放送内容

第1461回
2019.02.03
終活 の科学 人間科学

 今や身近な言葉となった終活。一口に終活と言っても、エンディングノートを書いたり、財産整理をしたり、様々な活動がありますが、その中でも、特に関心が高いのが、家の中の片付け。そこで、今回は終活で片付けをしたいお宅を訪問!心理学の専門家が教える方法を試すと、いらないものが見えてくる!さらに、片付けにくいところの代名詞キッチンの収納には、交通渋滞の研究と収納に意外な関係が!?
 今回は、すぐ試したくなる片付けテクニックが満載!目がテン流・終活の科学 家の片付け編です!

思い出の品が捨てられない~心理学~

 終活で持ち物を片付けたいけれども、中々進まないというお悩みを抱えているという、60代の菅原さん。菅原さんの悩みは、思い出のモノが手放せないこと。片づけの終活セミナーにも参加しましたが、あと一歩、踏ん切りがつかず。
 そこで、問題の菅原さんのお部屋を見せてもらうと、そこには、まとめただけで手付かずの大量の荷物。普段は、部屋の端に積み上げているそう。
 少しだけ、中を見せてもらうと、出てきたのは、年季の入った思い出の写真。さらに、菅原さんが中学生の時の成績表や、夏休みの宿題や学生時代のノートまでなんと半世紀以上前の物。ほかにも、木彫りの熊や、年季の入ったラジカセ、古いカメラなど、使いみちは無いけど手放せない思い出の品。

 そんな、菅原さんの背中を押すべくやってきたのは、モノを溜め込む人間の心理を研究している、関西大学の池内教授。心理学の専門家が教える片付け方法とは?

 《心理学的片付けの極意 モノは全部出して、見える化する》
 池内教授は先ず、この中のモノを一回全部床に出してみるといいます。少々戸惑いつつも、段ボールから荷物をどんどんと出していきます。すると、普段は段ボールに詰めこまれて見えていなかった物で部屋中いっぱいに。一体、これにはどんな効果あるのでしょうか?
 実は、可視化することで、いかに大量のモノを溜め込んでいたのか自覚すると同時に、客観的に自分の荷物と向き合えるので、手放しやすくなるのです。

 しかし、いきなり処分しようと考えると、抵抗感が生まれ中々捨てることができません。
 そこで、まずは要るモノと要らないモノに分類し、最終的に要らないモノの中から処分するモノを決めていきます。
 すると、半世紀以上捨てられなかった学生時代のものが、意外とあっさり要らない方へ分類しました!見える化した効果なのか他にもどんどん要らないモノへ分けて行きます。
 そもそも、どうして人はモノが捨てられないのでしょうか?
 池内教授によると、モノを自分の一部だったりする感覚を拡張自己と呼ぶそう。人に対して、共感しやすい人というのは、モノに対しても共感しやすく、モノを捨てるときも、かわいそうとか辛そうなど思ってしまう傾向があるといいます。
 さらに 物を捨てられない心理にはもう一つ理由が。それが、アニミズム。アニミズムとは、モノを擬人化したり、モノには魂が宿っているという考え方。そういったアニミズム的思考が、元となっている儀式として、人形供養をはじめとするモノ供養があるといいます。
 先生によると、実はこうした文化は日本特有なんだそう。拡張自己やアニミズムの心理学的理由で、モノに過剰な意味づけをしてしまい、手放すことができなくなってしまうんです。
 では、どうしても捨てることができないモノは、どうしたらいいのでしょうか?

