったことがないというので、実際に通話が可能な黒電話で電話してもらいます。向かったのは六本木にあるカフェ。昭和47年創業の老舗の喫茶店です。店内に入れば、昭和にタイムスリップしたよう。およそ50年間、壊れることなく常に現役だった黒電話。使うのは初めてでしたが、使い方はドラマで見たことがあるそうで、完璧!
 その感想はというと「重たいし、ダイヤル回すのが時間かかったから大変だなと思いました」。

若者にめんどくさがられてしまった黒電話ですが、必ずいいところがあるはず!そこで見直しポイントを探しに向かったのは、NTT技術史料館。迎えてくれたのは、史料館の小川さんです。
 館内には、家庭内で利用されていた電話が展示されています。1933年に登場したのが、3号電話機と呼ばれる3号自動式卓上電話機。

 海外の電話機を参考に作られました。
 その後、1950年に初の国産電話機として、開発されたのが4号A電話機。

 音質もかなりよくなり、性能は当時の世界水準を凌いでいたそうです。
 そして、1960年台には更に進化した600型とよばれる電話機が登場しました。

 今回、いまも現役で黒電話を使っているお店にお邪魔してきましたが、どうしてそんなに丈夫なんでしょうか?
 小川さんによると、50年もつようにというのを目標に作られたといいます。いろいろな地域、温度湿度に長く耐えられるということも重要視。1m以上の高さから黒電話を落とす耐久試験や、素材ごとの強度の計測を行うなど、通話性能だけでなく、耐久性にもこだわって作られていたといいます。
 さらに見直しポイントとして、災害という面でも注目されています。総務省がまとめた調査資料、東日本大震災のおきた翌年、2012年に岩手、宮城、福島で行われたアンケート調査よると、黒電話を含む、プッシュフォンなどの固定電話。83%が利用不可だと答えましたが…、水をかぶったが黒電話は問題なく使えたという意見も。黒電話の耐久性が示されました。
 さらに…停電時にも使えるということで改めてその価値が見直されてきています。現在主流の固定電話は、電話線以外にも、電話を動かす電源コードがついています。そのため、停電になると使えません。しかし、黒電話は電話線から、電話を動かす電気も供給されているので、停電になっても、電話局が無事なら動くんです。(※黒電話の接続状況にもよります)
 黒電話は目立たない存在ながらもいまもどこかで人々の役にたっていたんです。これにて、黒電話の見直し完了です。

靴下が劇的にキレイになるスマホサイズの洗濯板

 洗濯板。日本では明治の中期頃から登場し、昭和の中頃まで一般の家庭でよく見られていました。そんな洗濯板は、日本が発祥ではないんです。中国やヨーロッパで使われ始め、国ごとに形は違うものの、全世界で使用されたといいます。全自動の洗濯機が普及したこの時代、なぜいま洗濯板が見直されているのでしょうか。
 向かったのは高知県!木材の加工品を製造する会社を訪ねました。話を伺うのは、こちらの会社で現代版洗濯板の製作に携わった池さん。いま人気なのが、スマートフォンよりも小さいミニミニ洗濯板。

 また、100円ショップや生活用品店でも、小さいサイズの洗濯板が販売され、旅先にももっていけると近年人気だといいます。
 ミニミニ洗濯板。その作り方を見せていただきます。洗濯板に使用する木材は国産の桜の木。桜について木材の専門家で、科学の里でもお世話になった京都大学の村田先生に聞いてみると、細胞の特徴として水を通す役割の道管がサクラの木の場合には径が小さく均一に分布。細胞が小さいということは表面がなめらかなので毛羽立ちにくさなどに関係しているのではないかといいます。
 さくらの木材とタモという木を顕微鏡で見て比較してみると、タモは道管が大きく筋状に並んでいるのでその部分が毛羽立ちやすい。一方、さくらの道管は小さく、均一に配置されているため、木目が細かくなめらかで毛羽立ちにくいんだそうです。

 さらに最新の洗濯板には他にも工夫が。凹凸をカーブ状にすることで洗剤が溜まりやすく、手を傷めないよう工夫しているんです。

 この洗濯板どのくらい汚れが落ちるんでしょうか。千葉県にある保育園の4さいから6さいのクラスの子どもたちに新品の靴下を履いてもらいました。子どもたちは、この靴下で1日を過ごします。室内を駆け回り…泥遊びや…砂場遊びを満喫!そして夕方…4時過ぎ、靴下を回収!一日はいた靴下はみごとによごれています。
 靴下は片方ずつに分け、洗い比べます。片側の靴下を、洗濯機にセット。もう片方は洗濯板で洗います。洗濯板は水に濡らし、汚れている場所に洗剤をつけます。汚れが落ちるまでこすり、その後水で洗います。
 洗濯機で洗い終わった靴下を見てみると…多少は落ちたものの、かかとやつま先の汚れはかなり残っています。一方、洗濯板で洗ったものはきれいに落ちています。

 洗濯板だとなぜこんなに汚れが落ちるのでしょうか。

 洗浄、洗剤の専門家、横浜国立大学大矢教授によると、外で遊んだ場合には外側には泥汚れ、一方で走りまわると足裏の皮膚の表面、表皮角質層が剥がれ落ちて靴下の表面につまっていきます。そして泥汚れも表皮角質層の汚れもそのままでは非常に溶けにくい汚れ。泥汚れや皮脂汚れは、洗濯機で洗ったり、洗剤で分解しようとしても繊維の中まで入り込んでいるため中々落ちにくいんです。

 この泥汚れ・皮脂汚れに洗濯板を使うと効率よく引きはがして取ることができます。挟み込まれた汚れが、押して緩めたときに隙間が空くと同時に洗剤液が入り込んできて、水の流れと一緒に汚れも外に排出されるといいます。洗濯板にこすりつける動作によってしつこい汚れが落ちていたんです。
 頑固な汚れを落とす救世主として洗濯板は、見直されていたんです。これにて、洗濯板の見直し完了しました。