 《心理学的片付けの極意 思い出はデジタル化》
 写真や、賞状、家族からのプレゼントなどなかなか捨てられないモノ。それらは写真に撮ったりしてデジタル化すると必要最低限の現物だけに整理できるんです。
 こうして、菅原さんの思い出の品を整理することができました。モノは全部出して、見える化、それでも大切なものはデジタル化する!心理学の極意で、菅原さんの終活は一歩、前進しました。

 さらに、スタジオで紹介したのが、もったいなくて捨てられないモノ。行動経済学を研究する東京大学の古川先生によると、経済学的に、モノが捨てられない理由の一つとして、「サンクコストの呪縛」というのがあるとのこと。
 これは、すでに支払ってしまって、取り戻すことができない費用に執着して合理的な判断ができなくなってしまうこと。その呪縛から逃れるには、捨ててもいい理由をつけること。
 それが「人に譲る・売る」。こうすることで、損したという気持ちが減り、勿体なくて捨てられないものでも処分しやすくなるんです。

片付けても片付かない!~収納と渋滞~

 片付けのお悩みを抱えているという小島さんご夫妻。50歳の節目に終活を始めて、早6年。すでに、家の中のモノも整理されているそう。そんな小島さんのお悩みはキッチン。毎日使うキッチンは、終活で整理しにくい場所の一つ。片付けているはずなのに、食器が減らないといいます。
 そんな小島さんを救うべくやってきたのは、東京大学の西成教授。実は、先生が研究しているのは、渋滞!
 車だけでなく、人やモノが集まるところの渋滞を研究し改善方法を提案しています。
 まずは、先生に問題のキッチン収納を見てもらいました。すると、ダメな収納でモノの渋滞が起こっているといいます。
 多くの食器が積み重なったキッチン収納。これを渋滞学でどう解消するのか?先生が取り出したのは、100円ショップなどでも簡単に手に入るマスキングテープ。それを適当な長さにちぎって線を引きます。これは、線を引くことで、それより上に皿が行かないようにする制限。

 《渋滞学的片付けの極意 制限ラインで、モノの車間距離をとる》
 道路で、前の車との車間距離を詰めてしまうと、車の流れが悪くなり、渋滞を引き起こす原因になります。収納スペースもモノを詰め込みすぎると、出し入れがしにくくなり、モノの流れが止まって渋滞を引き起こしてしまうんです。制限ラインを引けば、新たにモノを買うとき、置き場を確保するために古いモノを捨てなければなりません。そのため、買うときも捨てることを考えるので、無駄な買い物を防ぐことができるんです。
 お皿以外に、溜まりやすい洋服も、制限ラインを設けたりクローゼットのハンガーの本数を制限することで、自然と渋滞が解消されます。 さらに、西成先生から渋滞解消のもう一つの方法が…!

 《渋滞学的片付けの極意 タッチ数を減らせ!》
 タッチ数とは、取り出すときにモノを触る回数のこと。お皿を出すときに触った回数はもちろん、扉を開けたり、脚立に昇った回数もタッチ数とカウントします。
 そこで奥さんに家族4人分の夕飯で使う食器を出してもらい、タッチ数をカウントしてみます。小島さんのタッチ数は16回。人はタッチ数が多ければ多いほど、モノを出し入れするのが面倒になり、片付かなくなってしまうんです。
 では、どのようにタッチ数を減らすのでしょうか?
 それはABC分析。ABC分析とは、よく使うモノをA群、たまに使うモノをB群、めったに使わないモノをC群と大きく3つに分類すること。

 先生によると、小島さんのお宅では一番取り出しやすい部分がA群の置き場、髙くて取り出しにくい上段が、B群の置き場になります。C群のモノは、期限を決めて別の場所に保管。期限まで使わなかったモノは処分。

 さらに、タッチ数を減らすひと工夫。横じゃなくて、縦に入れる。重ねて収納すると、上のモノを持ち上げないと、下のモノが取れないのでタッチ数が増えてしまいます。
 これらのアドバイスを元に、夫婦でABC分析をしてもらいました。こうして改善することおよそ30分。生まれ変わった、小島さんの収納がこちら。よく使うモノを一番下の段に置き、お皿も縦置き。制限ラインより下に収納しました。
 先程は16回タッチをしていましたが、改めてタッチ数を計測すると…改善後のタッチ数は8回。なんとタッチ数が半減しました!
 こうして、キッチンの渋滞が解消されました!